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zoom RSS 映画評「罪の手ざわり」

<<   作成日時 : 2015/05/24 09:54   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年中国=日本=フランス合作映画 監督ジャ・ジャンクー
ネタバレあり

中国語の原題「天注定」の意味はよく解らない(多分、人の運命は決まっているもの、といったところだろう)が、邦題は"A touch of sin"というインターナショナル・タイトルを和訳したもの。これは意図的かどうか定かではないものの、誤訳で、正確には「ちょっとした罪」である。しかるに、本作に出て来る罪はちょっとした罪どころか大犯罪・・・なのだが、我々に彼等を断罪することはできるのだろうか、といった内容になっている。
 監督は「長江哀歌」(2007年)で著しい進境を見せたと感じさせたジャ・ジャンクーで、テーマはこの旧作と非常に似通う。4話構成のオムニバス。

炭鉱夫のウー・チアンは村の共有財産であった炭鉱を同級生の実業家と村長が私物化して富豪になっている現実に憤りを隠せず、遂に関係者に猟銃を向ける。
 続いては、出稼ぎと称して出掛けた先で強盗を働いて仕送りを繰り返す青年ワン・バオチャンのお話。

本作は面白い構成で、断裁的な殺害場面が極めて印象的なこの二つの挿話のうち、第二部の強盗青年はプロローグに現れ、三人の追剥ぎを射殺している。ここでも感情を交えず、ひたすら渇いたタッチで処理して強烈な印象を残す。この変則的な構成は第三部に出て来るサウナの受付嬢チャオ・タオがエピローグに再登場するという形でまた使われる。文学における韻律を思わせ、実に興味深い。

若くないチャオ・タオは遠距離恋愛の不倫相手と腐れ縁のような関係を続けて失意の状態にある。或る時、サウナの不良客に絡まれ、不倫相手がテロ規制により持っていけず預かった果物ナイフで切り付けて殺す。
 最後は、怪我をさせた同僚が復帰するまで賃金を穴埋めに使うと会社から宣言された若い工員ルオ・ランシャンがそれではやっていけないので別の町(東莞=ドングァン)のナイトクラブのボーイになり、そこの接客嬢リー・モンと親しくなるが、彼女には三歳の子供がいると知って転職、預金もないのに母親から送金を請われてにっちもさっちも行かなくなって飛び降り自殺する。

中国=フランス合作映画「北京の自転車」(2000年)は早くも中国における経済格差を描いて僕を瞠目させた。最近知ったことに中国には地方と都会とを分ける二つの戸籍があり、これがあの作品に見られた格差の元凶であったようである。
 本作はそれにも関連するが、地方経済を中心とした格差、差別、社会の不条理が人々を追い込んでいく様子を積み重ねて迫力を生み出し、ジャ・ジャンクーとしては長回しといったアート趣味に走らずに珍しいほど明快なのが良い。

後半の二話は通俗的な内容に過ぎる印象があるものの、断ち切るような描写の扱いは高く評価したい。お話は全て実話ベースであり、中国の格差や差別の問題は深刻なようである。

東莞には行ったことあるです。知っているところが出て来るかと思って観ていたが・・・。共産主義(実状は国家資本主義だろう)国にはいないはずの物乞いにねだられ、香港の案内人に「構うな」と言われたのを思い出す。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
昔、小学生の時、中国にはハエが一匹もいないと教師に教えられてホントか?と疑っておりましたが、現実を知るといかに人が洗脳されやすいかがよくわかりました。
ねこのひげ
2015/05/24 17:02
ねこのひげさん、こんにちは。

>ハエが一匹もいない
そんな馬鹿な^^;
雀の間違いじゃないの(大飢饉を生んだ失政への皮肉です)。
オカピー
2015/05/24 19:12

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