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zoom RSS 映画評「歓びの毒牙」

<<   作成日時 : 2015/11/24 09:25   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
1970年イタリア=西ドイツ合作映画 監督ダリオ・アルジェント
ネタバレあり

【毒牙】と書いて【きば】と読ませる。

ショートショートSFで有名なフレドリック・ブラウンのミステリーを改変して作り上げたダリオ・アルジェントの監督デビュー作。一部でマニアックな人気を誇るホラー映画監督であるが、僕は全く関心もないし、感心もしない。ミステリー趣味を発揮していたこの頃はまだ良かったが、段々残忍な描写だけが目立つ監督になってしまった。

手詰まりで気分転換にローマを訪れた米国の作家トニー・ムサンテが、連続女性殺人が世間を騒がしている折、中をよく伺うことのできる美術館で男女がもみ合っているのに気づく。しかし、透明な内ドアは電気でシャットアウトされており、そのうちやはり透明な外ドアも閉められて身動きが取れなくなり、通行人に警察を呼んでもらう。
 被害に遭った美術館長夫人エヴァ・レンツィは軽傷だが、やって来た警部エンリコ・マリア・サレルノは(恐らく連続殺人事件と関係があると踏んで)重要目撃者である彼からパスポートを取り上げてローマに留まるように命じる。
 もみ合っていた男を思い出そうとしているうちに事件に興味を持ち始めた彼は探偵よろしく調査を開始、館長ウンベルト・ラホや、連続殺人の被害者の一人が勤めていた美術商が売った絵画が一連の犯行に関係があるのではないかと考えて作者を訪れるが、この時点で収穫はない。
 しかるに、彼のローマでの作家活動をコーディネートしてくれる鳥に詳しいマリオ・アドルフの協力により脅迫電話が掛けられた場所が特定されると、犯人が姿を現す。

全く面白くなかった「サスペリア2」(1976年)とほぼ同じ物語らしい。かの作品は三十何年か前に観たものの忘却の彼方になっているので、あるHPの受け売りである。

アルジェントがそういう作家ではないのは解り切っているが、相変わらず論理的な展開となっていない。犯人はほぼ想像がつくので、実質的には倒叙ミステリー的な展開ながら、鳥の情報により電話が掛けられた場所が特定され、そこから唐突にも犯人が明らかになる。自称真犯人が死んだ後突然真の実行犯がムサンテを襲撃する。
 彼の恋人スージー・ケンドールがアパートで犯人に襲撃され、或いは拉致されるサスペンスが後半から終盤にかけての見どころとは言え、犯人が自ら正体を現すのはミステリーとしては興醒めで、犯人が判って犯行理由などを突き止めるというのは展開として逆ではあるまいか? 

出来栄えはまあ予想通りだが、アルジェントがヒッチコッキアン(ヒッチコック・マニア)と聞いたのは多分今世紀になってからなので、専らその辺りに注視して観てみた。
 犯人が偏執狂的であるという点は「疑惑の影」「サイコ」に繋がる。自分を襲撃してきた黄色い服の男が入って行った場所に後から入ると、そこには同じ服を着た男たちが集まっている、という場面は正にヒッチコック的で本作で一番面白い部分。スージー襲撃場面では「サイコ」のジャネット・リー殺害場面を模倣し、犯人落下というシチュエーションは「逃走迷路」「北北西に進路を取れ」を完全に意識している。
 しかし、ヒッチコックの嫌ったショック演出を多用するアルジェントは不肖のヒッチコッキアンと言わざるを得ない。やはりブライアン・デ・パルマのほうが僕には有難い。

スージー・ケンドール、エヴァ・レンツィ・・・懐かしい。彼女たちの名前を憶えているのはかなりマニアックだろうな。僕はこの頃映画ファンになっているせいで記憶している。

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プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
2015/11/27 10:54
「歓びの毒牙(きば)」
ダリオ・アルジェントの監督デビュー作だったんだ。 ...続きを見る
或る日の出来事
2016/01/24 23:49

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
>段々残忍な描写だけが目立つ監督になってしまった
絵はいいんですよね。話の流れとは別に、感心させられた記憶があって、アルジェントの名を聞くとその場面の絵が浮かんできます。いかにもイタリアンな味わいのある絵。でも、たしかに、映画全体となると、話がいつも「?」ですね。わりとよくある話でも語り方がつたないというか。ふつうに語れないみたいなところがあるかな。
「フェノミナ」はジャッロ版虫愛ずる姫という趣で、個人的には好きでした。ジェニファー・コネリーとドナルド・プレザンスが出てたので好印象でした。
nessko
URL
2015/11/24 12:31
nesskoさん、こんにちは。

画角、カット割り(本作の追跡場面では「疑惑の影」の影響を感じなかなか良かった)、色彩は面白いですが、ストーリーテラーとしては本当にまずいですね。
理屈に合わない点が多すぎます。

>「フェノミナ」
ジェニファー・コネリーが出ていたことしか憶えていません。TVで観たので印象が弱かったのでしょうが。
一応完全版というのをブルーレイ・レコーダーのHDDに収めてあります。再鑑賞するのはいつになるでしょうか(笑)
オカピー
2015/11/24 21:41
絵柄的には良いですけどね。
ストーリーがどこか壊れているんですよね。
ブラウンファンとしては泣くよ。
ねこのひげ
2015/11/29 09:05
ねこのひげさん、こんにちは。

原作からどう変わっているのかなあ。
このお話が気に入ったようで、この後アルジェントは暫くこんなお話を続けたようですね。
理屈に合わないところが多くて、その点ではダメなんですが。
オカピー
2015/11/29 19:55

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