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zoom RSS 映画評「スパイ・レジェンド」

<<   作成日時 : 2015/12/26 09:41   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年アメリカ=イギリス合作映画 監督ロジャー・ドナルドスン
ネタバレあり

ビル・グレンジャーのスパイ小説「ノヴェンバー・マン」シリーズ第1作を堅実な実力派ロジャー・ドナルドスンが映画化した本格スパイ映画である。日本にもう少しスパイ小説ファンが多くいれば、こんなけったいな邦題ではなく「ノヴェンバー・マン」そのままで公開されたのであろうが。

大体スパイ映画はハードボイルド・ミステリーに似てお話が解りにくく、本作もその例に洩れない。特に序盤の解りにくさは、マイケル・フィンチとカール・ガイダシェクの気取った脚色のせいで、際立つ。終わってみれば図式としては非常にシンプルなことが判るだけにもう少し解りやすく構成していれば、的外れの酷評も少しは減った筈なのだが。

バラエティー番組の見すぎだろうか、映画を評する時に“演出”を“物語の構成”や“物語の要素”と間違って述べている人が少なくない。バラエティーは知らんが、映画評や劇評においては“演出”は物語やそれを構成する脚本を支える部分である。
 “Yahoo!映画”にあった「演出が酷すぎる」という方はお話の部分で使っている。彼若しくは彼女の言う登場人物の過去や伏線回収は演出ではなく、脚本に帰する問題だ。言葉の誤用を別にしても、登場人物の過去はスパイ映画として必要最小限解るように作られているのではないか? 余り過去に拘ったらスパイ映画ではなくドラマ映画になってしまう。

ベテランCIAエージェント、ピアース・ブロスナンが若い成員ルーク・ブレイシーにアドバイスするプロローグの一幕の後、引退した彼をCIA幹部ビル・スミトロヴィッチが訪れ、仲間の美人エージェント実は彼の元恋人(メディハ・ムスリオヴィッチ)を救出してほしいと依頼する。のこのこ旧ユーゴの現場に出かけた彼は、かつて厳しく指導したブレイシーに救出したばかりの彼女を殺されて激怒、かつて“エージェントと恋人”に関した説教をおさらいするかのように、ブレイシーが懇ろになった隣の美人を人質にしてかつての教え子に襲い掛かる。

本作の一番嫌な箇所はここで、全く無関係の素人を傷つけるのは誠に後味が悪い。恐らく致命傷を与えないように手加減はしているだろうし、何故か再教育も兼ねているのは解るが、一応我々が応援する側と設定しているはずのスパイがこういう非情な行為をするのは見せ方としてチグハグである。

さて、こうした中、ロシア大統領候補ラザール・リストフスキーの秘密を知っている難民女性の捜索をCIA、候補側共々行い、彼女に手を貸したソーシャルワーカーのオルガ・キュリレンコが鍵を握る人物として浮上する。実はブロスナンが手中にしたオルガがやがてその当の本人であることが判明、実はリストフスキーと組んでいた悪党の正体を現したスミトロヴィッチは彼が元恋人との間に設けた中学生くらいの娘を人質にオルガを引き渡すようにブロスナンに要求する。

プロローグで繰り出される“エージェントと恋人”及び“人質”が最後まで通奏低音のように使われるなど案外一貫性がある物語となっている。逆に、終わって考えた時に疑問が湧く点が幾つもあって整合性に関しては必ずしも満足の行く出来栄えではない。

CG全盛時代にあっては地味と評されるが、ジョン・ル・カレのようなものを地味と考える僕には十分派手で、フィクショナルなスパイ・スリラーとしては丁度良いくらいの塩梅ではないだろうか。

ドナルドスンの“演出”は正統派で大変見やすい。ご贔屓に近い監督であるだけのことはある。

スリラーも誤解して使っている人が多い。グロテスク、猟奇もそう。猟奇はそもそも人体に関係ない。

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スパイ・レジェンド ★★★
ビル・グレンジャーの小説「ノヴェンバー・マン」を実写化した、スパイサスペンス。CIAの敏腕エージェントとして活躍していた過去を持つ男が、自身が育てた現役スパイからの襲撃とその裏に隠された陰謀に挑んでいく。メガホンを取るのは、『バウンティ/愛と反乱の航海』... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2015/12/26 18:44
スパイ・レジェンド
【概略】 かつては“ノベンバー・マン”というコードネームを持ち、高度な訓練を受け活躍していた元CIAエージェントのピーター・デヴェロー。静かな引退生活をしていた彼は、元同僚たちが次々と殺されているのを知り助けに向かうが、その矢先、愛していた元同僚女性が無残にも殺されてしまう。しかもその犯人はかつて自分が所属していたCIAだった。 アクション ...続きを見る
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2015/12/26 19:56

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
スパイ物というと007だと思う人が多いですからね。
こういうじっくりした映画は見なくなっているんでしょう。
ねこのひげ
2015/12/27 16:37
ねこのひげさん、こんにちは。

007もリアル指向になっていますけど、まだまだ派手ですね。
オカピー
2015/12/27 21:32

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