プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「時代屋の女房」

<<   作成日時 : 2016/03/13 09:40   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 1 / コメント 2

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1983年日本映画 監督・森崎東
ネタバレあり

1982年に直木賞を受賞した村松友視の同名小説を森崎東が映画化した人情喜劇。但し、本ブログ上の分類はドラマとしておく。

僕がわざわざ豊島区から名画座・大井武蔵野館に映画を観に行っていた頃の品川区大井町が舞台。
 三十代半ばの安さん(渡瀬恒彦)が営む古道具屋に、三毛の野良猫を抱えた美人・真弓(夏目雅子)が現れ、猫と共にそのまま住みつき女房のように暮らし始める。彼女が時々姿を消してまた現れるという生活を続けるうちに遂に本格的に消えてしまう。
 そんな或る日彼女に似ている岩手出身の美郷(夏目雅子二役)が現れ、一夜の関係を結んだ翌日、彼女は結婚の為に故郷に帰って行く。
 同じ頃真弓から電話を受けた喫茶店のマスター(津川雅彦)からその伝言を聞いた安さんは、その言に従って覗きからくりを買い取りに岩手の宿屋へ赴く。あわよくば、古物と共に彼女も一緒に連れ帰ろうという魂胆は虚しく裏切られ、その代わり真弓ならぬ美郷の婚約者(平田満)が現れ泣きつかれる。
 覗きからくりを持って帰ると、訳ありの若者(沖田浩之)が現れ、真弓と関係をしていたことを告白する。そして、その直後、姿を消していた猫の出現と共に真弓が現れる。

猫とともに出没する真弓は野良猫であると理解したくなるし、そう理解して決して間違っていないであろうが、僕のように物にも霊魂があるように思いがちな人間には、彼女が古物の精霊のように感じられてならない。事実安さんが覗きからくりを持ち帰った直後、彼女が宿屋にかつてあった土瓶を持って現れる。覗きからくりの精霊であっても不思議ではないのだ。

実際、彼女の出没には霊のような儚さがあり、夏目雅子という不思議な透明感を持つ稀有な女優のおかげで、本作には一種の幽霊ファンタジーの趣きさえあって大いに痺れた。
 その一方で、森崎監督であるから、登場する人物の交錯に些か猥雑な部分もあるが、その彼らの言動が感じさせるけだるさが昭和時代の残照を鮮やかに映し出す。平成に入って男性が草食動物化する前の昭和的野趣が残る昭和−平成過渡期の映像資料とさえ言える気がする次第である。

作劇的にはミステリー趣味が横溢している。彼女が誰であり、何故数日間だけ消えるのか? これが安さんを少し(本格的に悩まないのはこの時代らしい)悩ませ、観客の興趣を呼ぶ。沖田浩之扮する若者が登場する意味がないと仰る方はまるで解っていない。第二の謎が彼によって解けるのである。
 美郷やその婚約者はひたすら第一の謎のミスリード役を果たす。純ドラマであれば美郷関連は不要と言えないこともないが、彼らがいるおかげで観客は暫し騙される。こういう洒落を理解できない人は、同じ料金と時間を費やしているのに全く勿体ないことこの上ない。

しかし、かく言う僕も本作の正体には解らないところがあり、人気絶頂期に白血病で呆気なく逝ってしまった夏目雅子を見て楽しむところが多いのも事実。採点の★一つ分は彼女のおかげであります。

もう十年も発症が遅ければ、今でも生きていたと思う。映画界にとって大損失だった。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
時代屋の女房
  可愛いひと、でした・・・ ...続きを見る
映画と暮らす、日々に暮らす。
2016/03/13 18:11

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
そう野良猫ともいえるし、古来、百年たった道具類は付喪神となると言われておりますからね。
彼女は、付喪神かもしれないと映画を観ながら想像してみるのも楽しいですね。
あんな透明感のある美しい付喪神ならそばに置いておきたいものです。

夏目雅子さん。
生きていれば50代ですからね。大女優になっていたでしょうね。
ねこのひげ
2016/03/13 14:36
ねこのひげさん、こんにちは。

>付喪神
つくもがみですか。
いやあ、そんな言葉は思いつきませなんだなあ。
ねこのひげさんの教養の幅広さに感心しました。

>透明感
たまに透明感のある女優さんが現れますが、彼女はその中でも独特で貴重でした。
勿体なかったなあ。


オカピー
2016/03/13 20:45

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「時代屋の女房」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる