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zoom RSS 映画評「ジャッジ 裁かれる判事」

<<   作成日時 : 2016/01/05 10:04   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督デーヴィッド・ドブキン
ネタバレあり

シカゴの敏腕弁護士ロバート・ダウニー・ジュニアが、母親の葬儀に参列する為、兄ヴィンセント・ドノフリオの野球選手としての将来を交通事故で奪った不良性が原因で長いこと疎遠になっている判事である父親ロバート・デュヴォールの待つ鄙びた故郷の町に帰る。葬儀を終えて帰途につくや否や、そのデュヴォールが自動車でかつて温情判決を下してやったのに恩を仇で返した男を殺したかどで逮捕されてしまう。
 離婚協議中大変な最中、父親が優秀な息子の代わりに指名した田舎のセミプロ弁護士が余りに情ない為結局ダウニーが弁護を担当することになるが、癌治療の副作用を理由に正義の人であったはずの父を無罪にする自信のある息子と、それを理由とすることで判事としての晩節を汚すのを嫌う父親の考えが長い間の不仲を象徴するように噛み合わないまま、判決の日を迎えることになり、そこで二人は自分の思う最善を尽くす。
 息子は父親に副作用の事実を認めさせたものの、父親は記憶にないがそうしたことをやる意識はあったと有罪である可能性を示唆、結局故殺罪で四年の懲役刑を宣告される。
 7か月後検事ビリー・ボブ・ソーントンに末期癌を理由に早期仮釈放を認められたデュヴォールは漸くダウニーの優秀性を素直に認め(和解す)る。

敢えて分ければ裁判模様が縦糸、彼ら親子の心情の交錯が横糸ということになろうが、実際には裁判が親子関係に大きな影響を与え、裁判模様と親子関係が互いに共鳴し合って進行するわけで、そう明快に分けられない。裁判という要素を除けば「黄昏」(1981年)を彷彿とする内容で、最後に湖で和解する一幕まで出て来る。比較されれば分が悪いはずだが、相当健闘していて十分秀作と言える出来栄え。

作劇的には、親子の遺伝的行動や習慣的行為が小道具的に活躍してなかなか面白い。例えば、彼が捨てた形の学生時代の恋人ヴェラ・ファーミガと再会して焼けぼっくいに火がついてしまうが、酒場で遊んだ二十歳の娘が彼女の娘で自分が父親ではないかとドキドキするのは、彼女が自分と同じく法科の学生であったり、髪を口に挟む癖が幼い娘と同じだから。彼の娘ではなかったが兄の娘であった(いずれにしても血は争えない)という落ちとして結実するのが上手い。或いは、幼い娘による「私の飴はどこ?」というお菓子の要求手法は彼自身の幼い時の常套。遺伝か習慣か。デュヴォールがダウニーに愛情を注いでいたことを裏打ちする一エピソードともなっていてこれまた細工が利いている。
 こうした細かな布石が補完することで余計に、父親の愛情がその子供時代から絶えることなくずっと続いていたことが裁判を通して、次第にそこはかとなく、浮かび上がる様子に胸が熱くなる、という次第。男親は、民族・国を問わず、愛情表現に不器用なことが多い。泣けるねえ。

デュヴォールの演技はさすがと言うべし。ダウニー・ジュニアも本来の位置に立ち返り好調。

監督名はドブキンDobkinだが、スラブ系の名前か? もしそうであれば、後ろの無声子音kが前の有声子音bを無声子音化するためドプキンと発音することになる。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
『アイアンマン』ばっかりやってられないというところでしょうね。
よき出来でありました。
ねこのひげ
2016/01/11 06:46
ねこのひげさん、こんにちは。

>『アイアンマン』
3作目のダウニー・ジュニアの出演料は5000万ドル(60億円)だそうで、彼の出演料だけで日本のある程度の大作が10本できる。日本映画も大分高くなって10億円を超える作品も少なくないようですが。
 彼のカムバックは嬉しく思ったものですが、まさかこういう形のドル箱スターになるとは思いませんでしたねえ(@_@)
オカピー
2016/01/11 18:35

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