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zoom RSS 映画評「小さな恋のメロディ」

<<   作成日時 : 2016/02/25 08:37   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 3 / トラックバック 3 / コメント 12

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1971年イギリス映画 監督ワリス・フセイン
ネタバレあり

今月の再鑑賞が映画ファンになりたての頃に観た作品ばかりになったのは全くの偶然で、70年代によく観たこの作品をWOWOWにて再鑑賞。
 最近気づいたのだが、昨今放映される古い作品を観ると、フィルム切り替えの印を抹消する処理がされているケースが多い。古い映画でこれに接すると少し妙な感じがするご老体でござる。

ロンドン、中流階級の11歳くらいの少年マーク・レスターが、下層階級の悪友ジャック・ワイルドと、学校で行われている女生徒のバレエの練習を覗き見して可愛らしいトレイシー・ハイドにポーっとなってしまう。二人はやがて仲良くなって“結婚”を意識、「結婚は早すぎる」と頭の固さを発揮する親たちや学校に反旗を翻し、級友の協力を得て“結婚”、トロッコに乗って“未来”に向って旅立っていく。

この少年たちと同世代の僕が、初恋の人に逢うのはこの映画より少し後である。中学二年の二学期になって彼女は僕と同じ班の、後ろの席になって、舞い上がった。班長であったが、勉強ができること(笑)以外は良いところは少しも見せられなかった。残念。そんなこともあってこの映画の二人の行動は、正に憧れに他ならない。でも、初恋は実らない方が良いと言われる。概ね間違いないであろう。

さて映画に戻る。
 少年たちの大人や四角四面の世界への反抗は序盤から小出しにされ、級友の一人は爆弾作りに夢中になっているし、レスター君にしても父親の読んでいる新聞に火を付ける。休み時間に煙草を吸う生徒も多い。それが爆発するのが校長から説教を受けた後の“駆け落ち”というわけ。
 現実的に考えれば、二人はすぐに見つけられてしまうはずだが、そんなことを考えるのは野暮というもので、次第に上昇していくカメラがトロッコで去っていく二人を俯瞰で捉える画面が醸成する夢気分に暫し浸るべし。

思春期のごく初期の行動なので性的に爽やかなのが一等ヨロシイ。この爽やかさには事実上の音楽監督に起用されたビー・ジーズの楽曲の寄与するところが多いと思う。一般の劇映画において背景音楽という立場を超えて、ここまでミュージック・クリップのような印象をもたらす作品はなかったのではないか。
 こういう既成曲と新規曲を混ぜ合わせた使い方は「卒業」(1967年)の応用編のようにも感じられるが、もっとMTV気分が濃厚。当時台詞ではなく音楽が構成する場面も素敵だなと感銘した記憶がある。
 開巻と共に始まる「イン・ザ・モーニング」、トレイシー演ずるメロディを捉える場面で流れる「メロディ・フェア」、二人がお墓を散歩する時に使われる「若葉の頃」が特に良い。
 ついでに面白い発見があった。ラストの先生と生徒が入り乱れる大乱闘の背景音楽にクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの「ティーチ・ユア・チルドレン」が使われるのは有名だが、どうも爆弾爆発までは本来より1〜2%ほどスローで再生しているようなのである。で、爆発すると本来のスピードになる。混乱による重苦しい気分とその消失を音楽の使い方で表現しているのだ。

配役も実に良い。マーク・レスターははにかんだような様子が新鮮で人気爆発、「卒業旅行」なんて日英合作映画も作られた(当時東宝で「放課後」と共に鑑賞した)。トレイシー・ハイドは美人というタイプではないが非常に初々しく可愛らしい。こちらも大人気ながら、結局まともな主演映画として観られたのは本作のみ。製作時ジャック・ワイルドは19歳くらいでもはや子役ではなかったものの、小柄で童顔なのでほぼ同世代に見えた。10年くらい前に亡くなっている。

監督ワリス・フセインより、脚本を書いたのがアラン・パーカーなのに注目されたし。この後「ダウンタウン物語」「ミッドナイト・エクスプレス」「ミシシッピー・バーニング」を監督し、サムライぶりを大いに発揮する。

映画雑誌紙上でレスター・ファンとワイルド・ファンが醜い争いをしていたっけ。

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小さな恋のメロディ
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コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
仰る通り、この映画の爽やかさは、ビージーズの楽曲の寄与するところが多いですね。もし、ビージーズがこの映画に携わっていなかったら、あのような詩的な雰囲気は出せなかったのではないでしょうか。ビージーズのおかげで、後世まで語り継がれるような映画になったのだと思います。
Kanako
URL
2016/02/25 13:53
>どうも爆弾爆発までは本来より1〜2%ほどスローで再生しているようなのである

う〜ん、気づかなかった。
「♪Teach Your Children」が入った「デジャ・ヴ」は繰り返し聴いていたのに・・。

>混乱による重苦しい気分とその消失を音楽の使い方で表現しているのだ。

成程。使えるかも。
十瑠
2016/02/25 14:39
Kanakoさん、こんにちは。

ビージーズの楽曲自体が当時から独自で爽やかでしたけど、内容にマッチして、素晴らしい叙情性に昇華していましたね。
昔を思い出して、おセンチになりましたよ。
オカピー
2016/02/25 18:53
十瑠さん、こんにちは。

