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zoom RSS 映画評「エレニの帰郷」

<<   作成日時 : 2015/07/24 09:06   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年ギリシャ=ドイツ=カナダ=ロシア合作映画 監督テオ・アンゲロプロス
ネタバレあり

エレニの旅」に続く20世紀三部作第二作である本作の後、第三作を製作中にテオ・アンゲロプロスは交通事故死してしまった。惜しいかな。少なくとも三部作を完成させて欲しかった。

チネチッタで映画を撮影を再開させた映画監督A(ウィレム・デフォー)は、娘エレニ(ティツィアーナ・フィフネル)の失踪に頭を悩ませている一方、1999年末同じ名前の母エレニ(イレーネ・ジャコブ)と父親スピロス(ミシェル・ピッコリ)をベルリンに迎える。
 老エレニの故郷は一応ギリシャになると思うのだが、ベルリンが故郷のように扱われているのが、前作を観ている僕には却って解りにくい。多分登場人物の名前が前作と同じでも全くの同一人物と思う必要はないのだろう。さもないとスピロスは1999年時点で100歳を超える老人になってしまう。エレニにしても前作よりは数年若そうだ。

母のエレニはギリシャから送られたソ連の町で、政変で引き裂かれたスピロスと再会するが、結局ロシア共産党により逮捕され、単独でシベリアに送られ、ユダヤ人のヤコブ(ブルーノ・ガンツ)と親しくなる。そこで生んだのがスピロスとの息子Aである。

かくして彼女とスピロスとヤコブは離散を繰り返すのであるが、その間にスターリンの死、ベトナム戦争、ウォーターゲート事件、ベルリンの壁崩壊といった時代を画する出来事が発生するのである。
 時代に翻弄されて流浪する庶民を描きながら(若しくは描くことで)ギリシャや世界の動きを同時に捉えるのがアンゲロプロスのライフテーマであり、今回は1950年代半ばからおよそ半世紀の世界史を俯瞰するのが眼目のようである。

映画はエレニの流浪と越境を終始描くが、圧巻なのは前作の終盤でも観られたワン・カットにおける時空の自在な移動。一番解りやすい例は、エレニとヤコブと一緒にベルリンのバーに入ったスピロスがいつの間にか四半世紀前のカナダのバーでエレニと再会する場面に移ろっているという箇所で、スピロスの背中を利用して映画的興奮を大いにもたらしてくれる。アンゲロプロスの長回しはやはり魅力的と言いたい。

形としてははっきりしていないが、主人公が映画監督なので、母親の流浪の人生を描いている映画が本作の中で進行する入れ子構造と理解して良いのだと思う。例によって解らない箇所は幾つもあるが、アンゲロプロスに対しては、そうしたところに拘らずフィルムの流れるのに身を委ねるのが最良の鑑賞方法と決め込んでいる。

画面全体としては前作に劣るが、それでもこれだけの迫力ある画面を構成できる監督は他になかなか見当たらない。合掌。

AはアンゲロプロスのA。A for Angelopoulos.

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
これほどの画面を作れる監督は曹操出てきそうもないですね。
ねこのひげ
2015/07/26 07:57
ねこのひげさん、こんにちは。

日本に初お目見えした「旅芸人の記録」には吃驚しました。
娯楽とか芸術とか変な区別をしない映画ファンには一番良い時代だった気がしますね。
オカピー
2015/07/26 19:15

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