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zoom RSS 映画評「6才のボクが、大人になるまで。」

<<   作成日時 : 2016/02/23 10:22   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督リチャード・リンクレイター
ネタバレあり

事前に“大胆な手法”の作品とは聞いたが、どう大胆なのかは知らなかった。開巻後35分くらいで、6歳でスタートし10歳くらいになったメイソン君を同じ少年が演じているのに気付き(正確には、非常に特徴的な風貌のお姉ちゃんサマンサのほうで確認できた)、「ああ、ずっと同じ俳優が演じるということね」と“大胆”の正体を理解した。そう知って観るより知らないで観る方が絶対面白い。

お話は単純で、メイソン君(エラー・コルトレーン)が小学1年生くらいの時からお話が始まり、向上心の強い?母親(パトリシア・アークエット)の別れた夫即ち実父(イーサン・ホーク)としばしば遭ってスキンシップを重ねるうちに12年の歳月が流れ、高校を卒業、大学に旅立っていく、というだけ。

実父は再婚した女性との間に子供も設け上手くやっているのに対し、出たとこ勝負的な母親は中断していた大学を卒業し大学講師になったはいいが、再婚した大学教授(マルコ・ペレーラ)はアル中のDV男と化し、次の男も似たり寄ったりと失敗も多い。
 という家庭の様相が、少年の青春模様以上の重要度をもって描出されていく。2001年以降のアメリカ南部中流階級家族の、恐らく平均的な様子を描いてなかなか興味深いと言うべし。2001年はアメリカ人の家族観に相当影響を与えることになる9・11が起きただけに、その年くらいからお話が始まるのは決して偶然ではないのであろう。

家族の映画であると同時に、テーマは時間の不遡及性。時間は連綿と続きながら全ては無常で刻々と変化する(子供たちのヘア・スタイルの激しい変化がそれを象徴する)。だから、同じ俳優で撮ったのである。息子の旅立ちを以って母親はやることがなくなったと嘆き、息子は哲学的な観点から瞬間を大事にしないといけないと思う。

監督は僕がサムライと思っているリチャード・リンクレイターで、彼としては「恋人までの距離」3部作の手法を一本にした形。大胆とか画期的とか言われているが、それに関してはマイケル・ウィンターボトムが「いとしきエブリデイ」(2012年)で5年間であるが実行している。複数の作品に渡るケースならフランソワ・トリュフォーのアントワーヌ・ドワネルものでは19年に渡りジャン=ピエール・レオーが主人公を演じた。「男はつらいよ」も一部役者は死去などで入れ替わっているが類する。TVなら「北の国から」や「渡る世間は鬼ばかり」というケースもあるが、1本の2時間3時間の為に5年間なり12年間掛けるのと意味合いは大きく異なると思われる。
 一本の映画の場合、こういうスタンスでスタートした以上通して出演する役者に異変があったらそれまで撮ったものが水泡に帰す可能性があるし、TVシリーズなら撮影機材の変更も問題ないが、一本の映画がアナログからデジタルに変わったら変な具合になるからである。多分これが1990年代半ば以前の企画だったら中座したかもしれない。
 画期的とは思わないが、大胆である。しかし、その難しさを以って評価に加味するには及ばない。映画の評価はスクリーン上が全てであるから。

細かな手法では、少年時代の主人公とガールフレンドが歩きながら話す様子を長い長い縦方向のドリー(揺れないので手持ち・肩掛けカメラではないと思う)で捉えるのは「恋人までの距離」シリーズで見られたリンクレイターお得意のスタイル。まさかと思うが、「按摩と女」(1938年)における清水宏監督の影響なんてないのでしょうね?

お姉ちゃんを演じたのは、監督の娘さんローレライ・リンクレイター。母親役のアークエット姉妹の妹パトリシア、本編登場当初からかなり肥えていたが、12年後にはさらに凄まじいことになっていて吃驚。実感があって良いと言えば良いが、アメリカの食文化に大いに問題を感じる。

個人的には、イーサン・ホーク(父親)が作ったビートルズの架空のアルバム「ブラック・アルバム」を息子に渡す箇所に膝を打った。実は、僕も昔からほぼ同年代の4人のシングル、アルバムから曲を抜粋して編成、「アビイ・ロード」より後のビートルズの“ニュー・アルバム”を作りたいと思っていたのである。「アビイ道路」なんてタイトルは如何?

