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zoom RSS 映画評「さらば、愛の言葉よ」

<<   作成日時 : 2015/12/24 09:32   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2014年フランス映画 監督ジャン=リュック・ゴダール
ネタバレあり

商業映画に復帰して以来ジャン=リュック・ゴダールにおける作品の言葉、即ち(僕はフランス語が全く解らないから)字幕の文字群を感性が感じるままに映像に溶け込ませながら観ることにしている。その哲学的文言を理解しつつ読もうとしたら映画で一番肝心である筈の映像についていけなくなる。尤もゴダールの画面には映像としての文字も多用されるから、実写映像は画面の一部である。僕がゴダールの映画を論じる時は、一般の作品と違い、画面≠実写映像のつもりで書いているので注意が必要だ。

ゴダールの映画はまずゴダールのファンと勉強熱心な映画マニアしか観ないのだから、邦題は“愛の”が全く余分である。そんなものを付けてもミーハーな一般ファンが観に訪れるはずもない。来るとしたらチャンドラーの「さらば愛しき女よ」の映画化とでも勘違いしてやって来るそそっかしいミステリー・ファンくらいなものだ。などという冗談はともかく、恐らくゴダールはこの題名の“言葉”を聖書の「始めに言葉ありき」の言葉として考えていると思う。

全くないに等しいストーリーは、男女が色々な問答の末に別れていく、というお話で、その間に女が拾った犬が絡んで来るといったところなのだが、それにしても重要なのは男女の別れではなく、彼らが交換する言葉が聖書に由来するもの、つまり言葉は神であるということ。従って、西洋人であるゴダールにとって、「言葉にさよならする」ことは、ニーチェではないが、「神は死んだ」という想念に等しいであろう。
 僕は観ながらメモに“此岸と彼岸”と書いている。しかし、単にそこに思いが行ったに過ぎず、凡庸な俗人に過ぎない僕には、それ以上説明しろと言われてもお手上げである。

3Dで撮ったということだが、2Dで観た僕が一番印象に残った(と言おうか少し吃驚した)のは、右にいた女性が左に移動する時に男性のいる全く別のショットとオーヴァーラップ(ディゾルブ)して一体化するところで、ここに3Dの効果が特に発揮されているらしい。久しぶりにインパクトを受けた。その他ポラライゼーションなど色々いじくった映像が文字面とともにコラージュのように構成されている。

ここ何十年基本的に同じ感じであるから今更ながら、ゴダールくらい色彩を意識させる映像作家もそうはいまい(他にいないと断言できる程には研究していない)と感心しつつ、相変わらず解らない。

内容的には、ゴダールはもはや商業映画とは言えない。Godardだけに神(God)と芸術(art)の申し子なのだ。

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コメント(4件)

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>色彩を意識させる
そう、とにかく色がきれい、絵としてきれい、映像がきれい。フランス語と響きあうような画面の流れがそのまま映画のすばらしさに化ける。
映画としてみると、映画による映画という文化の批評、それも批評詩みたいで、好き嫌いが分かれるのは仕方ないのでしょうね。私もそれほどよくわかってるわけでもないし、普段好んで見るわけではないですが、でもたまに観るとすごいな、いいな、ゴダールがいてくれてうれしいなあと思います。
淀川長治はゴダールについてこんなこと言っています。
http://illcomm.exblog.jp/12280726/
さすが淀川先生、うまいこというなって。
nessko
URL
2015/12/26 11:24
nesskoさん、こんにちは。

ゴダールは、画面の構成がコラージュのようであり、画面と台詞やナレーションとがコラージュを成し、場面の数々がコラージュを成す、そんな感じの作家ですよね。

トリュフォーが脚本を書いたはずの「勝手にしやがれ」で既にゴダールは、唐突に映画の外に対してコメントするスタイルが取られていて、トリュフォーの脚本をいじっていると思いますが、作品に出て来る言葉だけでなく、作品自体が映画文化批評になっているという面白さがありますね。

>淀川先生
ゴダール以外に作れぬ映画、というのは正にその通りで、ゴダールが好きなのではないかと感じた作家と言うか作品は何本か観ていますが、トリュフォーのように後継者が現れない。
 真似できませんものね。この、映画製作に対する、余りに自己言及的なスタイルは。
オカピー
2015/12/26 20:53
ゴダールがまだ映画を作っていたのには驚きでありました。
85歳だそうで、そこいらの映像作家を気取っている連中は観るべきでありましょうね。
ねこのひげ
2015/12/27 16:30
ねこのひげさん、こんにちは。

ゴダールの精力には本当にびっくり。
同じような作品が多いとは言っても、老け込まないのが凄いです。
オカピー
2015/12/27 21:26

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