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zoom RSS 映画評「グロリア」(1980年版)

<<   作成日時 : 2015/09/25 09:26   >>

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☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1980年アメリカ映画 監督ジョン・カサヴェテス
ネタバレあり

学生時代東京の映画館で観て以来33年ぶりの再鑑賞。十年くらい前のジョン・カサヴェテスの特集でも何故か洩れ(金を払えば別であるが)案外触れるチャンスの少ない作品となっていた。リュック・ベッソンの「レオン」(1994年)に多大な影響を与えているはずの傑作なのに不思議だなあ。その間シャロン・ストーン主演のリメイク(1999年)も作られたものの大分及ばない印象があり、ずっと観たいと思っていたのだ。

ニューヨーク、ギャングの会計士(バック・ヘンリー)がFBIやCIAに情報を流していたことが組織にばれ、家族ともども一味に追われることになり、彼らの襲撃直前に知人の姐御グロリア(ジーナ・ローランズ)に記録を付けた手帳と共に預けられた6歳の息子フィル(ジョン・アダムズ)を除いて全員殺されてしまう。
 ギャングが手帳を取り戻そうと、また掟通りフィルまで殺そうと執拗に追いかけてくるので、グロリアはタクシーを乗り継ぎホテルを転々として逃げ、街中で出くわすと拳銃を放って追い払う。これで死人も出た為彼らは益々躍起になってくる。

一方、グロリアとフィルの相性は余り良くない。グロリアは母親になった経験がなく、フィルは家族恋しさに彼女に親しもうとしないからである。
 この映画は勿論好意的な意見が大多数なのであるが、否定派の意見の中にフィルが生意気というものがある。しかし、生意気であり二人がバッティングするところに本作が面白い所以があるのではあるまいか。この二人は衝突という形で関係の均衡を保っているのである。
 グロリアは母性愛に欠けており、早くとんずらしたい。フィルは家族が恋しいので家に帰りたい。家族が死んだのを知って彼女の親身さが解っていても強がってみたい。グロリアはそれに気づいていても気に入らないと思うことがある。しかし、本音では孤立無援の少年はグロリアと離れたくないし、彼女もそんな彼を捨てる気はない。二人の心理が逃走の間に少しずつ変化し綾が織り成され面白味と人情味を醸成するのである。

少年が見かけ以上に利口であることが判るラストのシークエンスも良い。少年は「3時間半経って戻って来なかったら・・・」と言って昔の恋人であるボスと交渉しに出かけたグロリアの言いつけ通りにピッツバーグへ行く。そして墓地で誰とも知らない墓に語り掛ける。彼は彼女が3時間半後に現れない時は死んでいると知っていたのである。
 これで終わってもこの映画は秀作であった。ところが、何と彼女は生きて彼の前に姿を現す。二人がひしと抱き合うまでスローにしたのは気に入らないが、ハッピーエンドなのが嬉しいではないか。

ここに関しては、二人とも本当は死んでいるという説がある。しかし、死んでいるとしたならグロリアだけであるべきで、そうでないと墓地での素晴らしい場面が台無しになるし、少年が墓地へ行く意味がなくなり非合理的である。昨日の「トレジャーハンター・クミコ」のクミコが死んでいるのがほぼ間違いない幕切れとは映像言語的に異なる作り方をしている。監督のカサヴェテスが言ったとかいう「二人とも死んでいる」という言を信じる必要はなく、大衆的な楽しみ方で観終えれば良いだろう。面白くならない深読みはするに及ばず。

作風としては、他のカサヴェテス作品ほど長回しをせず、クロースアップも少なく、ぐっと親しみやすい。それでもニューヨークを俯瞰する開巻直後のショットからの環境描写は厳しくかつ映画感覚にあふれ、昨今の雇われマダムみたいな監督の撮るそれとは一線を画す。痺れます。

それと、やはり彼の愛妻ジーナ・ローランズのハードボイルドな格好良さ。彼女の存在があって初めて、本作が後世に残る秀作となった言える所以がある、と思っている。

二人の息子ニック・カサヴェテスもなかなかの才人ですぞ。

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グロリア
数年前になりますが 息子にこう言われたことが・・・ ...続きを見る
映画と暮らす、日々に暮らす。
2015/09/25 14:24

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
これはよかったですね。小林信彦がエッセイで取り上げて誉めているのを後年読みましたが、カサヴェテス監督は日本の「子連れ狼」からヒントを得たそうです。アメリカでも観る人は見ているのですね。
「ロード・トゥ・パーディション」も「子連れ狼」からヒントを得ていたそうで、「グロリア」よりもそれが露骨というか、翻案物件みたいでした。
nessko
URL
2015/09/25 11:54
9年前にウォルター・サレスの「セントラル・ステーション」を観た時に、この映画を思い出しましたね。
でも、ラストの展開は忘れてます。

>ここに関しては、二人とも本当は死んでいるという説がある。・・・面白くならない深読みはするに及ばず。

「となりのトトロ」にも同じような説があって、悦に入ってる人々も居られる由。まったく、可哀想な人達ですな。
十瑠
URL
2015/09/25 13:22
nesskoさん、こんにちは。

>「子連れ狼」
なるほど、言われてみれば、そうですね。
男性では当たり前、庇護者が女性というのが利いていたと思います。
痺れましたなあ。

>「ロード・トゥ・パーディション」
これもそうだったのかあ。
世評は高かったですけど、僕はまだ(と言っても一回しか観ていませんが)この作品を捕まえ切れていません。
また観なければならない作品ですね。
オカピー
2015/09/25 21:12
十瑠さん、こんにちは。

>「セントラル・ステーション」
良い作品でした。
代筆業のおばあちゃんと少年が父親を探す話でしたよね。

>「となりのトトロ」
その説は初めてですが、宮崎駿の作品はとかく深読みされますね。
「千と千尋の神隠し」も春をひさぐお話を暗喩していると言って悦に入っているのを目にしたことがありますが、ストレートにこの作品の真価を探る方がよほど深い。
ストレートに語る人は、そうした裏側を読めないのではなく、そんなことに価値を認めていないだけというケースも多いでしょう。
オカピー
2015/09/25 21:20
淀川さんも、洋画劇場の解説で『この後にマフィアが黙っているとは思えませんね。追いかけてきて殺そうとするでしょうね。怖いですね〜』とおっしゃっていた記憶がありますです。

『風の谷のナウシカ』でもナウシカは以前に砂漠で死んでいるんだとか言っている奴がおりましたね。
作者の意図してないことまで言い立てて、自分はお前たちより上なんだと言いたいんでしょうね。
ねこのひげ
2015/09/27 06:38
ねこのひげさん、こんにちは。

>淀川さん
怖いですね〜^^
懐かしいなあ。
もう淀川さんを知らない映画ファンも多いのでしょうね。

>『風の谷のナウシカ』
映像言語的にそう理解できるのでしょうかねえ?
なら、慧眼を褒めても良いかもしれませんが。
オカピー
2015/09/27 20:17

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