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zoom RSS 映画評「夏の終り」

<<   作成日時 : 2015/09/08 10:03   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・熊切和嘉
ネタバレあり

瀬戸内晴美(現・寂聴)が自身の体験をモチーフに1962年に発表した同名小説を熊切和嘉が映画化した文芸作品。少数意見になるようだが、なかなか気に入った。特に、この監督らしく、映像にフィルムっぽい暗さがあるのが良い。

現在進行形のお話に幾つかの過去の時間軸がポンと挿入されている形なので一見解りにくいが、映画を映画言語という観点から観る人にはそんなに解りにくい作品ではない。時間の進行通りに整理するとお話は大体以下の如し。

年下の男性・涼太(綾野剛)に惹かれて夫や娘と別れた染色業の女性・知子(満島ひかり)は、彼が別の女性と結婚した為純文学作家の小杉慎吾(小林薫)と懇ろになってその腐れ縁的な関係が8年も続き現在に至る。そんなところへ離婚した涼太が再び絡んで来た為、もやもやが始まる。

時代がよく解っていない人がいらっしゃるので映像から解るところから始めると、知子が慎吾と初めてデートするところで「カルメン故郷に帰る」の看板が出ているので、二人が知り合うのは1951年か52年である。現在は8年後であるから1959年か60年で、知子が家族を捨てるのは1950年頃と推測できる。
 で、瀬戸内晴美の実生活を調べると彼女は確かに1950年に離婚しているし、小説では知子は38歳という設定であるから1922年生まれの晴美さんその人と考えれば現在は1960年で、計算が合う。

四角関係と言うか二重の三角関係が縺れ合うお話だから、修羅場の出て来るゴタゴタしたお話になるかと思いきや、ヒロインが男性の愛情を素直に受け入れお返しをしないではいられないという純真な性格であることに加え、作家も最初のうちは心中すらしようとするほど諦観したような人物につき、そうしたややこしいことには殆どなっていかない。つまり、最終的にヒロインの(一般的な意味とは違う)純真至極な性格を浮かび上がらせることを主眼にした作品なので、通俗的な恋愛観を以って理解すると、世評のように酷評が目立つことになる。

確かに物凄く面白いというタイプの作品ではないけれど、なかなか興味深い映画になっている。作者が狙った後味は、四角関係に似合わない、ヒロインの自己批判に基づく一種の爽やかさなのであり、そこに面白さがあるのである。

ヒロインが作家と知り合う酒場で流れていたジャズは、ジャンゴ・ラインハルトかなあ。

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『夏の終り』
□作品オフィシャルサイト 「夏の終り」 □監督 熊切和嘉□脚本 宇治田隆史□原作 瀬戸内寂聴□キャスト 満島ひかり、綾野 剛、小林 薫、赤沼夢羅、安部聡子■鑑賞日 8月12日(月)■劇場 TOHOシネマズ川崎■cyazの満足度 ★★(5★満点、☆は0.5)<感想> ... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2015/09/08 10:14
夏の終り
映像の明暗で人生の季節感が漂う 公式サイト。原作は瀬戸内晴美(現・瀬戸内寂聴)の1963年の女流文学賞受賞作の同名小説。つまり50周年記念映画化ということになる。熊切和嘉監督。満 ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2015/09/08 10:15
憐憫〜『夏の終り』
 「好きな人ができました」 夫と幼い娘を捨て、女一人、東京で生きていた相澤 (満島ひかり)は、酒場で出逢った売れない作家・小杉慎吾(小林薫)と半同居生 活を続けていた。妻子と別れる気のない小杉と暮らす家に、かつての恋人・涼太 (綾野剛)が訪れる。 ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2015/09/08 11:35
夏の終り ★★★
作家の瀬戸内寂聴が出家前の瀬戸内晴美時代に発表した小説で、自身の経験をもとに年上の男と年下の男との三角関係に苦悩する女性の姿を描いた「夏の終り」を、鬼才・熊切和嘉監督が映画化。妻子ある年上の作家・慎吾と長年一緒に暮らしている知子。慎吾は妻と知子との間を... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2015/09/08 13:45
夏の終り/満島ひかり
瀬戸内寂聴さんの自伝的小説を『海炭市叙景』の熊切和嘉監督が若手実力派の女優・満島ひかりさんを主演に映画化した作品です。原作は読んだことはありませんが、そのお話の基にな ... ...続きを見る
カノンな日々
2015/09/08 15:30
『夏の終り』
----えっ、これって この前観たばかりだよね。 フォーンも横でこっそり観ていたけど、 そんなに気に入っているようには見えなかったけど…? 「うん。 でもね、あの冒頭から おおっ、と思ったのは確か。 灰色っぽくくすんだあの質感は どう見てもフィルムのもの…」 ----... ...続きを見る
ラムの大通り
2015/09/13 21:15

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
『夏の終わり』というと、森山直太朗さんの歌を思い出してしまいますがね。
彼は半年ほど休養するそうでありますが・・・・
まあ、観ている人間の恋愛の量や質により受け取り方が違う事になるのでありましょう。
無教養な人間にはわからんことも多いわけでありますな。
ねこのひげ
2015/09/13 06:24
ねこのひげさん、こんにちは。

>森山直太朗さん
昨年のNHK[スイッチ・インタビュー」はなかなか印象的でしたなあ。
僕らの若い頃のスターのお母さんはお元気でしょうか。

瀬戸内寂聴氏の小説やその主人公を当たり前の恋愛観で観てはダメですよ。一般的恋愛観から外れている人を主人公にしているのですから。
オカピー
2015/09/13 19:11

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