プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「あの日、欲望の大地で」

<<   作成日時 : 2015/09/10 11:15   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 3 / コメント 2

☆☆☆(6点/10点満点中)
2008年アメリカ=アルゼンチン合作映画 監督ギジェルモ・アリアガ
ネタバレあり

「アモーレス・ペレス」「21グラム」(2003年)で複数の時間軸の物語を並行して描く手法が興趣を呼んだ脚本家ギジェルモ・アリアガが満を持して(?)メガフォンを取った監督デビュー作だが、7年前の作品なのでやや“証文の出し遅れ”のような印象あり。先日同じ系列の作家に属するポール・ハギスの「サード・パーソン」を観たが、このタイプの作品は大分衰微してきたし、この作品も日本で公開された2009年に観ていればともかく、今見ると凝っている割に平凡な印象を受けるのである。

アメリカ北東部メイン州、高級レストランでマネジャーをしている美人シルヴィア(シャーリーズ・セロン)は頻々と相手を変えて一晩のお楽しみをしている。ある時声を掛けてきたメキシコ人カルロスにも誘いを掛けるが、彼の目的は12歳の少女マリア(テッサ・イア)を彼女に会わせることにある。生まれてすぐに彼女が捨ててきた娘というのである。その真相は? 
 北部での寒色系とは対照的な暖色系の色彩で捉えられるニューメキシコでは、子だくさんの主婦ジーナ(キム・ベーシンガー)とメキシコ系男性ニックとトレーラーでの逢引きを楽しんでいる。それに気づいた彼女の長女マリアーナ(ジェニファー・ローレンス)はそれをやめさせようとトレーラーに火を放つが、予想外に爆発してしまって二人が死んでしまう。
 相手男性の長男サンティアゴ(JD・パルド)は葬儀をこっそり見ていたマリアーナに興味を覚え、やがて懇ろになると「ロミオとジュリエット」のような二家族間の確執を振り払って、手に手を取って道行となっていく。

さてこの二つのお話はどう関係しているのか、というのを紐解くのがアリアガの狙いで、勘が良い人なら三分の一くらい進んだところで関係性が解るかもしれないが、僕に関しては、シルヴィアの本名がマリアーナであり、ジーナの娘の名前がマリアーナと判る三分の二辺りでやっと解ったというお粗末。

そう、三つの時、四人の女性の物語という説明はトリックであって実際には三つの時、三人の女性の物語であり、母親ジーナと娘マリアはシルヴィアことマリアーナのキャラクター造形を補完する脇役に過ぎないわけであるから、より厳密に言えば、ただ一人の女性マリアーナが家を出て再び夫のもとに帰るまでの物語なのである。
 この手の作劇を僕は「ドラマのミステリー化」と言って、布石を積み重ねて深みと奥行きで勝負する一時系列型に比べて、楽に感銘を生み出すことができると多少批判的な立場を取って来た。
 実際、このお話を「エデンの東」(1955年)の主人公キャルのように母親の秘密を知ってからのマリアーナの行動を時間に従って描いて同じ感銘を生み出そうと思ったら、イーリア・カザンとウィリアム・ワイラーが二人で共同監督でもしない限り無理ではないか。

一方、その物語の狭間で、マリアーナが出来たばかりの赤子マリアと夫サンティアゴを捨てて奔放な性生活を送るようになった心理の背景を不倫に走らざるを得なかった母親の行動に見出しあれやこれや考える余地があり、作者の狙いとは違うであろうが、寧ろ描かれない彼女の心理を想像させるのが本作の本当の楽しみになっている感がある。

結論としては、冒頭で述べたように我々の嗜好が変わった以上に、出世作「アモーレス・ペレス」ほど迫力がない印象が強く、同作ほどの評価はできない。

TVのバラエティ番組に批判が多いのと同様、洋画の邦題についても批判が多く、発案者が矢面に立たされる。しかし、問題は寧ろ需要側にあるのではないだろうか。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(3件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
あの日、欲望の大地で
公式サイト。原題:The Burning Plain。 ギジェルモ・アリアガ監督、シャーリーズ・セロン、キム・ベイシンガー、ジェニファー・ローレンス、ジョン・コーベット、ヨアキム・デ・アルメイ ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2015/09/10 14:55
あの日、欲望の大地で
 うちのオトーチャンとオカーチャンは ...続きを見る
映画と暮らす、日々に暮らす。
2015/09/10 16:25
「あの日、欲望の大地で」
この女優が出ているなら、きっと映画館に観に行く。 そんななかの1人が、シャーリーズ・セロン嬢である。 ...続きを見る
或る日の出来事
2015/09/11 08:21

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
まあ、どう描こうと批判する人は批判しますがね。
批判するのが目的ですからね。
ネットの記事のコメント欄などは見るに堪えないぐらい酷いであります。
言の不法投棄状態でありますよ。
ねこのひげ
2015/09/13 06:12
ねこのひげさん、こんにちは。

>言の不法投棄状態
よーく解りますよ。
特に現在は弱い者いじめが流行っていて、徹底的にやりますよね。
言葉遣いも悪くて、当事者でなくても腹が立ってきます。
五輪エンブレムの佐野氏や漏洩問題で首になった慶大教授の著書が、中身の充実度と関係ないところで、批判されているそうですね。
これは絶対変です。ネットの匿名性が普段は良い子ぶって覆われている日本人の本音を解放させている面があるとは思いますが、個人攻撃には人権をいたく無視している嘘も混じっているので、こうした悪どいコメントには当局等が発言者を特定する必要があるのではないかと思うほどです。
オカピー
2015/09/13 19:28

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「あの日、欲望の大地で」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる