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zoom RSS 映画評「七年目の浮気」

<<   作成日時 : 2015/04/17 08:49   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1955年アメリカ映画 監督ビリー・ワイルダー
ネタバレあり

高校生の時映画友達のK君と「有名な作品なんだけど、思ったほど楽しめなかった」と異口同音に話をした記憶があるビリー・ワイルダーの艶笑喜劇である。高校生では解るべくもない大人のお話であるから、恐らく三度目である今回はその時よりは楽しめたかもしれない。が、やはりワイルダーの作品の中では余り好みにあらず。

タイルみたいな四角い板が集まってスタッフや出演者が紹介されるソウル・バス作成の楽しいタイトルに続いて、ワイルダーの常套手段であるナレーションにより本編スタート。
 そのナレーションは、マンハッタン島の語源となったマンハッタン族の習慣の紹介に始まり、400年後マンハッタンのサラリーマン族が妻子を避暑地に追いやった後男性としての欲望のままにおもむく様子を繋げる。男の普遍的行動と言っているわけである。
 主人公のトム・イーウェル氏は結婚7年目の恐妻家、出版社に勤めながら、子供と避暑に出た細君イヴリン・キーズの命令に従って禁酒禁煙を実行し、女性ともお近づきにならないように懸命に努力している。しかし、出版所の方針により出版物の表紙は読者の欲望を駆り立てる為に過激な装飾が施され、そうでなくても敏感な氏の想像力を刺激する。

こうして画面には女色に関する想像上の武勇談が展開されるのだが、武勇談と言っても彼は恐妻家であるから全て断るのである。まずは巧みな出だしで、シネマスコープの横長画面を生かすべくパンを使って想像の場面に入っていく辺りに映画的な面白さがある。
 この一連のシークエンスの中に「地上より永遠に」のパロディーがあり、これを筆頭に楽屋落ち的な場面や台詞が少なくない。これもワイルダーの趣味で、中でも秀逸なのは、この直後に知り合うアパート階上に住むモデル役のマリリン・モンローに役名がなく、台詞の中で「マリリン・モンローかも」を出してくるところ。

さて、出版社が発行しようとしている精神科医の本によれば、男性は結婚7年目にムズムズが起こるのだと言う。正に実感するイーウェル氏である。

彼らの住むアパートの構造が面白さに貢献している。二階建ての建物で、元々は一階と二階は階段で繋がっていたのだが、一家が借りるに際して封鎖してしまったという曰くがある。ここにエアコンが絡んでくる。イーウェル氏の一階にはエアコンがあるが、二階にはない。暑くて寝苦しいのでモデルのマリリンとしては彼の部屋を利用したい。反面、恐妻家の彼にしてみれば欲望に逆らってもそれを許すわけには参らぬ。
 しかるに、映画は彼のジレンマには余り拘らず、彼女が階段の上を封鎖していた板を外すことでこのジレンマは呆気なく終わって、ここから妻への恐怖心から妻の浮気を心配することへとお話の方向が変わっていく。

結局階上娘とのアヴァンチュールのチャンスを棒に振って避暑地の妻女のもとに駆け付ける彼の姿に、小市民ならではの微笑ましさと愚劣さの入り混じった可笑し味が滲み出て、ジ・エンド。

ジョージ・アクセルロッド作の舞台版で同じ役を演じたというイーウェル氏が非常に恐妻家の感じを出した好演。マリリン・モンローも、天衣無縫の可愛らしさを発揮した後避暑地に急ぐ彼に靴を投げる最後のシーンでほんの僅かに感じさせる切なさが素敵である。しかし、「アパートの鍵貸します」(1960年)以降の喜劇群ほどわが心の琴線に触れない。

この邦題の“浮気”は、原題のItch(ムズムズ)に対応する言葉であるから、“不倫”とは代替できません。

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七年目の浮気
(1955/ビリー・ワイルダー 監督/トム・イーウェル、マリリン・モンロー、イヴリン・キース、ソニー・タフツ、ロバート・ストラウス/104分) ...続きを見る
テアトル十瑠
2015/04/18 20:43
「七年目の浮気」(14回目)
20日にNHK-BSで放送したものを録画鑑賞。 ...続きを見る
或る日の出来事
2015/04/25 17:03

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
立川談志はビリー・ワイルダーが大好きだったそうですが、この「七年目の浮気」をヴィデオで観返した時、ああこれは落語でやれそうだなと思いました。イーウェルになってずっと語ればよさそうですから。映画自体は話の進み方がとろとろしたかんじで見るのがちょっとしんどかったような、マリリン・モンローを見るのを目的にして見終えたかな。
マリリン・モンローにマリリン・モンローのパロディというか、マリリン・モンロー解題みたいな面がある映画なんでしょうね。公開当時、既にモンローはセックス・シンボルとしてすごく人気があったということでしょうか。たしかにかわいいです。最後、主人公を見送る時のさびしそうな顔が印象に残っている。
nessko
URL
2015/04/18 10:59
nesskoさん、こんにちは。

>落語
ワイルダー喜劇では、ひとり核となる主人公がいて、場面ごとにその相手となる人物をひとり配するという単純な構成が多いですから、落語になりそうですね。

>マリリン・モンロー
ワイルダー喜劇は楽屋落ちが多いですが、MMにその本人もどきをやらせたというのが面白かった。雑誌に掲載された写真のくだりは例のヌード・ポスターのパロディですよね。髪の毛も長かったと言っているし。

>主人公を見送る時のさびしそうな顔
そうです、大変良かった。
あの表情の意味は、女性はただ男に迫られれば良いわけではない、ということなのでしょうかねえ。これもMMの人生に重なるような気がしますね。
オカピー
2015/04/18 16:51
地下鉄の通風口からの風でマリリン・モンローのスカートがまくれ上がるというので有名な映画でありますね。
いまではスカートがまくれ上がるくらいではお客を呼べませんけど、このころはそれだけで評判になったようで、良き時代と言えば良き時代でありました。
ねこのひげ
2015/04/19 07:00
ねこのひげさん、こんにちは。

日本人なら偶然そうなるハプニングとして作るでしょうが、この作品のMMは自分からそうなるようにしているんですよね。それが面白い。
この作品を画像入りで紹介する時大概出て来る場面でしたね。
オカピー
2015/04/19 20:46

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