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zoom RSS 映画評「8月の家族たち」

<<   作成日時 : 2015/04/13 09:21   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督ジョン・ウェルズ
ネタバレあり

トレイシー・レッツの戯曲を彼女自身が映画用に脚色、ジョン・ウェルズが映像に移したドラマ。

詩人サム・シェパードが、ガンで薬漬けの妻メリル・ストリープとの孤独な生活が我慢ならず、インディアンの家政婦を雇った後失踪、湖で死体となって発見される。
 この騒動で長女ジュリア・ロバーツが夫ユワン・マグレガーと娘アビゲイル・ブレスリンを、独身の次女ジュリアンヌ・ニコルスン、三女ジュリエット・ルイスが婚約者を伴って実家に戻る。メリルの妹マーゴ・マーティンデイルと夫クリス・クーパーとその息子ベネディクト・カンバーバッチもやって来る。
 ところが、葬儀の後というのにしめやかなムードにはならず、薬の影響で精神が破綻しかけているメリルは娘たちに毒舌を吐き、険悪な雰囲気になる。
 それでも互いに歩み寄る姿勢を取ろうとするうちに、ジュリアが夫と離婚の危機を迎えていることや、ジュリアナが従弟カンバーバッチと恋仲であることが皆の知るところとなる。叔母マーゴはこの交際に大反対で、その理由は二人が異母姉弟であるからということが判って来る。
 かくして混乱に混乱を来して集まった者たちは皆去り、残されたメリルは家政婦ミスティ・アッパムにすがりつくしかない。

お話の構図としてはアメリカ版「三人姉妹」の「インテリア」(1978年)に似ているが、ユージーン・オニールの自伝的戯曲「夜への長い旅路」を彷彿とするところもある。レッツ女史はオニールのこの超有名なピューリッツァー賞受賞作を多分に意識して書いたと思う。

ガン患者を主人公にしてこういう展開を仕立てる発想は、ジメジメがお好きであり、実生活でも病気や死を目の当たりにすればしんみりとしがちな日本人には無理であろう。内心の苦悩がヒロインをしてこういう意地悪な形で娘たちを追い込ませていくドラマを作る発想に行き当たるまい。

成り行きで家族たちは隠していた小さな秘密、大きな秘密を吐露、それが悪い方向へと転がっていき、家族が結局は(他人より)他人であり、一人一人は孤独であることを浮き彫りにする。その意味では、ヒロインの、元来は他人である不仲であった今は亡き夫への追慕、人種差別的な発言を向けていた家政婦への依存が示すように、孤独地獄に陥った時の“他人”の存在意義を大きく感じさせる内容になっている。
 しかるに、そこには希望も潜んでいる。血が共感を妨げるのであれば、それにより“他人”としか思えなくなった時家族が共感を見出すこともあり得るということである。幕切れでジュリア・ロバーツが見せるどことなく吹っ切れた表情を見て、僕はそんな禅問答みたいなことを考えていた。

いずれにしても、表面的な鑑賞後感は人が生きるということの孤独に尽きる。とりあえずそうした印象で良いのだろう。

画面的には家の内部における閉鎖的な場面が殆どであるが、だからこそ映画の半ばや最後にほんの少しだけ出て来る荒野の開放感をより強く感じさせることになる。これがジュリアの表情にも生かされる。

