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zoom RSS 映画評「アウトレイジ ビヨンド」

<<   作成日時 : 2015/04/25 09:50   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年日本映画 監督・北野武
ネタバレあり

CMによる中断はあるものの、やっと完全版を観ることができた。暴力満載だった北野武監督によるヤクザ映画の続編である。監督が同じなのに印象がかなり違うのが興味深い。

前作では重要でないと思いストーリーには触れなかったので、今回は少し書いておく。

前作の終盤で若頭・三浦友和が会長・北村総一郎を殺して会長に収まった関東の暴力団“山王会”では、彼の台頭に伴い下剋上が行われ、若いインテリ加瀬亮が若頭としてかつての上役を従えている。これが面白くない元上役たち(中尾彬、名高達雄、光石研)は関西の巨大暴力団“花菱会”の力を借りて、クーデターを企む。間を取り持つのは、出世の為なら何でもやる丸暴(まるぼう)担当の刑事・小日向文世で、彼は出所したばかりの“山王会”傘下の大友組元組長ビートたけしにも接近して“山王会”の勢力を弱めることに奔走する。かくして、この悪徳刑事の目論見通り、血で血を洗う抗争が始まる。

前作は頗るドライに義理と人情の世界から乖離した現在的ヤクザを描いていたが、今回は暴力の減少と引き換えに義理と人情が復活気味で、そうしたクラシックな要素を前作に通ずるドライとも言える権謀術数や抗争劇に交えている為、21世紀版「仁義なき戦い」とも言いたくなる印象を覚える。それが奏功してビートたけしを親分と慕うかつての仇・中野英雄との場面では、敵対する者同士が対峙する場面より寧ろ高い緊張感が生まれる。結局彼の思いは本物だったのだが・・・。

観ながら僕は「忠臣蔵」と比較していた。それは義理と人情の要素が幾分感じられたからで、日本人が任侠映画を好んだ背景を考えつつ、「現在のヤクザはいつ上役を裏切るか知れない」と、主君を裏切ることなど殆ど考えられない封建時代の武士との違いに思いを馳せていたのだ。

こうした内容故にタッチがいつもほど冷徹ではなく、感覚の良い職業監督の手になる作品のように感じないでもない。それでも、加瀬亮がビートたけしにバッティング・センターで殺される場面のアイデアとムードは、凡百の監督では到底無理と思わせるものがある。

復古主義右派の考えに大きな抵抗感を覚える僕も「仮名手本忠臣蔵」にじーんとする。DNAは争えない。

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アウトレイジ ビヨンド
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----この映画、 前作で死んだはずの大友(ビートたけし)が また出ていることで話題になったよね。 どうやって生き返らせたんだろう? 「ほんと、そう思うよね。 何ヶ月か前、 どこかで 『男たちの挽歌II』方式と書かれたものを読んだこともあり、 てっきり双子の弟が出て... ...続きを見る
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
さすが!という作品でありますね。

『武士の家計簿』を書いた磯田道史さんの『殿様の通信簿』という本に浅野内匠頭と大石内蔵助の項がありますが、実際はどちらも碌な人間ではなかったようであります。
この本はちょっいと面白いでありますよ(^o^)/
ねこのひげ
2015/04/26 05:45
ねこのひげさん、こんにちは。

>『殿様の通信簿』
文字通りの通信簿なわけですね?
最近、日本人はこんなに素晴らしい(素晴らしかった)というTV番組や本がもてはやされてい(てムズムズす)るので、却ってこういう本はすがすがしいです。
僕はやはりひねくれ者かな?
オカピー
2015/04/26 20:22
オカピーさん おはようさん^^
夜勤帰りの朝帰りでコメントします ボクは劇場で友人と見にいきました。

>観ながら僕は「忠臣蔵」と比較していた。
>「現在のヤクザはいつ上役を裏切るか知れない」と、主君を裏切ることなど殆ど考えられない封建時代の武士との違い
 ほほう〜 オカピーさんもなかなか分析の着眼点はいいですね。
 上役が子分を単なる道具とか いわゆる"とかげのしっぽ"程度にしか考えてないと いつでも子分に裏切られる形になっちゃいますよね。 前作でも”下剋上”と銘打ってましたが 今回も如実に表したとみていいでしょう。

>ビートたけしを親分と慕うかつての仇・中野英雄との場面では、敵対する者同士が対峙する場面より寧ろ高い緊張感が生まれる。
 そのおっしゃってる緊張感は おたがいわだかまりが なくなってたので ほんのちょっぴりの"美しさ"を感じたからだったのでは^^

>加瀬亮がビートたけしにバッティング・センターで殺される場面
 加瀬は元はたけしの子分だったのが 現在の山王会に取り入り たけしの組を裏切ります。 それと同じく 山王会の三浦も 前会長の北村を射殺して トップに上りました。

 が、その"裏切り"行為が山王会を弱体化したのも事実なんですね〜
 関西の組織のトップを演じた 神山繁さんのセリフ・・・
「一度 人を 裏切った奴は 何回でも裏切りよる」

 このセリフを三浦に言い放ったことで 三浦は 以前に前の会長を裏切って射殺した経緯があるから 当然 自分の組員を信用できなくなる・・・もう そこから 坂道を転げるように 三浦体制の山王会は崩れていきましたもんね。


zebra
2015/07/30 08:36
zebraさん、こんにちは。

>朝帰り
大変ですねえ。
当方は結構若いうちにリタイア、そのうち病気してしまって、もう復帰する気もありゃしません。

なかなか面白かったデス、この作品。
第一作ほどドライではなくなりましたが、下剋上の可能性が減ったわけではない。そのアンビバレントな印象が興味を増しましたね。

日本の暗黒街に大きな影を落としているらしい朝鮮系ヤクザがはっきりと描かれたのも勉強になりました。この辺はさすが北野武、といったところでしょうか。

>三浦
裏切ってのし上がった癖に最後は呑気すぎましたね、このおじさん。実際そうやって死んでいったヤクザも多いのでしょうね。
オカピー
2015/07/30 21:19

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