>「♪Teach Your Children」
名作「デジャ・ヴ」の二曲目でしたね。
アナログもCDも持っています。アナログ時代に良く聞きました。

というわけで、「よっ、待ってました」てな感じで聞いていたのですが、「あれっ、違うバージョンなのかな?」と思うくらい印象が違うのでした。
で、暫し聞いていると爆弾が爆発、その瞬間に聞き慣れた「ティーチ・ユア・チルドレン」になり、その瞬間に監督の狙いが解りました。
やはり、これは音楽の映画なのでした。
オカピー
2016/02/25 18:58
 いやぁ、たまらない!
今月は、プロフェッサーの評論が70年代名作に的を絞ってますね。
ポセイドンにキャバレーに小さな恋のメロディとは・・。

これは実は、DVDが出た時に購入しました。
サントラ盤もレコードですが持ってるんですよね(笑)
そのくらい好きな作品ですが、公開当時を含めてもなぜか3回ほどしか観ていない・・。
プロフェッサーの評論に感化されて。いま一度観てみようと思いますが、僕の好きなシーンは冒頭の早朝のロンドンの風景・・トレーシーが、ちゃんちゃんこみたいな服を羽織って、露店に金魚を買いに行くんですよね!

>ここまでミュージック・クリップのような印象をもたらす作品はなかったのではないか。
本当にに爽やかでかつ、鮮やかな印象の作品だち思います。
イギリスやアメリカで受けなかったのは、子供向けの映画と思われたからではないでしょうかね?
僕がボーイスカウトで知り合ったイギリス人数人にこの映画のことを聞いても、誰も知りませんでした(笑)
ジャック・ワイルドやマーク・レスターの名前は流石に知っていましたが・・。

トレーシー・ハイドは、オリエンタルな雰囲気があって人気がありましたね。
彼女が、多様な人種が映画に登場するいまの時代に生まれていれば、ジェニファー・ローレンスヤやクロエ・グレース・モレッツ、アビゲイル・ブレスリンといった、ハリウッドの若手人気女優たちのようになれたかなぁ・
典型的な白人美人女優が全盛の50年前なら、3人とも、主役のオファーが来るタイプではないですから・・。
浅野佑都
2016/02/28 05:19
トレイシー・ハイドは、ロンドンで秘書をやっていると、テレビの「あの人はいま』みたいな番組で紹介してましたね。
ねこのひげ
2016/02/28 15:42
浅野佑都さん、こんにちは。

>70年代名作
半分くらいは偶然なのですが、郷愁を誘われたのかもしれません。
年ですね(笑)

>DVD
おおっ、そうですか。
それではもっと観てやらねば(笑)

>ちゃんちゃんこみたいな服
そうでしたね。可愛かったなあ。
親の服を金魚の代金代わりにする大胆なところもありました^^;

>子供向けの映画と思われたからではないでしょうかね?
そうだと思います。
IMDbを調べたら、観ている人は少ないですが、評価は低くないので、嬉しかった。

>オリエンタルな雰囲気
黒髪の南ロシアの少女みたいな感じがありました。

>多様な人種が映画に登場するいまの時代に生まれていれば
本人の志向性の問題もあるようなので、一概には言えませんが、本人にその気があったら「あるいは」という雰囲気のある女優(子役と言うべきか)でしたよね。
演技もなかなかしっかりしていましたし。
オカピー
2016/02/28 18:43
ねこのひげさん、こんにちは。

>「あの人はいま』
彼女は余り女優志向がなかったのかもしれません。
日本では人気アイドルの扱いでしたが、それほど当たらなかった英国ではちょっと映画に出た女性くらいの感じなんでしょうね。
オカピー
2016/02/28 19:12
中3の秋、日曜日。
中学校の体育館で無料上映。
イギリスの小学生(?)って、こんなに大人っぽいのかと驚きました。
運動会で彼女が見てる前で張り切って走る。でもバテてしまう。ゴールイン後に倒れている。
思春期って感じでした
蟷螂の斧
2016/06/17 07:23
蟷螂の斧さん、こんにちは。

日本と義務教育の仕組みが違いますが、日本で言えば小学生6年生くらいでしょうね。英国制度の言い方では、中等1〜2年生くらいかもしれません。

>思春期
素敵な場面でした。純情な思春期初期、良いですね。
思い返すと、僕が思春期に入ったのは、中学1年のようです^^
オカピー
2016/06/17 22:25
この映画は日本では大ヒットしかし、イギリスでは中ヒット程度。
トレイシー・ハイドが来日した時に、すごい歓声それに対して一番驚いたのはトレイシー・ハイド自身だと言うのを、ある本で読んで驚きました
でも、いいんじゃないんですか?日本のティーンエイジャー達に爽やかな風を送り込んでくれたのですから

>僕が思春期に入ったのは、中学1年のようです

僕は、もうちょっと遅かったです。3月生まれだったし。
蟷螂の斧
2016/06/19 21:19
蟷螂の斧さん、こんにちは。

ヒットしましたねえ。「平凡」だか「明星」で採録コミックがあったのも憶えています。
ビー・ジーズの歌声もラジオからよく流れていましたね。

>トレイシー・ハイド
出演作が全くなかったのに1975年頃まで「スクリーン」誌の紙面を飾っていましたね。

>3月生まれ
十代半ば迄は3月生まれは大分不利ですよね。僕は7月生まれです。
オカピー
2016/06/20 21:26

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