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zoom RSS 映画評「評決」

<<   作成日時 : 2015/04/30 09:04   >>

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☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1982年アメリカ映画 監督シドニー・ルメット
ネタバレあり

封切(死語ですかね)時に映画館で観たシドニー・ルメットの秀作裁判ドラマ。
 かつて【法廷映画ベスト・セレクション20+α】という記事で、娯楽派の2位に選出させて貰った。その時社会派部門の1位にしたのがルメット自身の旧作「十二人の怒れる男」(1957年)。僕が病気で倒れる前に書いた懐かしい記事である。

ボストン、若い頃陪審員買収事件に巻き込まれて落ちぶれ、今は死亡欄あさりで仕事を得るしかない中年弁護士ポール・ニューマンが、長いこと保留にされている医療過誤事件の原告側弁護を引き受ける決心をし、仲間のジャック・ウォーデンに協力を依頼する。
 金目当てでスタートしたのが、今や植物人間となった被害者をポラロイドで撮っているうちに若い頃の正義感が目覚め、病院が提示した21万ドルの示談金も拒否する。それには病院医師の証言を決め手として勝訴になる確信があったからだが、被告側の腕利き弁護士ジェームズ・メースンの工作で重要証言者が姿を消し、原告である被害者の姉(若しくは妹、英語なのではっきりしない)夫婦も裁判より示談金が欲しかったと責めて来る。
 苦境に陥った彼は別の証人探しに奔走、やっと見つけた黒人医師の証言も被害者の体質により意味を成さない。それでも正義感に燃えだした彼は諦めず、ニューヨークに住む病院の元受付嬢リンジー・クローズを探し当て、結局彼女の証言が陪審員の心証に影響を与えて勝訴する。

法廷ではなく、その準備段階の攻防が法廷ドラマ的に大変面白い。
 裁判では勝訴の為に何をやってもいいと勝利主義が横行する現実を主人公の若い頃のエピソードから被告側の作戦まで作劇として貫き、それを正義漢として復活したニューマンが果敢にその現実に挑戦していくという社会派ドラマの構図に上手く生かして手応え十分である。

また、ドラマの大きなポイントとなる美女シャーロット・ランプリングの存在が探偵小説的に面白い。
 彼女は弁護士の元夫人という立場(実際は本人が訳あり弁護士)で離婚した経験のある弁護士と同病相憐れむ感じで懇意になるが、実はメースンに情報を渡す敵スパイである。しかし、彼女もいつしか彼に傾倒していき、真相を告白する前に正体がばれてしまう。
 その事実を知った彼が勝訴後に彼女からの電話を取ろうとしない幕切れが実に大人の味である。個人としては彼女を許しても良いが、医療過誤という問題を前にして正義に立ち返った弁護士としては許しがたい。そんな複雑な心境を感じさせるニューマンの最後の様子が良い。

ルメットの演出は開巻直後のうらぶれた弁護士の描写から誠に好調、アルコールとピンボールで気を紛らわす主人公の惨めな姿を寒さが身に沁みるような冬のボストンに鮮明に浮かび上がらせ、ニューマンから好演を引きだした。敵役のメースン、仲間のウォーデンもさすがの重量感。

アメリカ裁判映画の伝統に反し、この裁判長は徹底して悪でしたなあ。裁判長の意見を無視した(が故に)、裁判の結果が実に爽快だった。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こういう迷いのない作品が少なくなりました。
作りても苦労はしているんだろうけどね。
ねこのひげ
2015/05/03 07:57
ねこのひげさん、こんにちは。

素材も手法も殆ど出尽くした感のある時代ですから、大変なんでしょうけど、中途半端に新しいものを作ろうとして却って失敗しているような気がします。
オカピー
2015/05/03 17:33

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