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zoom RSS 映画評「さよなら、アドルフ」

<<   作成日時 : 2015/05/02 10:13   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年オーストラリア=ドイツ=イギリス合作映画 監督ケイト・ショートランド
ネタバレあり

ホロコーストを直接のテーマとしていない反ナチス映画である。

ヒトラーが自死した後ドイツ高官の父親を逮捕され、母親も恐らく逮捕された14歳の少女ローレ(サスキア・ローゼンダール)が、妹リーゼル(ネーレ・トレプス)、双子の弟、乳飲み子の弟を引き連れて、数百キロ離れたハンブルクに住む祖母の家に向うが、ご存じのように当時ドイツはアメリカ、ソ連、フランス、イギリスにより分轄統治され、アーリア系ドイツ人の移動は厳しく監視されている。
 そこへユダヤ人らしいトーマス(カイ=ペーター・マリーナ)が加わり、皮肉にもユダヤ人が味方についた為に無事に祖母の家に帰りつく。

で、めでたしめでたし・・・というお話ではない。

オーストラリア(オーストリアでないことに注意)出身というケイト・ショートランド監督の進行ぶりには一人合点のところがないでもないのだが、何を見せたかったのかは一目瞭然。この厳しい旅の間に少女は、ナチス・ドイツのやってきたひどいことを知らされ、尊敬していた父親の言っていたことが全て嘘であったことにショックを受ける。長年映画を見続けてきた方なら、作者がこの少女に敗戦直後に真実を知らされ大いに動揺したドイツ国民全体を象徴させていることがお解りになると思う。

それ以上に、敗戦によりドイツ高官一家とユダヤ人の立場が逆になり、ユダヤ人の身分証がピンチを回避することになる展開が皮肉で面白いが、ここで注目されるのがトーマスの存在。
 本作の中では副次的な問題ながら、状況を総合すると、観客の誰しもユダヤ人と思って見ている彼がユダヤ人ではない可能性があるのである。ユダヤ人証は盗んだものである。彼はボート貸しを殺す。見た目はユダヤ人風であるし、腕にも収容所にいたことを示す番号もあるが、本物とは限らない。
 典型的なユダヤ人と典型的なドイツ人(アーリア人)は明らかに見た目が違うものの、区別できない人が多いのも事実で、純然たるアーリア系フランス人が同姓同名のユダヤ人ではないことを証明しようと奔走したのに悲劇に終わるアラン・ドロン主演の「パリの灯は遠く」(1976年)という象徴的な作品も作られた。

日本は右傾化以上に全体主義化している。少なくともネットでは全体主義が跋扈し、政権と違う考えを尽く“反日”と決めつけている。今人々に「空気を読む」必要があるのも、その流れと無関係ではあるまい。

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さよなら、アドルフ ★★★
第2次世界大戦の終戦直後、ナチス親衛隊高官の父と母が去ったあと、14歳の少女が小さい妹弟と共に祖母に会うために困難な旅をする姿を描くヒューマンドラマ。旅の過程で、ナチスの行ったユダヤ人虐殺の真実に動揺し、葛藤する加害者の子どもたちの繊細な心の動きが映し出... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2015/05/02 18:19

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
すべてをナチスのせいにして逃げているドイツ人というのもいかがなものかと思うね。
すべてを敗戦国である日本に押し付けてくる近隣諸国にもウンザリしているけどね。
いつまでも行っているから右翼化が高まると言えるしね。
ねこのひげ
2015/05/03 07:53
ねこのひげさん、こんにちは。

>ドイツ人
(ドイツ人になり代わり)どうもすみません。
日本はナチスのような便利に使いやすい悪のシンボルがなくて苦しんでいますね。
しかし、ドイツもユダヤ人を排斥しなければ戦争に勝ったのに、と思います。歴史のダイナミズムが働いたのでしょう。その為に日本に原爆が落とされたのは悲劇ですけど。

>近隣諸国
19世紀からの悪夢ですね。
先の戦争は歴史のダイナミズムという観点から避けられなかったと思う次第ですが、今度戦争があるとしたら少し違う気がします。
日本はどうなるのでしょうかねえ。
オカピー
2015/05/03 18:03

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