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zoom RSS 映画評「フォックスキャッチャー」

<<   作成日時 : 2016/02/16 09:57   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督ベネット・ミラー
ネタバレあり

ベネット・ミラー監督がお得意の実話を取り上げて作り上げた人間ドラマ。

1987年。3年前のロサンゼルス・オリンピックのレスリング・フリースタイルで兄デイヴ(マーク・ラファロ)と共に金メダルを獲ったものの相変わらず貧乏、殆どの日々を孤独な練習に明け暮れるマーク・シュルツ(チャニング・テータム)は、軍事産業で財を成した財閥デュポン家の御曹司ジョン(スティーヴ・カレル)から、アメリカの誇りにかけて翌年のソウル・オリンピックで金メダルを獲ろうと、練習施設のある彼の地所での生活を持ち掛けられる。報酬が貰える上に、彼の愛国心に共感しするところのあったマークは即座に申し出を承諾する。
 その結果前段である世界選手権では優勝を勝ち得るが、レスリングの心得が多少あるらしい御曹司は、オリンピックの勝利を確固たるものにする為にデイヴを何とかこの施設に招き入れたいのが本音。そこで金では動かないというデイヴに一家ごと引き受けるという条件でも出したのであろう、デイヴも彼のレスリング・チーム“フォックスキャッチャー”の仲間に加わる。
 が、兄の協力なしに勝つことを念願としてきたマークは御曹司から侮辱されたことで心が離れ、結局優勝をも勝ち取れず、現場から去る。孤独に苛まれるジョンは、家族との時間を理由に彼を拒絶したデイヴを、後日射殺する。

時間軸的に実話をいじった部分があると言われるが、必ずしもそうとは言い切れない。マークの敗退後映画は時間をはっきり示していないからで、我々観客が勝手にオリンピック直後と思い込んでいるだけのようにも思える。まあ、いじっても全く構わないわけだが。

兄デイヴの立場から言えば、マザー・コンプレックスの富豪とブラザー・コンプレックスの弟との葛藤に巻き込まれた悲劇である。デイヴは家族に恵まれ、程々の生活を維持できる収入はある様子。
 片や、孤独と愛国心をかこつ共通点で結ばれた二人であっても、デイヴを求める富豪と求めない弟との間に亀裂が入るのは目に見えている。
 デイヴにとってお金に動かされた自業自得と言えないこともないが、最初富豪の地所に動かなったことも後で動いたこともそしてそこに居続けようとしたことも全て家族の為であるから、悲劇以外の何物でもない。

諸悪の根源はジョンのマザー・コンプレックスで、恐らく彼は母親(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)に自分を認めさせる為に愛国心にかこつけて一連の行動を取ったと思われるが、その手段がお金頼みと言うのだから情けない。そんな彼が殺人を犯すのが唐突すぎると言う人がいる。しかし、どう見ても精神疾患がある人の心理など外側から解るべくもない。解るべくもなければその動きを描きようもない。そこに、ただ、狂気があったというに過ぎない。
 狂気を描こうとしているのだから、三人の男優の好演が揃った静謐な画面のうちに狂気の沈潜が認められれば映画として狙いをほぼ達成していると言えると、僕は思う。

特に、富豪を演じたカレルは不気味至極、アメリカ映画でこう鬼気迫る演技を観るのは久しぶりの感がある。それを引き出したベネット・ミラーの演出力もこれまでの実績通りきっちり。

観る前はクリント・イーストウッド主演の「ファイヤーフォックス」(1982年)みたいなサスペンスを想像していました。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
>静謐な画面のうちに狂気の沈潜

カポーティ同様、まさにそれですよね。
稼ぐより使う時のほうが本性が出ると
よく言われますが、カネで動く人間ばかりの
中で育てられた子供大人の狂気に翻弄された
兄弟の悲劇ですね。
後味は決してよくないけれど堪能しました。
vivajiji
2016/02/16 15:18
vivajijiさん、こんにちは。

大金持ちの家系からは時々こういうおかしな人物が生まれますよね。
ジョン・デュポンの場合は、子供より馬の方が好きだったのではないかと思われる母親が彼を狂気に走らせたのでしょう。
愛情の不足をお金で補償していれば、まともな人間にはなりようもないです。

独特の空気感醸成が面白かったなあ。
オカピー
2016/02/16 22:02
誰の言葉か忘れましたが、「母親は首に巻き付いた蛇である』というのを聞いたことがあります。
ねこのひげは実感しましたけどね。
でも母親は母親でありますからね・・・
ねこのひげ
2016/02/21 10:37
ねこのひげさん、こんにちは。

>でも母親は母親でありますから
本稿に続く「私の、息子」が正にそれでした。
結果的に二日もマザコンが続いたのか(笑)
オカピー
2016/02/21 21:51

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