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zoom RSS 映画評「とらわれて夏」

<<   作成日時 : 2015/04/23 09:36   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督ジェイスン・ライトマン
ネタバレあり

ジェイスン・ライトマンはご贔屓の監督になりつつある。このドラマも、秀作とまでは言いにくいが、かなりクラシックな文芸映画らしい味のある作品である。

7年生(中学一年生)のヘンリー(ガトリン・グリフィス)が、父親との離婚をもって滅多に外出しなくなった母親アデル(ケイト・ウィンスレット)と珍しく買い物に出た時、脱獄囚のフランク(ジョシュ・ブローリン)に脅迫され、自宅まで連れ帰る。
 しかし、彼はその言の通り、二人に危害を加える様子を見せず、それどころか父親代わりの力仕事をしてくれる。危険を感じなくなったヘンリーは次第に彼に親しみを覚え、ピザの作り方やタイヤ交換の仕方や野球を教えてもらう。アデルも頼りがいのある彼を愛するようになり、二人の秘事に少年も思春期らしい煩悶をする。
 かくしてカナダへ逃げようとする直前、母子が銀行で預金を下ろしている間に、フランクが近所の主婦に発見され万事休す、誘拐罪で逮捕される。その後も二人のフランクへの思慕は続くが、なかなか連絡が取れないうちに長い年月が経ち、やがて大学を卒業したヘンリーがピザを紹介した雑誌の記事にフランクが目を留めたことにより、出所後孤独なアデルと結ばれることになる。

13歳の時に教わったことが尽く少年と母親の運命を好転させていく、というお話はファンタジーに過ぎる気がしないでもないが、まずは非常に文学的な、匂いが漂ってくるような品の良さが僕を酔わせる。
 近年世界的に、特にアメリカ映画はどぎつさを求める傾向があり、たまに文芸的な香りのする作品に出会ってもエキセントリックな印象があるなどして不満が残ることが多い中、落ち着いた進行ぶり、安定した画面のうちに映画らしい映画という手応えを感じるのである。

ドラマ部分を離れると、序盤のサスペンスは「必死の逃亡者」(1955年)のヴァリエーション。そのサスペンスが途中から180度違った立場から味わえることになるのが誠に面白い。
 つまり、最初は「コレクター」(1965年)的に犯罪の存在に他の人が気付いてくれないかと期待するのだが、二人が男に親しみ始めると途端に近所の主婦が障害児の息子を連れてくる場面などでは何とか気づかずに出て行って欲しいとヒヤヒヤするわけである。などと、説明するまでもないでしょうね。

かくして純ロマンス的な要素と純サスペンスの要素(量的には少ないが質は高い)がうまく絡み合う形で進行し、ミーハー以上純文学以下の間で楽しませてくれる。ケイト・ウィンスレットのおどおどした主婦がよろし。

1970年代初めの映画に近いかな?

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とらわれて夏/ケイト・ウィンスレット
「ライ麦畑の迷路を抜けて」などで知られる作家ジョイス・メイナードの原作を基に『マイレージ、マイライフ』のジェイソン・ライトマン監督がケイト・ウィンスレットを主演にシン ... ...続きを見る
カノンな日々
2015/04/23 09:43
とらわれて夏 ★★★.5
「ライ麦畑の迷路を抜けて」などで知られる作家、ジョイス・メイナードの原作を実写化したラブストーリー。ひょんなことから逃亡犯の男性をかくまうことになった女性が、彼と惹(ひ)かれ合った果てに重大な決断をする5日間を見つめていく。監督は『ヤング≒アダルト』など... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2015/04/23 18:29
とらわれて夏
原題 LABOR DAY 製作年度 2013年 上映時間 111分 原作 ジョイス・メイナード 監督 ジェイソン・ライトマン 出演 ケイト・ウィンスレット/ジョシュ・ブローリン/ガトリン・グリフィス/トビー・マグワイア/トム・リピンスキー/ジェームズ・ヴァン・ダー・ビーク/ディラン... ...続きを見る
to Heart
2015/04/23 20:04
『とらわれて夏』
□作品オフィシャルサイト 「とらわれて夏」□監督・脚本 ジェイソン・ライトマン□原作 ジョイス・メイナード□キャスト ケイト・ウィンスレット、ジョシュ・ブローリン、ガトリン・グリフィス、       トビー・マグワイア、トム・リピンスキー ■鑑賞日 5月... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2015/04/23 20:57
映画:とらわれて夏 Labor Day  登場人物たちに、まるで永遠のように記憶される 5日間。
既に2度もアカデミー賞にノミニーの、ジェイソン・ライトマン監督の最新作。 (「JUNO/ジュノ」「マイレージ、マイライフ」) ...続きを見る
日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF ...
2015/04/26 01:16
『とらわれて夏』
(原題:LABOR DAY) ...続きを見る
ラムの大通り
2015/05/18 10:25

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
「まだ、お・ん・な なんです」
K・ウィンスレットはこういうお芝居お上手。
単なるアバンチュールものに括れないいい感じの
空気が流れている展開で、私は特にあのラストが
好きでした。
女心を描ける男性監督は要チェックですね。
プロフェッサーの高評価も嬉しい限り。

vivajiji
2015/04/23 15:46
vivajijiさん、こんにちは。

>K・ウィンスレット
「愛を読むひと」など、こういうお話のヒロインを本当に上手く演じますね。
肉感的なのに精神性を強く感じさせる、今まで余りいなかったタイプの女優さんかも。
もう「タイタニック」の主演女優であったことも忘れるほど。

>女心を描ける男性監督
フランソワ・オゾンもそういうタイプでしょうけど、香りはこちらのほうが好きですかね。

>高評価
このところ良い映画が続いていて嬉しいデス。
大ヒット映画と言われるものに大したものがないのは問題ですが(苦笑)
オカピー
2015/04/23 21:37
ハリウッド映画らしくない映画で良かったであります。
実際は、こうはいかないでしょうけど、映画ですから夢がある方がよろしいですね。
ホッとさせますです。
ねこのひげ
2015/04/26 05:54
ねこのひげさん、こんにちは。

>ハリウッド映画らしくない
1970年初めと言ってもアメリカ映画ではなく、英国映画みたいな感じ。
こちらのほうが少しマイルドですが。
オカピー
2015/04/26 20:08

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