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zoom RSS 映画評「サンバ」

<<   作成日時 : 2016/01/19 10:25   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年フランス映画 監督オリヴィエ・ナカシュ、エリック・トレダノ
ネタバレあり

最強のふたり」が好評だったオリヴィエ・ナカシュとエリック・トレダノの監督コンビが作り上げた準喜劇である。題名にも拘わらず産婆は勿論(笑)、踊りも出て来ない。サンバは移民である主人公の名前だからだ。シリアスな内容をコミカルなタッチで進める境地は前作と大差ないが、今回は前回ほど上手く行っていない印象が残る。移民問題はコミカルに扱うには深刻すぎるということだろうか。

ビザの更新をしなかった為に国外退去処分の憂き目に遭ったセネガル青年オマール・シー(役名サンバ)が、本業の派遣会社での仕事に追い詰められて退避的に移民支援協会のボランティアを始めたシャルロット・ゲンスブールの支援だけではどうにもならず、叔父の許可証や偽の許可証を使って様々な職を綱渡り的に転々とするうち彼女と恋に落ち、格闘するうちに溺死した人物の永久許可証を拝借してフランスに残ることを決意、恋人を得た彼女も自信を持って本業に復帰する。

潔癖な倫理観をお持ちの方に幕切れが頗る評判が悪いが、自分を含めて人間は弱くて愚か(だから戦争をするのだ)であると思っているから、この程度のことで倫理がどうのこうの持ち出すのは、ちゃんちゃら可笑しい。移民や難民自体に問題の多いことは事実であろうが、彼らの抱える厳しい現状を慮れば、かかる倫理観は持てる側の偏狭な倫理に過ぎぬ。

本作の場合、料理人志願の主人公が死んだ人間の許可証を使って損をする人は実質的に誰もいない(これがテロリストなら話は別だ)。少なくともサンバこそ他人の許可証を使うことで自分の名前を失うという代償を払っている。その悲劇性を前段で示しておきながらの、このあっけらかんとした結末は、非常にチグハグだ。
 話を元に戻せば、給料が安いから移民が雇われるのであり、雇用者が安い労働者を雇うことが資本主義において合理的である以上、それで仕事が移民に奪われると元々のフランス人が騒ぐのは少し違う。許可証の不正使用に関しては不道徳どころか法律違反であるが、それが映画のようにできるのであれば行政上の問題であり、そこを直すのが先である。

映画外のことはともかく、本作は移民問題をモチーフにした恋愛映画と見るべきで、道徳に余り拘泥しても面白い結果をもたらさない。ただ、倫理観など問題にする必要はないとは言え、冒頭で述べたように、シリアス千万な物語をコミカルに味付けしたが、そう上手く行かなかったという印象が禁じ得ず、ヒットであるとしてもポテン・ヒット(当たりそこないのフライが野手の間に落ちる安打)くらいだ。いずれにしても、こういう作品は潔癖症な人には向かない。

米国から台湾に渡る時ビザを取っていたのにパスポートの期限が短すぎるとアメリカで足止めを食らったことがある。フライト時間が近づいていたので焦ったなあ。テレックスで台湾当局に打診することになり、問題ないと台湾行きの飛行機に乗った。実際台湾のイミグレでも何の問題もなかった。飛行機会社がアホだったのだ。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
サンバ〜名無し化する移民
ニンフォマニアックのスピンオフ的コメディ 公式サイト。フランス映画。原題:Samba。エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ監督。オマール・シー、シャルロット・ゲンズブール ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2016/01/19 15:22
サンバ ★★.5
日本でもヒットを記録したフランス映画『最強のふたり』の監督エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュ、俳優オマール・シーが再びタッグを組んだコメディードラマ。料理人を目指してひたむきに勤務していたにもかかわらず国外退去を命じられた移民の青年が、追い込まれ... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2016/01/19 15:42
『サンバ』
□作品オフィシャルサイト 「サンバ」□監督・脚本 エリック・トレダノ、オリビエ・ナカシュ□キャスト オマール・シー、シャルロット・ゲンズブール、タハール・ラヒム、       イジア・イジュラン ■鑑賞日 1月4日(日)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2016/01/19 18:56

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
私も、この映画を観に行きました。

「最強のふたり」が凄く楽しかったので、つい期待して観に行ったのですが、「結末に期待してはいけない映画だったなあ」というのが正直な感想です。

結末をドラマチックにするのではなく、結末までに至る道程の途中に重きを置いて撮影された感じが否めませんでした。

道程を通して、フランス在住のアフリカ系移民に置かれている現状を伝えたい監督の気持ちは分かりますが、もう少しドラマチックというか、少しは余韻に浸る事のできる結末を描いてほしかったです。
Kanako
URL
2016/01/21 12:00
Kanakoさん、こんにちは。

多分、移民問題と恋愛の進展をコミカルに描くという着想が悪かったのだろうと思います。

移民問題は恋愛とは結びつきますが、容易にコメディーとは結びつかない。そんな印象を持ちましたね。コメディーの味付けを維持しようとするが為に、最後にああいう些か乱暴な解答を出すしかなかったのでしょう。やはり着想のミスですねえ。
オカピー
2016/01/21 19:48
『最強の二人』はコミカルな部分もよかったですがね・・・・
ねこのひげ
2016/01/24 13:16
ねこのひげさん、こんにちは。

素材との相性の問題でしょう。
オカピー
2016/01/24 21:17

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