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zoom RSS 映画評「ギリシャに消えた嘘」

<<   作成日時 : 2015/12/30 09:39   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年イギリス=フランス=アメリカ合作映画 監督ホセイン・アミニ
ネタバレあり

映画ファンを自称するならミステリー作家パトリシア・ハイスミスの名前は知らなけれいけない。「太陽がいっぱい」(1960年)「見知らぬ乗客」(1951年)の原作者だ。彼女の作品の映画化となれば、ましてギリシャが舞台となれば期待したくもなる。果たして首尾は? 

時は1960年代。ギリシャで観光ガイドをしながら適当に観光客から小銭を巻きあげているアメリカのインテリ青年オスカー・アイザックが、亡くなりながら葬儀にも出なかった大学教授の父に似た観光客ヴィゴー・モーテンセンに惹かれ、その若い妻キルステン・ダンストと共に観光の案内をする。
 しかし、男の正体は逃走中の証券詐欺師で、代理で金を奪い取りに来た探偵を誤って殺してしまい、詐欺の件だけを打ち明けてアイザックに逃亡の手助けをさせる。官憲がやがて夫婦が過失致死に関与していることを突き止めたことから青年は彼が逃亡する真の理由を知るが、一方のモーテンセンはキルステンと彼の仲を疑い始め、その結果今度は彼女まで死なせてしまう。何とか逃げたトルコのイスタンブールで、青年はFBIに協力し、彼を追い詰めていく。

欧州で何かを成し遂げてやろうと虎視眈々とチャンスを狙っているアメリカ青年等「太陽がいっぱい」と共通点が多いが、ミステリーの要素は少なく基本は心理サスペンス、それもかなりドラマ寄りである。
 アイザック青年が父親の面影を求めてモーテンセンをフォローしているのに、若い妻を溺愛しているモーテンセンは彼と妻が出来てしまったのではないかと愚にもつかない疑心暗鬼にかられて悲劇に落ち込んでいく、という心理のすれ違いを描くのが眼目で、ギリシャの古跡が幾つか出て来ることから解るようにギリシャ神話をベースにお話が進行し、なかなか面白い。

だから、キルステンが死んでしまった以降の逃避行模様はお話としてはさほど感興が湧かないものの、父の葬儀にも出なかった青年が無縁仏になったモーテンセンのお墓に詣でる幕切れは、その心境を伺わせじーんとさせる。
 モーテンセンは、青年の詐欺的行為を見て、彼が利用するに値すると踏んだのであろうが、青年が父との関係を語る部分を信じないほど疑い深く、為に彼の実像がまるで見えていない。モーテンセンの人生の教訓は、悪行は悲劇を生み、人の見る目のなさが悲劇を増幅するということ。

ギリシャ名跡を色々と取り込んで映画的ムードも満点だが、脚色と監督を担当したホセイン・アミニの進行ぶりに若干腰の弱さがあるだろうか? 
 個人的には、キルステンが残り30分を残したところで死んでしまうのが物足りない。これが2時間を超える長尺の作品なら良いが、実質90分強の作品では些かバランスが悪いのである。

主役三人がスターであり、観光映画の要素もあり、1990年代ならもっと大興業ができただろうに・・・「イングリッシュ・ペイシェント」(1996年)を思い出しながら僕は観ていたが・・・時代は変わった。

日本ではキルステンの不人気が尾を引っ張りました(僕はご贔屓にしているのだが)。

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ギリシャに消えた嘘 ★★★.5
パトリシア・ハイスミスの小説「殺意の迷宮」を基にしたサスペンス。1960年代のアテネを舞台に、詐欺を働いて逃れる詐欺師とその妻に出会った青年を待ち受ける運命を見つめる。監督は『ドライヴ』『47RONIN』などの脚本を手掛けてきたホセイン・アミニ。『イースタン・プ... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2015/12/30 17:18
15-049「ギリシャに消えた嘘」(イギリス・フランス・アメリカ)
子供は父親に期待しすぎる  1962年、ギリシャのアテネ。ツアーガイドをしているアメリカ人青年ライダルは、エレガントなアメリカ人紳士チェスターと年の離れた美貌の妻コレットと知り合う。彼らのガイドを務め、夕食も共にしてすっかり打ち解けるライダル。  ところがその夜、夫婦の宿泊するホテルに一人の探偵が現われ、チェスターはもみ合いの末に探偵を殺害してしまう。実はチェスターは、投資家を騙して大金を奪った詐欺師だったのだ。  彼は忘れ物を届けようと偶然ホテルに舞い戻ったライダルに嘘をつき、逃亡... ...続きを見る
CINECHANが観た映画について
2015/12/31 00:10
ギリシャに消えた嘘
【概略】 1962年、ギリシャ。アテネでツアーガイドをして生計を立てている青年ライダルは、旅行で来たというチェスターとコレットの夫婦とパルテノン神殿で出会う。彼らのガイドを申し出たライダルだったが、その夜に宿泊するホテルに現れた探偵をチェスターが殺してしまう。混乱したまま死体の片付けを手伝ったライダルは、チェスターが投資家たちから高額の金をだまし取って逃走中の詐欺師であることを知る。 サスペンス ...続きを見る
いやいやえん
2015/12/31 06:04

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
私も原作者とギリシアに惹かれ、最近レンタルでこれを見ました。キルステン・ダンストって頬骨が高く細目なのが西欧では異国的で魅力があるのでしょうね。父と息子の関係が骨子になるところ、いかにも米国らしいですね。御記事で、内容がスッキリと整理され頭に入りました。いつもながら素晴らしい分析ですね。
Bianca
URL
2015/12/30 19:59
URL間違っていました。
Bianca
URL
2015/12/30 20:01
Biancaさん、こんにちは。

>キルステン・ダンスト
逆に、その頬骨の高さが日本人には受けない要素なのでしょうねえ。

>父の息子の関係
これを、ありもしない三角関係とすれ違いをおこさせたところが面白かったです。
余りそういう面から評価される方は多くないのが残念でした。という以前に、観ている人が少なすぎますね。

>分析
お粗末なものですが、お役に立てれば幸いです。
オカピー
2015/12/30 22:30
こういった作品を観ようとする若者が減ったという事でしょうね。
残念ながら・・・
昔は、雨が降っているような映画でも観に行ったもんですがね。
情報過多になり過ぎて見逃すことになっているのか、関心を持たれなくなっているのかな。
ねこのひげ
2015/12/31 06:32
ねこのひげさん、こんにちは。

昔から偏りはあったものですが、昨今、興行成績や配収における極端な寡占状態が残念であります。
「スター・ウォーズ」最新作が物凄い勢いで集客しています。価値観が多様化しているなどと言いますが、独り勝ちでは多様性の意味もない・・・

「ジョニーは戦場へ行った」という地味なパートカラーの反戦映画が年間配収ベスト10に入った1970年代、ヴィスコンティ・ブームがあった1970年代、配給会社も努力していました。
観客が悪いのか、配給会社が悪いのか、鶏と卵の関係で何とも言えませんが、現在悪循環に陥っているのは確かですね。
オカピー
2015/12/31 19:28

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