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zoom RSS 映画評「トレジャーハンター・クミコ」

<<   作成日時 : 2015/09/24 09:40   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督デーヴィッド・ゼルナー
ネタバレあり

今世紀の初めアメリカで「ファーゴ」(1996年)でスティーヴ・ブシェミが隠した大金を探しにミネソタの寒村(雪の降る寒い村だが、寒い村のことではない。意味の解らない人は辞書で調べてね)ファーゴを訪れて凍死した事件(実は都市伝説で、遺書を残した自殺とのこと)を基に作った異色ドラマ。題名に惑わされてアクション映画と勘違いしないように。

東京の企業でお茶くみを主な仕事としているOLクミコ(菊地凛子)はウサギを相手にするだけの孤独な日々を送り、VHSテープの映画「ファーゴ」を擦り切れるほど見て静止させて大金のありかを特定する。セクハラ気味の上司から細君への贈り物を買う為にビジネス・カードを渡されるとこれ幸いに渡米、冬にも拘わらず寒いミネソタを訪れる。
 只管ファーゴを求め移動する彼女に田舎の人々は親切に手を貸してくれる。警官(本作の共同脚本・監督のデーヴィッド・ゼルナー)は毛布をくるんでいる彼女に服や靴を買い与えようとするが、彼女はどうも彼がファーゴに連れて行ってくれる気がないと気付くと、隙を見て逃げタクシーに乗ってファーゴを目指す。

というお話で、何と彼女は特定した場所で大金を発見するのである・・・という幕切れは、恐らく、雪上で夜を明かし凍死しつつあるクミコが幻想を観ていたのであろう。電車の中に置いてきた友だちのウサギがそばにいるし、余りに簡単にバッグが発見されるというのがその理由である。

東京にいる時の狂気を胚胎させている孤独、ミネソタで顕在化してくるその狂気を見ると、無性に悲しくなってくる。
 ゆっくりズームする箇所の多い画面と“揺らさない”ハンディ・カメラの使用がその悲しさを上手く浮かび上がらせなかなか捨てがたいムードを醸成しているが、何故か日本では公開に至っていない。

演出的に面白いと思ったのは、とかく反応の薄いヒロインの直後の反応を省いて結論としての行動を示すというカットやシーンの組み合わせを多用していること。例えば久しぶりに出くわした同級生(河北麻友子)?に声を掛けられて“他日、会いましょう”と言われ、結局後日会う。ミネソタで自動車に乗った老婦人(シャーリー・ヴェナード)に“どうしたの”と訊かれた後結局車に乗っている、といった部分である。
 こうした処理がゆっくりとしたズームの多用などと相まって孤独と悲しみの沈殿した冷え冷えとしたムードが強く醸成されているものと思う。

本作にはもう一つ面白さがあり、一見そう見えないがフィクション(映画とは限らないが、多分に映画について)を作るということを語るメタフィクションになっている。「ファーゴ」という実話を謳ったインチキ実話ものをベースに、本作は実話と一時信じられた都市伝説を基に監督が適当にこしらえ、監督自ら扮する警察官が「映画は、ドキュメンタリーでない限り、嘘なんだよ」と言う。実話もどき若しくは実話を謳ったフィクションを多重構造的に素材にした作り手がそう言う自己言及的な面白さである。

この映画に東加奈子という女優が出ている。昨日の「円卓 こっこ、ひと夏のイマジン」の原作者が西加奈子なので、偶然だが面白い。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
日本人の俳優がけっこうハリウッド映画に受け入れられるようになったのはうれしいですね。
先日地上波で『ゴジラ』をやっておりましたが、やはり劇場のデカい画面の迫力には勝てませんね。
ゴジラは劇場で観よう(*^▽^*)
細部をじっくり観察できたのはよかったですが。
ねこのひげ
2015/09/27 06:47
ねこのひげさん、こんにちは。

>日本人の俳優
菊地凛子は、日本よりアメリカで人気ですね。
日本でも使われると良いのだけれど。

>劇場のデカい画面
そりゃあねえ^^
その代わり画面に迷わされないので、細かい点などに気付くことも多いかもですね。
僕の場合は強がりなんですけれど(笑)
オカピー
2015/09/27 20:13

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