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zoom RSS 映画評「キャバレー」(1972年)

<<   作成日時 : 2016/02/27 09:01   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1972年アメリカ映画 監督ボブ・フォッシー
ネタバレあり

僕が映画ファンを自覚して程ない1972年に映画雑誌紙上でかなり話題になったのを憶えている。個人的にはリアルタイムではなく、70年代後半東京で生活をするようになって名画座で観た。

日本語でミュージカルと言うと“歌って踊って”を想像させるが、英語圏ではもっと幅広い概念で、これなども紛うことなきMusicalである。
 原作は三つあって、クリストファー・イシャウッドの「ベルリン短編集」、その舞台化「私はカメラ」、そのブロードウェイ・ミュージカル化版。形としては最後の舞台ミュージカルの映画版となるが、実際には前二者の要素を相当混ぜているらしい。「スイート・チャリティ」(1968年)で舞台振付から映画に進出したボブ・フォッシーは本作により映画ファンの記憶に残ることになる。

1930年代初めのベルリン、語学研修の為に英国から訪れたマイケル・ヨークが、同じ下宿に住むアメリカ人のキャバレーの女歌手ライザ・ミネリーと親しくなり、このカップルに、彼が英語を教えるドイツ人フリッツ・ヴェッパーやユダヤ富豪令嬢マリサ・ベレンソン、さらに退廃的な貴族ヘルムート・グリームが絡み合って進むうちに、不況をバネにナチスが台頭してくる。

キャバレーの司会者ジョエル・グレイは直接的に彼らに絡むわけではないが、そうした不穏な時代の訪れを感じさせる数々の演目を進行させ、登場人物の運命の傍観者・予言者として機能しているのが面白い。ヒロインの披露する歌曲はそのまま彼女の実生活と重なり、心情を反映する。当時としてはこの手法がかなり新鮮だったと思われる(昨今の作品ならそこをもっと強調するだろうから、今観ると淡白に映らないでもないが)。

グリーム以外の主要登場人物が英国人、米国人、或いはユダヤ人(ヴェッパーも実はユダヤ人)と、数年後にドイツ若しくはドイツ人と敵対する人々であるというのも皮肉な配置で、このお話終了後に起こることになる悲劇を匂わせながら終わっている。ガラス越しにナチス将兵が歪んで映る様子の何と不気味なことよ!

十代の頃は、純情にも、中絶を経てマイケルと別れたライザがキャバレーで懸命に歌う姿の切なさに涙を流したものだが、今回は最後に唄われるこの歌の「人生はキャバレーみたいなごった煮、気楽に生き(行き)ましょう」とでも言っているような感じに、胸を打たれるものがあった。この歌即ち「キャバレー」は正に名曲で、他にも良い曲や面白い曲が多い。

ライザはさすがに歌姫ジュディー・ガーランドの娘、芸も歌も達者。どちらかと言えば映画監督の父親ヴィンセント・ミネリに似ているが、母親に似ているところも結構ある。マイケル・ヨークは当時人気のあった英国俳優、ドイツのヘルムート・グリームは退廃美を買われてルキノ・ヴィスコンティに重用された。

久しぶりにジュディー主演の傑作「スタア誕生」(1954年)も再鑑賞しなければ。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
再見したい作品リストの上位にあり続けていますが、いざとなると後回しになってる映画です。オスカー作品ですから何時でも観れる思ってるんでしょう。
かなり記憶は曖昧ですが、封切りに近い頃に観ましたね。
一番記憶に残っている曲は「マニー」。
♪money makes the world go around 〜
コミカルな中にきわどい毒をまき散らして強烈でした。
十瑠
2016/02/28 09:13
ライザ・ミネリ・・・迫力ありましたね。
ねこのひげ
2016/02/28 15:36
十瑠さん、こんにちは。

>何時でも観れる
そういうものですよね。
しかし、この作品、最近は案外出て来ず、今回出たのもDVD程度の画質でした。これがハイビジョンになったところで特に感銘が増すこともないと思いますが。

>封切
これ、当方へ来たかなあ?
記憶ないなあ。

>「マニー」
諧謔度満点の可笑しい曲でした。
確かに、金で世の中回っていますなあ^^
オカピー
2016/02/28 18:51
ねこのひげさん、こんにちは。

>ライザ・ミネリー
全身ミュージカルという感じでした。
母親のジュディー・ガーランドもそうでしたが。
オカピー
2016/02/28 19:16

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