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zoom RSS 映画評「美女と野獣」(2014年版)

<<   作成日時 : 2015/08/29 11:25   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年フランス=ドイツ合作映画 監督クリストフ・ガンス
ネタバレあり

フランスの伝説を基にジャンヌ=マリー・ルプランス・ド・ボーモン(ボーモン夫人)が書いた童話を基に本格映画化したのがジャン・コクトーの「美女と野獣」(1946年)であり、それをベースにディズニーがアニメ化したという経緯があるのに、Yahoo!映画に集う若者たちは、本作をディズニー映画と比較して何だかんだと文句を言っている。比較対照して文句を言うなら原作が第一であり、抜群に幽玄であったコクトー版が第二であろう。フランス発の原作童話やコクトー版(映画版はこれをレファレンスとすべし)の存在すら知らずに批判しているとしたら、「勉強不足も甚だしい」と言わなければならない。
 「白雪姫」などディズニー・アニメ版が原作童話のイメージを駆逐した例は数多く、その意味ではディズニーはけしからん。少なくとも本作についてはフランスがオリジナルであるのだから、ディズニー・アニメを根拠に原作国の民であるフランス人を非難するのは理屈に合わない。

クリストフ・ガンスによる本作は、今までになかった野獣が野獣になった理由(いずれの映画版でも明らかなように元は王子)を詳細に示し、並行してヒロインのベル(レア・セドゥ)が破産した商人の父(アンドレ・デュソリエ)の人身御供の形でバラに囲まれた城に参上するまでの経緯がこれまでになく詳しく描かれる。これが眼目なのだから、批判派のようにここがつまらないと言ってはお話にならない。
 ファンタジーの要素に世知辛い現実社会を反映した辺り昨今のフランス映画らしいわけであるが、この二つが本格的に絡み合う中盤に傑作と見なしうる幻想的な描写があって注目したものの、正体見え見えの語り手場面のインサートにより良い気分が中断したり、現実を反映したとは言っても妙に即物的な描写があって幻滅させられ、結局小傑作にまでも届かない出来に留まった。

童話を読む語り手(母親)の正体がベルであることは見え見えと言いながら、結構嬉しい幕切れになっている。その本を発行したのが改心した兄弟と仄めかし、父親(旦那のほうがふさわしい)が花屋をやっていると判明する。他人の話(童話)を語っているように見せながら、実は自叙伝であった、というほのめかし的種明かしが嬉しいのだ。

ところで、感情移入できない人達ばかりという意見も見当違いの可能性大で、そもそも現実社会の人々は好感の持てる人物ばかりではない。確かにヒロインの家族に文句のつけようのないという品行方正な人物はいないが、彼らに文句を言う人々も何らかの欲望は持っているであろう。その彼若しくは彼女もその点に関し他人から陰で非難されているはずである。
 生活感情は映画鑑賞において重要な要素とは言うものの、キャラクターへの共感度を作品の評価と全くイコールにするのはおかしい。それは、彼らが大好きな“リアリティー”から却って乖離する態度である。映画の出来栄えを測る術を知らないから、そうした観点で述べるしかないのだろうが。

野獣になった王子を演じたヴァンサン・カッセルは実年齢から言ってもミス・キャストで、気分が出ない。

ミッキー・マウスを守る為に著作権保護期間が(作者の死後)70年に延びてしまった。著作権は作者の生活を守る為に必要だが、文化的視点では長すぎる保護期間は百害あって一利なしと思う。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
原作もコクトーも知らないでしょうね。
昔、『シンデレラ』『白雪姫』の原作を読んでビックリしたことがあります。
まあ、ミッキーマウスを他の場所で観たらあきれるでしょうけどね。
ねこのひげ
2015/08/30 11:46
ねこのひげさん、こんにちは。

>『白雪姫』
は王子のキスで目覚めはしないのですよね。
キスでの目覚めはディズニーお得意で、最近はそれを逆手に使い始めた。商売がお上手なこと(笑)

>ミッキーハウス
キャラクターに関しては著作権ではなく、商標登録か何かでやれば延長する必要はないでしょうにねえ。
長くなって利益があるのは数パーセントの著作物と言われ、その数パーセントの為に残る90数パーセントの著作物が死に体になり、結果として文化的だけでなく経済的にもマイナスと言われていますね。特に個人的著作物はデメリットが多いようです。
今年谷崎潤一郎と江戸川乱歩が死後50年を迎え、来年1月1日に著作権消滅するはずだったのですが、TPPで20年延長ですか。谷崎を読む人が(著作権消滅の場合より)減る・・・
オカピー
2015/08/30 22:17

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