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zoom RSS 映画評「大空港」

<<   作成日時 : 2015/12/12 09:52   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1970年アメリカ映画 監督ジョージ・シートン
ネタバレあり

後に「エアポート」シリーズに発展していく第一作、という以上にパニック映画の嚆矢と言って良い秀作。この作品から「ポセイドン・アドベンチャー」(1972年)が生まれ、「タワーリング・インフェルノ」(1974年)が生まれたと言って過言ではない。
 アーサー・ヘイリーの大ベストセラーをジョージ・シートンが脚色、映画化したが、シートンとしては生涯一番の出来栄えではないかと思う。

主な舞台はアメリカはイリノイ州スプリングフィールド市にあるリンカーン空港。
 突然の大雪に空港長バート・ランカスターは大わらわ、整備責任者のジョージ・ケネディーを呼び出して動けなくなった飛行機の問題に対処する一方、愛人関係にある航空会社の接客主任ジーン・シーバーグの連れて来た無銭乗車常習者の老婦人ヘレン・ヘイズの相手もしなければならないし、妹バーバラ・ヘイル(後に有名になるウィリアム・カットのお母さん)の夫である機長ディーン・マーティンの非難もうまくかわさなければならない。マーティンが試験官を務める飛行機には、ノイローゼの労務者ヴァン・ヘフリン(遺作)が搭乗する。

というのが前半のお話だが、積雪で飛行機が立ち往生する事態が終盤のパニック場面におけるサスペンスを大いに盛り立てることになるし、この部分で「グランド・ホテル」形式に則って航空関係者の相関図が頗る簡潔にして鮮やかに説明される。このスムーズな流れがあるが故に中盤以降にわかに高まるサスペンスが大いに機能することになるのである。

些かクラシックなコメディ・リリーフとして前半を楽しませるヘレンおばさん(戦前の名作「戦場よさらば」のヒロイン女優)が後半も意外なほど活躍する。狂言回しでもある彼女の配置が実に上手い。ジーンや税関責任者ロイド・ノーランらの細部の記憶によりヘフリンが爆弾を機内に持ち込んだ危険な人物であることが徐々に判明していく中盤の倒叙ミステリー的展開も相当面白く楽しめる。

かくして折角ヘフリンの危険性にたどり着いたのに“善人”たちに邪魔され、爆破は起きる。後はいかに後部に穴の開いた飛行機が雪で立ち往生する空港へ着陸するか・・・に特化、空港側と飛行機側が織り成すサスペンスにより手に汗を握らせることになる。

多分40年ぶりくらいの再鑑賞だが、前回の記憶よりずっと楽しんだ。あの時は中学生くらいだったから布石部分が今回のように楽しめなかったのかもしれない。家庭不和に陥っているランカスターとジーンの関係、女癖の悪いマーティンとスチュワーデス、ジャクリーン・ビセットの不倫関係というドラマ部分は、パニック映画の定石となっていくサスペンスの合間を繋ぐパテみたいなもので、本作の中ではなくて良い部分ではあるものの、だらだらしないのでマイナスになっていない。

カットの切り替えの代わりに当時流行っていた分割画面を有効に使い切れ味に貢献しているのも印象に残る。空港警備関係者を集合させるところで四隅が徐々に埋まっていくところなど特にゴキゲン。

こうして振り返ると、矢口史靖の「ハッピーフライト」(2008年)は本作から相当拝借していることが判る。矢口監督は本作を研究したのに違いない。

「エアポート」シリーズは題名に偽りありで、本作以外空港(エアポート)は殆ど出て来ない。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
>ジョージ・ケネディー
昔はパニック映画にジョージ・ケネディーが出てくると、ああだいじょうぶだ、助かるぞ、みたいな安心感が持てましたね。そういう役が多かった記憶があります。
>「グランド・ホテル」形式
パニック映画はこれがよいと思います。大ヒットした「タイタニック」は主人公二人の恋愛ものみたいになってて、淀川長治先生が、まあガキの話だけ! つまらない! とまでおっしゃててね。見た人にはラブストーリーとしても感動したといっていた人が多かったので、淀川先生ほどきびしく批判することは私には出来ませんが、たしかに昔の白黒のタイタニック映画は「グランドホテル」形式だったのでもっとおもしろかったなと思ったですよ。時間も短くすっきりまとめられいたし。
nessko
URL
2015/12/12 11:41
nesskoさん、こんにちは。

>ジョージ・ケネディー
結局「エアポート」シリーズには同一人物役で全て出ているようですね。
邦画の「人間の証明」は作品が弱くて残念でしたけど。

>「タイタニック」
イギリス製の「SOSタイタニック」が僕は大好きでしたよ。最後のオーケストラの場面は胸がつまりましてね。
淀川先生のお友達でもある双葉先生は、「タイタニック」は戦前の「歴史は夜つくられる」の焼き直しみたいだと仰っていました(まあ悪くない、といった評価でしょうか)。僕も若い人ほど(僕も少しは若かった^^)感激は出来なかったけれども、それなりに楽しみました。「SOSタイタニック」には及ばなかったですが。

オカピー
2015/12/12 21:04
これは良かったですね。
後から作られたエアポート物は酷いのばかりでありました。
おばあちゃんが、凝りもせずにまた無賃乗車しようとするのが笑えました。
今では、無理でしょうね。
ねこのひげ
2015/12/13 11:18
ねこのひげさん、こんにちは。

チェックが厳しい今では、ヘレンおばさんもヴァン・ヘフリンの爆弾男も無理ですね。
オカピー
2015/12/13 13:50

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