プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「嗤う分身」

<<   作成日時 : 2015/12/20 09:26   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 3 / コメント 2

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年イギリス映画 監督リチャード・アイオアディ
ネタバレあり

去年の夏に観た「ベルトルッチの分身」(1968年)と同じくフョードル・ドストエフスキーの「二重人格」を映像化した異色作。見た目の不条理さはドストエフスキーよりカフカの様相で、1980年代後半から90年代前半にかけてこの手の映画が流行ったのを思い出す。

要領の悪い会社員サイモン・ジェームズ(ジェシー・アイゼンバーグ)が会社に出かけてみると、まるで社員として扱われず苦労する。その原因は自分に瓜二つだが妙に積極的な新人ジェームズ・サイモン(アイゼンバーグ二役)にある。ほのかに思いを寄せる事務員の妙齢美人ハナ(ミア・ワシコウスカ)との恋路を手伝ってもらえるのかと思いきや、この新人君自身がものにしようとした為双眼鏡を使って彼女の居る隣のビルを探っているうちに或る男が自殺をする現場を目撃してしまう。ハナの自殺未遂を発見しても感謝されず、遂に会社に居所のなくなったサイモン・ジェームズは自殺を図るが、ハナに救われる。

サイモン・ジェームズが前に発見した自殺男は実は彼自身であり、お話は円環する。
 サイモン・ジェームズ君がサイモン・ジェームズ君を隣のビルに見るわけはないから、我々がサイモン・ジェームズと思っていた若者は実はジェームズ・サイモンだったのかもしれない。しかし、実際には彼は一人であって、消極的な彼を、頭の中にいるもう一人の彼が積極的なジェームズ・サイモンとして変な具合に彼の後押しをするというのが、形而下のお話であろう。
 ハナに救われた彼が本当の彼で、この事件によりジェームズ・サイモンは消えて、ハナとよろしくなっていくのに違いない。

あれやこれや色々と考えがちな人物は必ずこういうシチュエーションのうちに生活しているはずで、僕なども時々強く実行することを推す自分が出現するのを経験する。で、結果的にやらなかった方が良かったということが多く、「役に立たない奴だ」と苦笑する本来の自分がいるのである。こうした状況を具体的に映像化するとこんな感じになるのではないかと思って観れば良いと思う。躊躇を知らない積極人間にはこの感覚は解らないかもしれない。

どちらかと言えば、超時代的なカフカ的な(?)色彩や美術を楽しませようというのが主眼のようで、これに身を任せられない観客はきっと退屈するだろう。

坂本九の「上を向いて歩こう」、ブルーコメッツの「赤坂の雨」「草原の輝き」「さよならの後で」「ブルー・シャトウ」・・・と日本の歌謡曲が使われているのが興味深い。日本語でも妙に日本的に感じを漂わせないのが秀逸。
 ついでに、フォークのクラシック「イースト・ヴァージニア」もジョーン・バエズではなくダニー&ジ・アイランダーズのバージョンで紹介される。なかなか哀愁のある佳曲です。

最近1960年代後半に大ブームになった日本のグループ・サウンズはグランジ・ロックとして(残念ながら日本の)一部で評価されていると聞いた。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(3件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
嗤う分身〜回帰分析的ハッピーエンド
公式サイト。イギリス映画。原題:The Double。フョードル・ドストエフスキー原作、リチャード・アイオアディ監督。ジェシー・アイゼンバーグ、ミア・ワシコウスカ、ウォーレス・ショ ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2015/12/20 11:00
嗤う分身 ★★★
ロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーの著書を、ジェシー・アイゼンバーグ主演で映画化した不条理スリラー。内気でさえない男の前に、見た目は全く同じながら性格は正反対のもう一人の自分が出現したことで、全てを狂わされていく男の姿を描く。監督はコメディアンと... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2015/12/20 18:32
『嗤う分身』('14初鑑賞77・劇場)
☆☆☆−− (10段階評価で 6) 11月8日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター4にて 16:55の回を鑑賞。 ...続きを見る
みはいる・BのB
2015/12/20 19:31

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
この手の不条理映画というのは若いころよく観に行きました。
いまは疲れるので見ませんけどね。
日本の歌が使われているのは驚きでありました。
監督は日本に詳しい人なんですかね。

そういえば、スターウォーズの監督はAKBを映画に出演させたいとか言っておりましたね。
ただのリップサービスかもしれませんが・・・
ねこのひげ
2015/12/21 03:06
ねこのひげさん、こんにちは。

>日本に詳しい人
なかなか面白い選曲でしたが、若い人はブルーコメッツの各曲は知らないでしょうねえ。
これを知っているかいないかで本作の面白味も相当変わると思います。

>AKB
リップサービスでしょうが、たまに本気で考えている人もいますよね。
オカピー
2015/12/21 19:18

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「嗤う分身」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる