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zoom RSS 映画評「薄氷の殺人」

<<   作成日時 : 2016/02/21 09:07   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年中国/香港合作映画 監督ディアオ・イーナン
ネタバレあり

中国の社会派捜査ものである。15年くらい前脚本作を立て続けに観たことのあるディアオ・イーナンの監督作を観るのは初めて。ムードもタッチもジャ・ジャンクーに似ている。

1999年中国北部、15の離れた工場で一人の男性のバラバラ死体が発見される。男性の正体は判明するが、犯人は解らず迷宮入りする。
 2004年、再び同様の事件が起き、5年前の事件捜査で容疑者を不用意に死なせてしまい、刑事を辞めて警備員になっていたリャオ・ファンが、再会した元同僚が先の事件の被害者の妻グイ・ルイメイを追っているのに興味を持ち、独自に調査(彼は警備員なので調査、刑事であれば捜査となる)を開始、追跡するうち、ある男がバラバラ死体らしきものを貨物列車にばらまいている現場を目撃することになる。
 彼はクリーニング店に勤める彼女に男性的感情を覚えながらも、冷静に警察に協力し、店主が1999年に預かり保管していたコートから99年の犯罪の真相に辿り着く。

眼目であるとは思えないものの、ミステリー要素があるから事件解明の詳細は伏せておくことにするが、本格的捜査ものの感覚から言えば女性を追ううちにどう死体を捨てる男性に行き当たったか説明する描写の省略など物足りなく思う部分が少なくない一方で、映画的に優れた箇所も多い。
 一番感心させられたのは次の部分。1999年同僚とリャオがトンネルの中を車で走っている。トンネルを抜けると雪国であった(本当です)。カメラは車からの視線で、オートバイを横に眠っている浮浪者のような男を捉える。その男こそ2004年ぐうたれ警備員になったリャオその人なり。つまり、ワン・ショットで時代を繋いでいるのである。主観ショット(人間の視線)と思っていたら客観ショット(神の視線)であったという扱いにも驚いた。

逮捕され苦悩からの解放を喜ぶグイ・ルイメイ女史に(姿を見せない)リャオがビルの屋上からある意味祝福の花火を打ち上げる幕切れにおける、テオ・アンゲロプロスのような詩的な(或いは幻想的な)ムードも頗る魅力的。

基本は大衆映画ファンにつき、こういうタッチ故に退屈するところもあったので☆★は抑えたが、映画芸術的にはなかなか優れた作品と言いたい。

溝口健二の影響を受けたとされるアンゲロプロスも後継者を数多く生んでいる本当の巨匠。

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薄氷の殺人
【概略】 刑事・ジャンはバラバラ殺人事件を捜査するが、容疑者が死亡し真相は藪の中に。5年後、彼はふたつの殺人事件を知り…。 サスペンス ...続きを見る
いやいやえん
2016/02/21 09:47
薄氷の殺人 ★★★.5
第64回ベルリン国際映画祭で金熊賞と銀熊賞を受賞したクライムサスペンス。中国北部の地方都市で起きた未解決の連続猟奇殺人事件を追う元刑事の男が、被害者たちと関わりを持つ女に惹(ひ)かれながらも事件の真相に迫っていくさまを独自の映像美で活写する。メガホンを取... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2016/02/21 15:54
薄氷の殺人〜ご当地サスペンス?
公式サイト。中国映画。原題:白日?火、英題:Black Coal, Thin Ice。ディアオ・イーナン監督。リャオ・ファン、グイ・ルンメイ、ワン・シュエビン、ワン・ジンチュン、ユー・アイレイ ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2016/02/21 18:59

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
詩的な(或いは幻想的)ムード・・・・中国映画はこれが入ると実に良い作品になるときがありますね。
ねこのひげ
2016/02/21 11:04
ねこのひげさん、こんにちは。

中国映画と韓国映画を比べたら、僕は断然中国映画を買います。
パワーの韓国映画に比べると、品が良い。
オカピー
2016/02/21 22:11

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