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zoom RSS 映画評「父の秘密」

<<   作成日時 : 2015/05/21 10:03   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年メキシコ=フランス合作映画 監督ミシェル・フランコ
ネタバレあり

メキシコの若手監督ミシェル・フランコの長編第二作。この国からも有望な人材が出て来ている。

妻を交通事故で失った料理人ロベルト(エルナン・メンドーサ)が高校生の娘アレハンドラ(テッサ・イア)と共にメキシコ市に引っ越してくる。
 アレハンドラは当初クラスメートと和気藹々と過ごすが、パーティーの酔いに任せてクラスの人気者ホセ(コンサーロ・ベガ・シスト)と事に及び、それを彼が携帯で撮る。彼が携帯を置き忘れた(本人証言であり、嘘の可能性大)ことから映像が流出し、クラスメートから凄まじいいじめに遭うことになる。しかし、落ち込んでいる父親にそのことが告げられない為に事は思わぬ方向へと進んでいく。

最後のシークエンスまでは「どこが『父の秘密』なんじゃい」と思っていたが、最後に至り或る程度納得した。腹蔵なく言えば、父親はホセを拉致し有無を言わせず海に投げ込んでしまうのである。まるで韓国映画の「恨」に通ずる展開ながら、タッチはぐっと即実的・断裁的で、感情が見えないだけに或る意味ずっと厳しい。

この犯罪が父の秘密なのか。そうではあるまい。そこに至るまでに何度か描かれてきたように、この父親は妻の死により怒りの感情が抑えられなくなっていた。娘が知っているのは落ち込む父であって、怒りの感情を爆発させる彼ではない。怒りの感情の爆発を抑えられないこと、これが父の秘密である。この事実と娘の秘密とが結合した時にもの凄い化学反応を起こし、大爆発を起こす。こんなお話であろう。

1990年代アメリカの取引先社長とよくメールで世間話をしたが、ある時彼が"ijime"という単語を使ったのに驚いた。日本の学校における虐めは概して特殊で、アメリカのメディアで紹介されていたのだろう。しかし、本作を見るとメキシコの虐めも凄まじい。「キャリー」などに見るアメリカの虐めも大差なく、ひとの国のことは言えない。僕は、虐め・差別を他と相対化することで自己の優越感をでっち上げる下劣極まりない行為と思っている。人間の弱さの発露である。この作品の父親も弱い人間である。
 アレハンドラのみが少し可能性を感じさせる人間であるが、海を見つめる彼女はこの後どういう行動を取るのだろうか? 何とも言えないものの、映画言語上の解釈としては、海によりこの父と娘は物理的距離を飛び越えて結びつくのである。

メキシコの警察は麻薬が絡んでいるのに、未成年であることを理由に捜査もせず、却って被害者の父親が調べられる。日本における教師と生徒の関係もそうだが、児童に対する過剰な人権意識が生んだ歪みだ。

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父の秘密 ★★★
メキシコの俊英マイケル・フランコが監督と脚本を担当し、第65回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にてグランプリとなった珠玉の物語。新たに引っ越した場所で淡々と日々を送っていたものの、突如娘が行方が不明になり、ある決断を下す父親の姿を描く。『あの日、欲望の大... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2015/05/22 20:55

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
未成年だからといって保護しすぎれば、このような結果になるわけで・・・
最近の日本国内でも、よくわからん軽い理由で友人を殺した少年少女がおりましたね。
未熟なゆえに罪の意識がないのも・・・
ねこのひげ
2015/05/24 16:50
ねこのひげさん、こんにちは。

>よくわからん軽い理由
金銭の貸借でしたね。

>未成年
刑事事件の扱いには慎重さを要すところはあるのは言うまでもないですが、日本の学校の子供の暴走は何とかしないといけないと思いますね。
現状では、先生は何もできない。
オカピー
2015/05/24 18:20

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