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zoom RSS 映画評「テロ、ライブ」

<<   作成日時 : 2015/09/28 09:55   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年韓国映画 監督キム・ビョンウ
ネタバレあり

前半は喜劇、後半はシリアス若しくは悲劇という韓国スタイルにうんざりして一作年くらいから韓国大衆映画にはそっぽも向かなくなったのであるが、一向に感興が湧かない韓国サスペンス映画特集7本のうちWOWOWの名物コーナー?【W座からの招待状】で紹介されていた本作だけ観てみる。

工事作業員を名乗る50男が、ラジオ番組に左遷されたばかりの元人気キャスターのハ・ジョンウの政治番組に電話をかけ、恨みつらみの泣き言の末「端に爆弾を仕掛けた」と脅迫、ハが無視すると実際に爆破される。
 人気キャスターの座に復帰したい彼は警察に電話する代わりに犯人との交渉模様を独占放送することを報道局長イ・ギョンヨンと取り決め、ラジオではなくテレビを使ってインタビューを敢行する。犯人の要求はただ一つ、かつて橋工事絡みで起きた死亡事故に関して大統領が謝罪すること、である。

交渉が進むにつれ、報道局長は視聴率オンリー、解決を図る警察は犯人逮捕のみ、長官は保身しか考えない、という権力を握った人々の腐った人間性が浮かび上がってくるという図式。
 かつてのアメリカ映画ならこの部分に焦点を当てて作ったであろうが、昨今の作品まして大げさが好きな韓国映画であるから、ほぼリアルタイムに進むサスペンス醸成だけでなく派手なスペクタクルも用意している。

橋が次々と爆破された為人々が橋の上で孤立、警察が近づいてきたことを知ると犯人はTV局の隣のビルを爆破し、倒壊の結果こちらのビルにも多大な影響が出て来る。放送局に残されたハは、被害者の息子である正体を現した犯人イ・デヴィットと傾いたビルの中で対峙する。

喜劇要素が全くないのは好もしく、日本映画と並んで必要以上に長い映画が目立つ韓国映画にあって98分というコンパクトな作りも評価しておきたい。相当乱暴な設計であるが、退屈する暇はない。乱暴な部分を考えるだけでも楽しいはず。
 例えば、そもそもいくら才能溢れる人物でも単独犯で、官憲や関係者に察知されることなくこれだけ色々な場所に大仕掛け・小仕掛けの爆弾を備え付けるだけの物理的余裕があるとはとても考えにくい。TV局のイヤホンへの仕掛けなど関係者に協力者がいないとまず無理であろう。犯人と格闘したり助けようとしたりするハが犯人の共犯として狙撃される命令が出るのは、警察のでっち上げとしても、或いはTV局に関係者がいたせいかもしれない。

設計に文句はあっても、コンパクトな作りで、犯人とキャスター以外に人情の絡む部分がなく、高い緊張感が寸断されないのはなかなか立派。

さて、この映画で大統領は犯人の要求を一顧だにしないが、韓国は我が国と違い、政府や裁判所が強い世論に耳を傾けるお国柄である。韓国であったなら国民の半分以上が反対している今回の安保法案は絶対通らなかった。それはそれで法治国家として問題なのであるが、この作品でも犯人が多数の国民の同情を上手く引きさえすれば或いは大統領の謝罪を勝ち得たかもしれない。その意味で犯人がテロに走ったのは知恵が足りないが、そんなお話ではヴィジュアル的に地味になって企画が通らないでありましょうな。

ヴィジュアルと言えば、カメラを通した映像ということで少しハードルが下がったことも奏功して、壊れた橋、傾いたビル等VFXが非常に健闘している。
 他方、緊張感を出す為に使っているはずの揺れる手持ちカメラは、口を酸っぱくして言ってきたように、ヨロシクない。カメラマンが撮っているという設定(これもまたつまらない設定であるが)に因らない揺れるカメラは、フレーム意識に拘る大監督も少なくないとは言え、本来カメラの存在を意識させるべきではない劇映画の基本原則を無視しているからである。

「テロ、ライブ」を僕は「テロ・ライブ」の意味として捉えたが、本来の読点の使い方を考えれば「テロやライブ」という意味になる。どっちなんでしょうね? 言語、日本語の原則を無視した邦題も最近は多い。明治時代の中期まで、人名等でこういう表記(例えばアラン、ドロン)があったのも知っているが。

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テロ、ライブ ★★★
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
この邦題はなんじゃろうね。・・・もうすこしなんとか・・・ですね。
中國の連続爆破犯は単独だったようですから、出来ないこともないんでしょうけどね。
なぜ出来たのかの説明があった方がよりリアリティが出たでしょうね。
ねこのひげ
2015/10/04 10:51
ねこのひげさん、こんにちは。

>邦題
僕は余り文句を言わないほうですが、言語的におかしかったり、それにより意味が不明確になる場合は指摘したいと思っています

>中国
まあ、あの国はなかなか本当のことを言わないですし、この作品の場合は相当細かい細工が目立ちますので、疑問が湧きました。
どうやったか説明され、それが納得できるようであれば、ぐっと面白さが増したでしょうね。
オカピー
2015/10/04 14:17

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