しかし、何と言っても、メリル、ジュリア以下錚々たる演技陣の演技合戦が見ものと言うべし。

三姉妹を演じる女優たちのファースト・ネームにご注目あれ。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
8月の家族たち〜インディアン嘘つかない
公式サイト。原題:August:Osage County。トレイシー・レッツ原作、ジョン・ウェルズ監督。メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、ユアン・マクレガー、クリス・クーパー、アビゲイル ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2015/04/13 09:29
『8月の家族たち』
□作品オフィシャルサイト 「8月の家族たち」□監督 ジョン・ウェルズ□脚本・原作 トレイシー・レッツ□キャスト メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、ユアン・マクレガー、      クリス・クーパー、 アビゲイル・ブレスリン、ベネディクト・カンバーバ... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2015/04/13 09:50
8月の家族たち ★★★
メリル・ストリープが病を患うも個性的な母親を演じ、一筋縄ではいかない家族の姿がつづられたヒューマンドラマ。 ピュリツァー賞とトニー賞を受賞した傑作舞台を基に、一家の主の失踪(しっそう)を機に数年ぶりに再会した家族が本音を明かし、秘密がつまびらかになる様... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2015/04/13 19:04
兄弟(姉妹)は他人の始まり〜『8月の家族たち』
 AUGUST: OSAGE COUNTY ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2015/04/14 12:55
「8月の家族たち」
すっごい濃かったねー、人間関係のドロドロ。 ...続きを見る
或る日の出来事
2015/07/08 23:37

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
名優たちの演技力を楽しむ映画でありましょう。
がそれにしても、激しいことです。
ねこのひげ
2015/04/19 07:18
ねこのひげさん、こんにちは。

日本では余り考えられない設定のドラマですが、実際の日本はドラマの世界以上に変わってきている気のする昨今ですから、どうでしょうか。
オカピー
2015/04/19 20:36
たったいまDVDを観終わりました。
機能不全家族の罵倒合戦でしたね。

ボクのピックアップ場面は 三女ジュリエットのやさぐれ恋人ダーモットとジュリアの反抗的な娘役のアビっちのマリファナといかがわしい行為ですね。

家政婦さんがスコップで殴り掛かってたので未遂だったけど・・・

「あの子にも責任があるんじゃないの!」と罵って長女とケンカ別れな形でフロリダに帰っていったけど 
長女ジュリアがアビっちにビンタして怒ってたのと同じように やさぐれ恋人に責任がないわけじゃなのは 奔放な三女でもわかってたろうから

劇中では描かれてないけど、帰ってから三女は恋人には「この大バカ!」と罵声を飛ばすなり ビンタするなりで 激しく叱責してた気がします。

>長女ジュリアと母メリル
 この二人がひどかったけど 親父さんが自殺する兆しを予測してたにもかかわらず 貸金庫の遺産が大事だから自殺を止めなかった・・とラストでありました(゜□゜;)

これは・・・どんなに温厚でもブチ切れる気がしました。この時点で長女以外はすでに帰ってましたが みんながいるときにこの事実を知ってたら、

母メリルに対して みんな「ふざけるな!ばかやろう!オヤジを何だと思ってるんだ!」と全員が烈火になってたのは想像に難くない。
zebra
2015/05/05 20:50
"砂上の楼閣"
そんな家族でした。よく今まで持ちこたえたと感心したくらいな話でした。
>混乱に混乱を来して集まった者たちは皆去り
>家政婦ミスティ・アッパムにすがりつくしかない。
 劇中 母親はネイティブアメリカンの一族を嫌いと言ってましたのに その家政婦はネイティブの血筋。そんな彼女が母に残された最後の砦とは・・・皮肉を利かせてます。


zebra
2015/05/05 21:15
zebraさん、こんにちは。

>奔放な三女でも
同意であります。多分そんなやりとりがあったでしょうね。
想像させる方が、こういうケースでは面白い。

>母メリル
唯一弁護できるところがあるとしたら、認知症が始まっているところでしょうね。
もっとまともな時にはどんな夫婦関係であったのでしょうか。
余り上手くいっていなかったのは、夫君の言動から少し伺えますが。

>砂上の楼閣
仮面夫婦ならぬ、仮面家族でした^^;
日本でもこんな家族がよく描かれた時代がありましたよ。
と言いますか、実際、今の日本はどうなんでしょうかねえ。

>ネイティブアメリカン
夫君は死に備えて雇ったのでしょうね。
わざと白人以外を選んだのだとしたら夫君も大したものです。
しかし、この女性、スケールの大きな人で、メリルの悪口に対して顔色一つ変えない。僕はこんな人を尊敬しますよ。
オカピー
2015/05/06 20:48

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