プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「バツイチは恋のはじまり」

<<   作成日時 : 2015/12/11 09:19   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 4

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年フランス映画 監督パスカル・ショメイユ
ネタバレあり

長編デビュー作「ハートブレイカー」で古典的で上品な喜劇スタイルがよろしいと嬉しがらせてくれたパスカル・ショメイユの日本における第2弾。これもまたシチュエーションで面白がらせてくれる古典的な恋愛コメディーで少々嬉しくなったが、残念ながらショメイユ氏、僕より年下の54歳なのに今年の8月に癌で死んでしまった。

ダイアン・クルーガーはドイツの血を引くハーフのパリジェンヌ。歯科医師ロベール・プラニョルと同棲して10年になるが、古い結婚観に囚われている家系なので結婚して子供を産みたいと思っている。しかし、一族の女性は初婚は必ず失敗するジンクスがある為踏み出せない。
 そこで考えたのが結婚した当日に離婚できるデンマークの法律を使ったものだが、相手が現れなかった為に飛行機で隣席になったロシア在住のフランス人ダニー・ブーンをピンチ・ヒッターに決める。
 彼がケニアに取材に行くと知ると、彼女いない歴40年くらいの彼を追いかけてマサイ族のしきたりに従って結婚する。フランスでサヨナラするつもりだったのに存外これを真面目に考えていた彼がフランスの役所に婚姻届を出していた為計画はあえなく頓挫。ロシアに押し掛けての嫌がらせ作戦も奏功しないが、彼女の本音を知った彼は自ら離婚届を渡す。
 それでは最後の一日を楽しもうと一緒に羽目を外したことから彼女の心に新たな感情が芽生える。

ラブ・コメディーの定石に落ちてしまう幕切れこそ捻り不足で、不満が残るが、彼女が離婚する為の結婚に悪戦苦闘する状況(シチュエーション)のバカバカしさに笑いころげた。嘘と誤解がシチュエーション・コメディーの二大要素であるとずっと言ってきたが、本作の場合一見それに当てはまらないようでいながら「偽りの結婚」という意味では嘘の系列に入るわけで、本作も例外ではない。

ダイアン女史はプラニョルと一回結婚して離婚、再婚すれば良いわけだからそんなに苦労する必要はあるまいと序盤のうちに思った(登場人物が終盤同種のコメントをする)が、それを言うと映画が成り立たなくなってしまうし、実際大きな問題にあらず。「恋は盲目」の諺を地で行く面白さと言っても良いからである。

しかるに、残念ながら世評は余りよろしくない。ヒロインの“身勝手な”行動故であろうと推測するものの、シチュエーション・コメディーには多分に悲劇性が内在している。パーフェクトな善人に悲劇を味合わせるのが良いとでも、否定的な方は思っているのだろうか? 結果的に彼女は“可哀想な”相手と結ばれ、帳尻を合わせる。それまでの問題(例えば彼女の身勝手な性格)を突然打っちゃってしまってこその喜劇なのである。自分は決して同種の行動はしないと思い込んでいる、仏様のように妙に潔癖な、即ち不器用な鑑賞者がいるものだ。

原題は「完璧な計画」。これは彼女の計画のことを反語的に指している部分もあるが、恐らく同時に、彼女が不満に思う長年の恋人プラニョル氏の性向をも指す。彼のこの完全主義的性格が彼女を最終的に嫌がらせたのである。

シチュエーション・コメディーも実は絶滅危惧種なのだ。世界中が下品なお笑いにばかり走っている。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
私もこの映画を観ました。

シチュエーション・コメディーは、守るべき文化の一つだと思います。観る前からなんとなくハッピーエンドになる事が分かっていても、そこに至るまでの道のりを素直に楽しみたいのです。

この映画の場合、主人公の一族の女性たちは再婚して初めて幸せになる設定で、主人公もそうなろうと懸命にもがきますが、その姿(特にロシアでの嫌がらせ作戦)は、私の中にある邪念が取り払われたような気がして、とても楽しかったです。
Kanako
URL
2015/12/11 13:30
Kanakoさん、こんにちは。

>守るべき文化
破天荒なシチュエーションで笑わせるのはありますが、あの手の常識以下のお話はシチュエーション・コメディーとは言えないわけで、本当に欧米で少なくなりました。
かつてビリー・ワイルダーのような大家がいたアメリカは特にひどい状態ですよね。

>そこに至るまでの道のりを素直に楽しみたい
僕も先が読めるかどうかではなくそのプロセスが楽しめるかどうかが重要とよく言ってきました。作る方もそれを目指して作っているはずですが、「先が読める」などと言ってそれを理由に貶す人が多いのが現状。残念です。
オカピー
2015/12/11 21:26
アメリカでは、漫才も絶滅しているそうで、一人でするスタンダップコメディが全盛だそうであります。
ただひたすら一人でしゃべるコメディに何万人も集まることがあるとか。
ねこのひげ
2015/12/13 11:15
ねこのひげさん、こんにちは。

風刺で知られたレニー・ブルースや今や映画界の大御所ウディー・アレンも、スタンダップ・コメディアンの出身ですよね。
アメリカの漫才は、かつて映画界で人気でしたけど、ジェリー・ルイスとディーン・マーティンの底抜けコンビが本格的なものでは最後になりましたか。
オカピー
2015/12/13 13:47

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「バツイチは恋のはじまり」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる