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zoom RSS 映画評「ローマの教室で〜我らの佳き日々〜」

<<   作成日時 : 2015/11/08 09:49   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年イタリア映画 監督ジュゼッペ・ピッチオーニ
ネタバレあり

1939年に芥川賞を受賞した長谷健の小説「あさくさの子供」を読んで、先生は大変だなあと感じ入った。半世紀以上後の自由主義・個人主義の全く体制の違う別の国イタリアにおける教師を描いたこの作品でも同じようなことを感じる。

“教師の仕事は校内のみ”を信条とする女性マルゲリータ・ブイが校長を務める公立高校に赴任してきた国語の補助教員リッカルド・スカマルチオが、派手な服を着て挑発的な言動を繰り出す女生徒シルヴィア・ダミーコの対応に苦慮する。母親が死んだことを理由に欠席するようになった彼女に校外で説得を繰り広げるが、同級生から彼女の母親を見かけたという言葉を信じて彼女を落第させてしまう。

このエピソードに先生の大変さが集約されているような気がする。生徒を余りに信用してもダメだが、落第を決定した後に彼女の母親には双子の妹がいてそっくりである事実が判明し、真実を言った彼女を信じないことでその生涯を左右してしまったかもしれない。僕の印象に過ぎないものの、母親の死を信じていたなら成績不良とは言えども落第させなかったように思われるのだ。「あさくさの子供」にも心情的に似た印象を覚える挿話があったと思う。
 教師の権威が現在よりずっとあった封建主義的全体主義的な開戦前夜の日本と、各人が勝手な振舞いをする現在のイタリアとで、こうした共通点があるということは、これが普遍的な問題であるという証明になる。

教師の仕事は校内だけであるとして熱血補助教師を批判する校長が、母親が行方不明になり家に入れず校内で眠っていた生徒ダヴィデ・ジョルダーノを発見、彼が肺病を病んでいたことから母親代わりに病院に通う羽目になる、というエピソードも教師の仕事は本当に校内だけなのだろうか、という疑問を示して印象深い。

二人とは全く違って老美術教師ロベルト・ヘルリツカは生徒がやる気を見せない為にすっかり教育というものに諦観を抱いているが、ある時昔彼に教わったというダメ生徒ルチア・マシーノから電話が掛かってくる。彼女が勤めているという診療所でこっそり検査をしてもらう。「自分から電話をしてきて気付きもしない」と呆れていると、彼女の方から診察結果を持って訪れる。後日彼女は恐らく別の診察結果を持って教室に入っていく。「いつも一番遅く来るな」とジョークで彼女を迎える老教師。恐らく先が長くないこの老教師を彼女は慕って訪れる。
 教師の何気ない言動がきっと彼女の人生に何かを与えたに違いない。これが本作の副題「我らの佳き日々」が示すことではないだろうか。こういう生徒が一人でもいれば、教師は自分の仕事を褒めて良いと思う。

国は生徒や親が我儘になって先生が苦労を強いられている時代に教員数削減を提案している。先生を殺す気かい?

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
なぜ、他人の言う事をこうも簡単に確認もしないで信じてしまうのか?理解しがたいですね。
日本の振り込め詐欺もそうでありますけどね。
ねこのひげ
2015/11/08 18:04
ねこのひげさん、こんにちは。

>他人の言う事
本作の生徒も嘘は言っていないのですが、似た人もいるわけですからねえ。
残念ですし、なかなか難しいものがあります。

>振り込め詐欺
今日の新聞によると、9月の被害額は今年最高だそうで。
振り込め詐欺ではないですが、金融詐欺グループに騙された僕は何も言えませんよ。当方の場合は、ちょっとした欲で騙された形。
どちらも人間の心理をよく突いているということですね。
何十年か経ったら金持ちの年寄りが減りますから、件数的には減るでしょう。
オカピー
2015/11/08 19:25

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