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zoom RSS 映画評「マエストロ!」

<<   作成日時 : 2016/01/09 10:05   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2015年日本映画 監督・小林聖太郎
ネタバレあり

さそうあきらという人のコミックをベテランの域に入って来た脚本家・奥寺佐登子が脚色、「毎日かあさん」の小林聖太郎が映像に移した音楽ドラマである。

解散に追い込まれた中央交響楽団の若きコンサートマスター松坂桃李は、期待していた外国のオーケストラでの採用見送りを知って途方に暮れたところへ、楽団再結成の手紙が届き、半信半疑で練習場へ出かけてみると、そこは廃工場。別の仕事が見つからなかった仲間たちと再会しても浮かれることができる筈もなく、素人フルート奏者miwaが混じっているのにも不信を抱く。
 無名指揮者の現れる前に練習を開始するや否や、眼前で仕事をしていた労務者の老人・西田敏行が演奏にケチをつけ始める。彼こそが楽団再結成の呼びかけ人である指揮者その人なのである。

というとぼけた出だしは漫画チックであるがなかなか快調、大衆映画はこう来なければ。

演奏の呼吸が合わなかったり、個人の技術が足りなかったり、仲間同士の不協和音があったり、という問題は、訳があって早めに指揮者の席を追われたこの老人がいとも簡単に解決してしまう。しかるに、今度は、スポンサーが下りオペラハウスも予定をキャンセルしかける、といった興行的な問題が発生する。

フランス映画「オーケストラ!」とお話の構図が似ているのはともかく、夭折したヴァイオリニストである父親の後を追いかけることで自ら演奏家としてブレーキをかけている松坂青年がその殻を突き破っていく、というお話にもなっている。

些か主題が不明瞭であるが、クラシックに詳しくない者が一通り楽しめる構成になっているのは評価しなければらない。「ハート・ロッカー」に対する、帰還兵が本当の戦場はこんなものではないといった意見同様、或いはそれ以上にオーケストラはこんなものではない、という意見は映画鑑賞上は戯言である。「ハート・ロッカー」が帰還兵の為に作られたわけでないように、本作はオーケストラ団員の為に作られたわけではない。彼らは敢えて観る必要がないが、観ても「実際と違う」などと言ってはいけない。本作の観客層は、登場人物の言動に世の中の縮図と庶民的生活感情を見い出して帰宅するのである。

実際、この作品の中で語られるクラシック音楽に関するディテイルには我々門外漢が正確に判断しかねる部分があるが、これが解る人は本作に音楽的な問題を見出すかもしれず、その角度で大衆映画を語っても大概は意味がない。
 大衆映画なのだから、問題が発生すればそれを順次解決し、その結果ばらばらだったオーケストラが一枚岩になっていく、という有りがちだが解りやすいミーハー的なお話を素直に楽しむのがふさわしい。楽しめなければ「はい、それまでよ」だ。

紅白歌合戦にも出場した歌手miwa嬢は独特の高く張った声が大いに気に入った。様子も大変可愛らしい。収穫でした。しかし、紅白はながらながら(笑)観ていたのに記憶がない。本作を先に観ていたらもっと注目して見た(聞いた)のに。再放送があったら今度はちゃんと見る。

