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zoom RSS 映画評「紙の月」

<<   作成日時 : 2015/10/25 09:47   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年日本映画 監督・吉田大八
ネタバレあり

八日目の蝉」の映画版が大評判を呼んだ角田光代の同名小説を吉田大八が映画化したサスペンス系ドラマ(ストレートなサスペンスとは言いにくい)。

バブルがはじけた直後の1994年、契約社員の渉外担当者・宮沢りえが、高額預金者の老人・石橋蓮司の家を訪れた際に孫の池松壮亮と出くわす。
 彼女は、出世コースにいる夫・田辺誠一と心底では上手く行っていない空虚感を埋める為か、自分に関心を持っているらしく尾けて来る彼と懇ろになる。その前に化粧品を買う為に客から預かったうち1万円を借りて支払ったことが彼女にとってはパンドラの箱を開ける行為に匹敵、そうした勢いも手伝って若者と懇ろになっただけでなく、彼が祖父が大学の学資も払ってくれないのに困っているのを見かねて、祖父の定期資金200万円を彼に回してしまう。これは定期の期限である2年の猶予で彼から返してもらう算段だから罪はまだ軽い。
 しかるに、こうした犯罪は得てして加速化していくもので、認知症の老婦人・中原ひとみが何も把握していないことを良いことに300万円を完全横領して、ホテルで豪遊、彼の住処であり二人の逢引きの場所でもあるマンションも買う。
 偽の証書等をこしらえる家まで借りて本格化していくうち、お局的事務系行員・小林聡美が調査して悪徳が発覚、同僚・大島優子との関係により口を塞がれていた次長・近藤芳正も計算高い彼女の寿退社の後、上司に報告する。かくして犯罪が明るみに出た彼女は、窓を粉々に砕いて逃走する。

主要の人物が全て登場するように書くとこんなお話である。【キネマ旬報】批評家で3位、読者で2位選出の話題作であるが、期待ほどにはピンと来ない。
 特に、ヒロインのキリスト教系中学校(若しくは高校)での寄付をめぐるエピソードと四半世紀後くらいの“現在”のエピソードとが深いところで結び合わされていない印象を受ける。
 少女時代の彼女は父親のお金をネコババするという悪を犯してまでも寄付をして相手に喜ばれる幸福に病みつきになったのではないかと想像されたので、“現在”においてツバメになった学生に資金を渡すのもその延長なのかと思いきや、実際には彼女がこれまでの人生から抜け出るきっかけを、デパートの店員に、同僚の大島優子に、ツバメの池松壮亮君に与えられ、一度その壁を超えると正に自由を求める猛者になるお話になっていくわけで、少女時代のエピソードがそれほど上手く機能しているとは思えないのである。

従って、彼女がどうやって国外に逃げたのかは定かではないが、逃避先のタイでかつて寄付をして喜んでもらった少年が成人して元気でいるのを確認して姿を消す幕切れも作者が思っている程にはピントが合っていないのではあるまいか。
 ただ、ヒロインが粛々と犯罪を重ねていくところに却って凄みがあり、演じる宮沢りえはなかなか好調。

ロートルには「ペーパー・ムーン」(1973年)のほうが解りやすい。ツバメの大学生も結局はお金に人生を狂わされる。人間は弱いもの、ということじゃね。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
紙の月
【概略】 銀行で契約社員として働く主婦・梅澤梨花と夫との間には空虚感が漂っていた。ある日、大学生・光太と逢瀬を重ねるようになった彼女は、彼のために顧客の預金に手を付けてしまう。 サスペンス ...続きを見る
いやいやえん
2015/10/25 11:22
紙の月 ★★★
銀行勤めの平凡な主婦が引き起こした大金横領事件のてん末を描いた、『八日目の蝉』の原作などで知られる直木賞作家・角田光代の長編小説を映画化。まっとうな人生を歩んでいた主婦が若い男性との出会いをきっかけに運命を狂わせ、矛盾と葛藤を抱えながら犯罪に手を染めて... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2015/10/25 11:44
14-301「紙の月」(日本)
お金はどこから来て、どこへ行くのか  1994年。エリート会社員の夫と2人暮らしの主婦、梅澤梨花。銀行の契約社員として外回りの仕事を任されるようになった彼女は、顧客の信頼も得て、上司からも高く評価される。しかし家庭では、夫との冷めた夫婦関係に空しさを抱き始めていた。  そんなある日、外で顔見知りの大学生・平林光太から声を掛けられる。彼は、梨花の顧客・平林孝三の孫だった。これをきっかけに、若い光太との逢瀬を重ねるようになり、久々に気持ちが浮き立つ梨花。  ある時、化粧品売り場で持ち合わ... ...続きを見る
CINECHANが観た映画について
2015/10/25 13:36
ぜんぶニセモノ〜『紙の月』
 銀行で外回りの営業担当として働く梅澤梨花(宮沢りえ)は、会社員の夫(田辺 誠一)と二人きりの生活に虚しさを感じていた。彼女はある日、大口顧客である 平林(石橋蓮司)の孫・光太(池松壮亮)と偶然出逢い、関係を持ってしまう。 ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2015/10/26 07:43
『紙の月』
□作品オフィシャルサイト 「紙の月」 □監督 吉田大八□脚本 早船歌江子□原作 角田光代□キャスト 宮沢りえ、池松壮亮、大島優子、田辺誠一、近藤芳正■鑑賞日 11月15日(土)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5)<感想>   原作は... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2015/10/26 08:23
紙の月
紙の月@TOHOシネマズ六本木ヒルズ ...続きを見る
あーうぃ だにぇっと
2015/10/26 08:24
紙の月
祝・宮沢りえ。第38回日本アカデミー賞でも最優秀女優賞、受賞! ...続きを見る
のほほん便り
2015/11/04 15:47

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
まさに!ねこのひげも原作本を本屋で見たとき『ペーパームーン』を思いましたよ。
タイトルは考えた方がいいですね。
映画は宮沢りえさんの演技力に寄るところが多いですね。
『ヨルタモリ』・・・・再開してくれないかな〜
ねこのひげ
2015/10/25 11:38
ねこのひげさん、こんにちは。

多分原作者も「ペーパー・ムーン」を意識して付けたのでしょうね。

>宮沢りえ
若い時は色々沙汰されましたが、21世紀に入ってから女優としてなかなか立派な業績を成していますね。
オカピー
2015/10/25 19:33
こんにちは!

 僕は観に行きました。結構公開時の評判は良かったようですが、正直「う〜む…」という感じで、記事にしていませんでした。

 宮沢りえや大島優子、小林聡美と女優陣を綺麗に撮らない感じはリアルで良いのですが、俳優陣の印象があまりにも薄く、バランスの悪さが気になりました。

ではまた!
用心棒
2015/10/26 14:36
用心棒さん、こんにちは。

女優陣はなかなか良かったと思いますが、男優陣は迫力なかったですかね。
僕は子供時代のエピソードが上手く扱えなかったというか、それにより主題が解りにくくなってしまったのが弱いような気がしました。

何回か観れば感想も変わるかもしれませんが。
オカピー
2015/10/26 21:28

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