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zoom RSS 映画評「デビルズ・ノット」

<<   作成日時 : 2015/11/23 08:49   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督アトム・エゴヤン
ネタバレあり

アトム・エゴヤンが実際の冤罪事件を取り上げた社会派ドラマである。

1993年アーカンソー州のウェスト・メンフィス(メンフィスはテネシー州)の亜熱帯森林地帯で三人の子供が殺される事件が起き、へヴィメタが好きでオカルトに興味を示していたダミアン(ジェームズ・ハムリック)と友人ジェーソン(セス・メリウェザー)、少し知能の足りないジェシー(クリストファー・ヒギンズ)の三人が逮捕され、弁護士以上に彼らの無罪を信じて動いた調査員ロン(コリン・ファース)の努力も虚しく有罪になる。

主犯のダミアンは判事に期日指定の死刑を言い渡されているが、(恐らく冤罪の疑いが拭えなかった為に)死刑にならず、他の二人と共に2011年に釈放されているとのこと。

娯楽映画的作劇に関する固定観念に引きずられて世評は日米と共に良くないが、実はなかなか上手く作られている。
 一つは冒頭の少年のナレーションによるミスリード。大概の方はこの言葉(ナレーションでないことは後に判明する)が真実であるという前提で暫し観続けるはずだが、実際には少年の裁判で採用されなかった一証言(後に嘘と判明)に過ぎない。肩すかしという意味で効果があると同時に、土地の空気が嘘を作っていく過程を示す重大要素としてよく機能している。
 もう一つは、序盤レストランのトイレにいる怪しい怪我人を調べもせずに警官が立ち去っている場面を描いていること。ドラマ展開において恐らく一番重要な布石で、この初動捜査のミスを誤魔化す為に、官憲は保守的な土地の空気を利用してオカルトへの興味を示す少年を犯人と決めつけ自分の作った物語通りに捜査、裁判を進めていくのである。先般観たばかりの「証人の椅子」(冤罪“徳島ラジオ商事件”を扱った作品)や「終の信託」などと大差なく、国家の体制を問わず、官憲の体質は変わらないものだと恐怖と義憤を禁じ得ない。

とにかく主犯とされた人物が死刑にならずに釈放されたと聞いてホッとしたものの、なかなか上手くこしらえたエゴヤン監督には申し訳ないが、すっきりしないものが残るので☆★を抑えさせて貰いましょう。

被害者少年の一人の母親にリース・ウィザースプーンが扮しているが、太っていて誰だか解らなかった。妊娠中の出演と聞いてなるほどと思いつつもびっくり。但し、平凡な地方の主婦という役柄には良く合っている。

捕えられた少年の名前がダミアンとジェーソンというのも出来すぎだが、僕がエクセルで付けているIMDbの得点の平均点が、本作を加えた時に6.71から6.66になったのも怖い。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
人の悪意とは何なんでしょうね。
なんの利害関係もない人間からの悪意というのは・・・キリスト教徒ではありませんが、666を感じざるを得ないことがありますね。
公明正大でなければならない官憲の悪意にはゾッとさせられます。
ねこのひげ
2015/11/24 02:03
ねこのひげさん、こんにちは。

人間の悪意は、心理学的には、その人物の弱さの反映なのでしょうが、本当に悪魔としか言いようのない人間もいますねえ。

>官憲
今日の新聞に街角で突然警官の越権行為的な取り調べを受けた老人の投稿が載っていましたが、僕も鉄道公安官から冤罪で罵声を浴びせられた経験から、個人的に恨みがあります。
オカピー
2015/11/24 21:21

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