リアリズム至上主義がはびこっておる。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
マエストロ!
【概略】 解散したオーケストラが再結成することになるが、集まったのはプロと思えないメンバーばかり。彼らは謎の指揮者・天道のやり方に反発するが…。 ドラマ ...続きを見る
いやいやえん
2016/01/09 10:36
マエストロ!/松坂桃李、西田敏行
さそうあきらさんの同名コミックを原作に『毎日かあさん』のの小林聖太郎監督が松坂桃李さんを主演に映画化した作品なんですが、私が最初にこの映画化を知ったのはシンガーソング ... ...続きを見る
カノンな日々
2016/01/09 10:55
マエストロ!★★★
漫画家さそうあきらが手掛けたコミックを基に、不況のあおりで解散したオーケストラの再起を若手コンサートマスターと謎の指揮者を中心につづる感動のドラマ。コンサートマスターに松坂桃李、指揮者に西田敏行がふんし、寄せ集めの演奏者たちが破天荒な指揮者を前に一転、... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2016/01/09 16:31
マエストロ!
公式サイト。さそうあきら原作、小林聖太郎監督、指揮指導・佐渡裕、エンディング曲・辻井伸行。松坂桃李、西田敏行、miwa、古舘寛治、大石吾朗、濱田マリ、河井青葉、池田鉄洋、モ ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2016/01/09 18:09
『マエストロ!』
□作品オフィシャルサイト 「マエストロ!」□監督 小林聖太郎□脚本 奥寺佐渡子□原作 さそうあきら□キャスト 松坂桃李、miwa、西田敏行、古館寛治、大石吾朗■鑑賞日 2月1日(日)■劇場 TOHOシネマズ川崎■cyazの満足度 ★★★★(5★満点、☆は0.5)<感想>... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2016/01/09 21:51
『マエストロ!』('15初鑑賞12・劇場)
☆☆☆☆− (10段階評価で 8) 1月31日(土) OSシネマズ神戸ハーバーランド スクリーン1にて 15:10の回を鑑賞。 ...続きを見る
みはいる・BのB
2016/01/11 17:48

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
世評ほどは感動しなかったフランス映画っぽくない「オーケストラ」よりも、こちらのほうがぼくは好きかもしれませんね。
 日本クラシック界が全面協力したらしいこの作品、ぼくの好きな理由は、宮下順子、嶋田久作、松重豊といったお気に入りのベテラン俳優がわきを固めてるのもありますが・・。

 妹の同級生に桐朋学園から群響に入った女性がいまして(妹もピアノをずっとやっていましたが、YAMAHAの教師止まり)、ぼくも年に数回、群響のコンサートに足を運びます。

 この映画で演奏される「運命」も「未完成」もすばらしく、いったいどこのオケの演奏を使っているのかと、エンドロールを固唾を飲んでみていたら、ベルリンドイツ交響楽団となっていました。
 
 岸恵子 小林桂樹主演の「ここに泉あり」は、群響がモデルですが、実際の演奏は、東京交響楽団ということでした。

まあ、僕なんかには、二大オーケストラといわれる、ウィーンフィルやベルリンフィルと群響の音の違いすらわかりませんし、演奏の良し悪しも指揮者に負うところ大なのでしょうが、件の楽団員の女性に言わせると、ベルリンフィルの下限の演奏よりは群響の上限の演奏が勝る、というほどのものらしいんですがね(笑)
浅野佑都
2016/01/09 14:29
浅野佑都さん、こんにちは。

「オーケストラ」のほうが★一つ多い評価としてありますが、実は僕もこちらのほうが好みかもしれませんね。
良い意味でミーハー的に素直に作ってあるのが良いと思います。

>宮下順子
若い頃のイメージが残っているので、字幕に出て来るまで解らなかったです^^;

>「ここに泉あり」
大学時代にスクリーンで観ましたよ。
古い高崎駅が出てきて、妙に嬉しかったのを憶えています。

>音の違い
群響は小学生の時ほぼ毎年聞かされました(笑)が、クラシックの演奏のレベルはてんで解りません。
オーディオ・ファンなので、CD等の録音の良し悪しならある程度は解りますが。
オカピー
2016/01/09 20:12
リアリズムとは何でしょうね。
時代劇なぞ本当にリアルにやると、わけがわかんないと思いますけどね。
真実と嘘を混ぜ合わせて面白くするところに映画の面白さがあると思うんですがね。
ねこのひげ
2016/01/11 06:26
ねこのひげさん、こんにちは。

昔は、大衆がリアリズムを求めないので、制作側が牽引してリアリズムに持っていったわけですが、昨今は逆で、何でもかんでもリアリティ、リアリズムで、映画がつまらなくなっていますよね。
本当と本当らしさがごちゃごちゃになっている。

>映画の面白さ
仰る通りと思います。上手く嘘をつくのが良い映画(とブログ開始以来ずっと言っております)。
オカピー
2016/01/11 18:59

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