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zoom RSS 映画評「マダム・マロリーと魔法のスパイス」

<<   作成日時 : 2016/02/10 10:28   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年インド=アラブ首長国連邦=アメリカ合作映画 監督ラッセ・ハルストレム
ネタバレあり

1980年代後半二人ご贔屓監督ができた。一人はジュゼッペ・トルナトーレ、もう一人は本作を作ったラッセ・ハルストレムである。トルナトーレはクリエイティブで話術が鮮やか。ハルストレムは映像にも苦みのあるお話にも透明感を感じさせ、間違っても悪い後味は残さない。

政治抗争に巻き込まれて祖国から逃れてきたインドの料理人一家がフランスに落ち着いて料理店を開く環境を見出す。子供たちの反対を押し切ってプロデューサーたる父親オム・プリが店を構えたのは、道一つ挟む反対側にミシュラン一つ★の名料理店を臨む場所である。
 インド流に大きな音楽を奏でて商売を始めたものだから、名料理店の女主人ヘレン・ミレンは面白くなく、彼らの食材を先に買い占めてしまう。その反対のこともある。
 諍いはエスカレートし、ナショナリストの料理人が仲間と彼らの店に火を放つ。幸い小火(ぼや)で済むが、これが頑固だがただ伝統を愛するだけのヘレンの心を動かす。店の前の石垣に書かれた「フランスはフランス人のもの」という落書きを一生懸命消し、オム・プリも静かに感謝を以って受け止める。

これが両者の歩み寄るきっかけとなるのだから、【塞翁が馬】を地で行くお話と言うべきで、この雪解けムードをさらに進めるのが、フランス店側のシェフ見習いの美人シャルロット・ルボンと恋仲になるオム・プリの息子の料理人マニシュ・ダヤル。
 若者の腕を見込んで鍛えたいヘレンの頑張りに親父が屈して修業に出したところ1年後に彼女の店は二つ★を獲得、若者はパリの一流店に引き抜かれて一流のシェフになる。彼のいた店は三つ★を獲得するが、彼は出発の地に戻りシャルロットと共にヘレンの店を引き継ぐ。

のんびりと誠にヒューマンな空気のうちにお話を進めるハルストレムの進行具合は誠に滑らか。僕は監督名を知らないまま観始め、滑るような進行ぶりに感心、インドの監督なら収穫だぞと思いながら観ていたのだが、本編が終わって彼の名前を見出し納得した次第。

さて、インド人の俳優とイギリス人のヘレンを主演に起用し、スウェーデン出身でアメリカに定住しているハルストレムがスピルバーグらの出資でフランスを舞台にした映画を撮る、というインターナショナルぶり!
 サブカルチャーの業界では国境の壁などとうの昔になくなっているのだ。しかし、そんな本作が時に現実的に時に寓話的に見せるように、人種・民族間の対立はそう簡単になくならない。

本作が作られた2014年に比べて同時テロを受けた現在のフランス人全体の博愛精神度は減じているだろう。18世紀欧州から始まり今や世界の共通認識である自由・平等を愛する精神を、イスラム原理主義者は破壊しようとしている。言わば歴史の進行を止めようとしている。これに乗っているのが先進国の偏狭なナショナリストで、これら一部の人々は歴史のダイナミズムという概念を知らない模様。帝国主義が現在のグローバリズムの始まりとなったが如く、動きだしたものはもはや止められないのだ。
 人間は【三歩進んで二歩下がる】を繰り返しながら着実に進歩、利口になっている。イスラム国により暫し人類史は2歩下がる感じになるかもしれないが、これも時間の問題だろう。この映画を作った人々が示したように、共通する目的(本作の場合はマニシュ・ダヤルの才能を伸ばすこと)が発見できれば文化の衝突は消えてなくなる。

キリスト教徒が宗教の上に法律を置くまでに1700年ほどかかっている。そもそも姉妹的宗教であるイスラム教は600年遅れてスタートしたから、僕は遅くとも紀元2300年頃イスラム教徒も宗教の上に法律を置くことになると最近考え出した。馬鹿らしい考えかもしれないが、人間というのは実際にはそれほど違わない。

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マダム・マロリーと魔法のスパイス
【概略】 南フランスの小さな田舎町を舞台に、老舗フレンチレストランと、その真向かいにできたインド料理店の料理バトルを描く。 ドラマ ...続きを見る
いやいやえん
2016/02/10 14:53
マダム・マロリーと魔法のスパイス★★★
スティーヴン・スピルバーグとオプラ・ウィンフリーが製作を務め、リチャード・C・モライスのベストセラー小説を映画化。フランス南部でインド料理店を開いた移民家族と、その真向かいに建つミシュラン1つ星の名店フレンチ・レストランの女主人マダム・マロリーが、互い... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2016/02/10 16:21
『マダム・マロリーと魔法のスパイス』
□作品オフィシャルサイト 「マダム・マロリーと魔法のスパイス」□監督 ラッセ・ハルストレム□脚本 スティーブン・ナイト□原作 リチャード・C・モライス□キャスト ヘレン・ミレン、オム・プリ、マニシュ・ダヤル、シャルロット・ルボン、       ミシェル・... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2016/02/10 18:59
マダム・マロリーと魔法のスパイス
THE HUNDRED-FOOT JOURNEY 上映時間 122分 製作国 インド/アラブ首長国連邦/アメリカ 原作 リチャード・C・モライス『マダム・マロリーと魔法のスパイス』(集英社刊) 脚本 スティーヴン・ナイト 監督 ラッセ・ハルストレム 出演 ヘレン・ミレン/オム・プリ/マニシュ・... ...続きを見る
to Heart
2016/02/13 19:01

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
日本の漫画を原作にした映画なんかも海外の役者などを使った方がより面白くなりそうなものがけっこうありますね。
阿部寛さんのオフロの映画なんて、その典型だと思いますがね。
昔の映画にはギリシャやローマの話が多かったですね。
バート・ランカスターなんてよかったですがね。
日本人がやるから受けたのかな?
ねこのひげ
2016/02/14 15:39
ねこのひげさん、こんにちは。

>オフロの映画
日本人が外国人を演ずるバカバカしさを笑いの基本としている、あの映画の場合は、外国人では可笑し味が出切らないような気がしないでもないですね。
しかし、実際にやって見ないとどうなるかは分らないのが映画制作の妙。

>ギリシャやローマの話
CGにより近年また増えつつあります。
出来の良い作品は少ないですが。
オカピー
2016/02/14 19:46

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