ようし、「アビイ道路」は今年中に作ってみるぞ。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
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「シンデレラ」 「6才のボクが、大人になるまで。」 ...続きを見る
Akira's VOICE
2016/02/23 10:24
6才のボクが、大人になるまで。
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2016/02/23 11:59
少年時代〜『6才のボクが、大人になるまで。』
 BOYHOOD ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2016/02/23 12:36
6才のボクが、大人になるまで。★★★★
『ビフォア』シリーズなどのリチャード・リンクレイター監督がメガホンを取り、6歳の少年とその家族の12年にわたる軌跡をつづった人間ドラマ。主人公を演じた新星エラー・コルトレーンをはじめ、主要人物4人を同じ俳優が12年間演じ、それぞれの変遷の歴史を映し出す。主人... ...続きを見る
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2016/02/23 12:53
映画「6才のボクが、おとなになるまで」
2014 米 165分 ...続きを見る
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2016/02/23 18:11
「6才のボクが、大人になるまで。」
「ボク」より、ラスト近くの母親の言葉に胸を突かれた。 ...続きを見る
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「6才のぼくが、大人になるまで」☆人をつくるもの
まるでドキュメンタリーを観ているかのような、自然体な演技。 4人の役者が同じ家族の12年間を演じるだけでも凄いのに、本物の家族のようで微塵も違和感を感じさせないのは、やはり子役の姉弟の魅力あってこそでは? ...続きを見る
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2016/02/24 00:47
6才のボクが、大人になるまで。
たとえば、日本の朝ドラは、主に何かを成し遂げた人の生涯を半年で描きますが、この作品は、ベクトル的に、その真逆… ...続きを見る
のほほん便り
2016/04/05 18:47

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
>アビイ道路

祝!そのネーミング!!(笑)
曲目編成などぜひ知りたいですね。
ブラボー記事待ってます。^^

本作、レンタルで鑑賞。
撮影労苦とかそういうのよりも
まんず、お話も映画的にも
別に、何とも、響かず・・・(ーー);
vivajiji
2016/02/23 12:49
vivajijiさん、こんにちは。

>アビイ道路
なかなか面白いでしょ。
頭の中である程度編成できますが、実際に聞いてみるとまず違う印象になると思うので、ちょっとした試行錯誤になるかも。
そこまで力を入れるほどのことではないかもしれませんがね^^

>本作
狙いは面白く、お話は余り面白くない・・・という印象で、(さほど低くはないものの)掲記の星になりました。
セミ・ドキュメンタリーというタイプは、お互いダメなようですね。
オカピー
2016/02/23 21:26
実際にこの映画を観に行った時、「同じキャストで12年間撮影するのは、なんて斬新なアイディアなんだろう」と衝撃を受けましたが、過去にも似たような手法が用いられた映画が何作かあったんですね。知りませんでした。

それでも、この映画は、撮影に費やした歳月が長い分、登場人物の年齢の重ね方に現実味が感じられ、感情移入しやすい名作だと思いました。また、観る機会があれば、ぜひもう一度観たいです。
Kanako
URL
2016/02/25 13:36
Kanakoさん、こんにちは。

>手法
ないことはなかったですが、主要メンバーが全員同じですから、かなり冒険だったでしょうねえ。
僕は、好きなフランソワ・トリュフォーのドワネルものをすぐ思い出しました。

>現実味
時の流れというテーマを最大限効果的に表現する為に、同じ俳優で演じさせるというのが最重要だったのでしょうね。
オカピー
2016/02/25 18:47
根気のいる作業であったろうと感心はしますが・・・
やる必要があったのか?と思わんでもないですね。
ひとつの手法を示してくれたことに価値があるかな。
ねこのひげ
2016/02/28 15:48
ねこのひげさん、こんにちは。

1年に1回集合して一気に作って、また再会というのを繰り返したようです。
時(による万物特に人の変遷)がテーマのようですから、純文学肌のリンクレイターにとっては必要不可欠だったのでしょうけど、相当冒険ですよ。
一種の実験映画として、価値はあったのでは。
オカピー
2016/02/28 19:02

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