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zoom RSS 映画評「少女は自転車にのって」

<<   作成日時 : 2015/09/13 09:47   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2012年サウジアラビア=アメリカ=ドイツ=オランダ=アラブ首長国連邦=ヨルダン合作映画 監督ハイファ・アル=マンスール
ネタバレあり

十何年か前に観た「あの娘と自転車に乗って」は珍しいキルギスの作品だった。似たタイトルの本作はこれまた珍しいサウジアラビアの作品で、しかもメガフォンを取ったハイファ・アル=マンスールは同国初の女性監督であるという。それ自体が本作のテーマですらある。

原題となっているワジダという名前を持つヒロインたる少女(ワアド・ムハンマド)は、仲の良い少年アブダラ(アルダラマン・アル・ゴーハニ)と競い合いたいので、自転車を所望するが、母親(リーム・アブドラ)は賛成してくれない。そこで学校で小銭稼ぎに精を出すものの、イスラム教故の厳しい制限のために順調に行かない。しかし、何故かその稼ぎでイスラム教について色々と教えてくれるソフトを買い、学校でもイスラム教のクラブに入って一番の成績を収める。やがて母親から経典の歌い方まで習った彼女は学校におけるコンテストに出場し、優勝する。

この作品は時系列をいじっていないが、彼女の心理を一部省くことで観客に「なるほど」と思わせる上手い作り方をしている。即ち、このコンテストで優勝すると自転車の代金以上の賞金が貰えるのである。自転車に乗るのを諦めた風でもないのに、今まで反教条的だった彼女が突然イスラム勉学に精を出す謎が解った時に非常にすっきりする効果がある。
 この辺りの作劇は大いに気に入ったが、描写自体は至って素朴で、芸術的に圧倒するような実力はまだ感じられない。

話はこれで終わらず、イスラム教に忠実な校長先生は当然男性並みに自転車を乗ることには反対、勝手に「パレスチナへ寄付」と諸金の使い道を決めてしまう。ところが、娘しかいないことが不満の父親が第二夫人を迎えそちらで暮らすことになると母親が翻意して彼女に自転車をプレゼントするのである。

とにかく、イスラム教は教条的であり、タリバンなど原理主義者となれば「女性は勉強するべきである」「女性は働くべきである」と言っただけで暗殺を仕掛ける旧弊さを示す。
 活発なワジダはそれとは強く意識しないまでも反イスラム的である。母親も教条に従ううちに夫を失うに至り、言わば反骨精神を表して娘に自転車を買うのである。

特に強くイスラム教の問題を提示するというスタイルではないが、我々からして見ると異常と言うしかないことの連続で、男尊女卑も甚だしく、腹が立ってくる。
 しかし、日本人もそう偉いことは言えない。僅か80年前「二十四の瞳」の女先生も自転車に乗っていた為に村民から「生意気」と陰口を叩かれたではないか。日本人も戦争やオリンピックを経て次第に進歩してきたわけである。
 問題は、イスラム教(教徒)の教条的頑迷さ。確かに日本人や教条的でない日本の宗教にはそういう頑迷さは希薄だ。しかし、同じように教条的であったキリスト教圏でできたのだから、イスラム教圏でもできるだろう。

女性を守るという口実で様々な教条や道徳で女性を束縛してきたのが世界の歴史。早く女性を解放した地域が栄えているような気がするのは錯覚ではないだろう。話は少し違うが、アジア大会がつまらないのは、女性に関して事実上の東アジア大会になってしまうからだ。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
たぶん、女性が映画を作るのも命がけなんでしょうね。
イスラム国の連中は、教義を自分たちに都合のいいように曲解してますからね。
日本も言えませんけどね。
女性議員は少ないし、子供がいたら就職は難しいし・・・・などなど・・・
ねこのひげ
2015/09/13 12:52
ねこのひげさん、こんにちは。

女性の問題とは関係ないですが、集会が禁じられているので映画館自体がないのだそうですね。女性どころか、長編映画の監督がいなかったとか。
まあTVドラマはあるから、監督なる存在なるものはいるのは確かで、多分そこにも女性が監督することなどないのでしょうね。
合作とは言え、よくサウジアラビアでよくできました。
オカピー
2015/09/13 20:18

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