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zoom RSS 映画評「家族の灯り」

<<   作成日時 : 2015/03/06 11:05   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年ポルトガル=フランス合作映画 監督マノエル・ド・オリヴェイラ
ネタバレあり

マノエル・ド・オリヴェイラは恐らく映画製作最高齢記録を永久に保持するであろう。本作撮影時103歳なり。
 祖国ポルトガルの劇作家ラウル・ブランダンの戯曲を映画化した本作は、中盤以外は長回しの固定ショットだけなので舞台そのものといった感が強い。しかし、それより問題は内容の晦渋さである。欧州の近代戯曲の典型を見るような序盤から象徴的と感じさせる台詞が連続し、文言をそのまま理解してよいものか判断するのも躊躇するくらい。

港町の一軒家、会計士の老人マイケル・ロンズデールの妻クラウディア・カルディナーレは何年も前に出ていった息子リカルド・トレパが帰って来るのを待っている。母親が息子の帰還により人生が好転する希望を持っているのに対し、父親と息子の嫁レオノール・シルヴェイラは彼の非行を知っている。突然帰って来た息子は待っていた家族に向って死人のようだと呪詛の言葉を吐き、父親が会計士として保管していた大金を盗んで再び出奔する。母親は嘆き、父親は息子の代わりに盗難の犯人を名乗る。

というアウトラインは難なく理解できても、現状では、オリヴェイラ老体が何を仰りたいのかとんと見当がつかぬ。主人公の老人が単純な計算を繰り返し続けるなど、全体の雰囲気が20世紀前半の欧州の戯曲によく観られる象徴性を感じさせ、画面に出て来る具体的な事件から人生の何かを暗示している印象があるのだが、それが何であるか説明できない。或いはもう少し単純に、ランプの光があるだけの薄暗い家の中が示す精神的生活と、息子が出ていった外が示す冒険性や憧れを把握できれば良いのだろうか? そのまま理解してよいのならもっと楽であるが、面白味には欠けると言わなければならなくなる。

近くの老女ジャンヌ・モローなどが集まって来る中盤だけは人数が多くなる為に長回しはなくなるが、3人以内の人数の時は非常に長い固定ショットである。殆ど静止画と見まごうばかりであるから、ランプが照らす室内のほの暗い画面は必然的に絵画のように見える。特に印象的なのは、僅かに中央を外れたランプの左に父母、右に中腰の嫁を配したショットで、完全な三角構図に従っていて、レンブラントの絵画を見るように頗る美しい。画面的には、映画的と言えるかどうかはともかく、なかなか充実している。

わが邦の新藤兼人は恐らく最高齢日本人監督として永久にその名を刻まれるでしょうが、オリヴェイラ氏におかれては、さらにその上を行って100歳を過ぎて映画が撮れるとは、恐れ入りました。

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家族の灯り〜航海と後悔
公式サイト。ポルトガル=フランス。原題:O Gebo e a Sombra、英題:Gebo and the Shadow。ラウル・ブランダン原作、マノエル・ド・オリヴェイラ監督。マイケル・ロンズデール、クラウディア・ ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2015/03/06 14:13
家族の灯り ★★★
100歳を超えてなお現役の映画監督である、ポルトガルの巨匠マノエル・デ・オリヴェイラ監督が手掛けた家族の物語。ある日、こつぜんと姿を消した息子の帰りを待ちわびる老夫婦と義理の娘の質素な日常を淡々と描く。『楽園からの旅人』などのマイケル・ロンズデール、『ふ... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2015/03/06 19:26
家族の灯り 〜 絵画のような舞台劇 (2014/4/30)
100歳を超えてまだ現役の映画監督であり続ける巨匠マノエル・ド・オリヴェイラが、同じくポルトガルの作家ラウル・ブランダンの戯曲を基に映画化を手がけた家族の物語。 小さな港町を舞台に、失踪した息子の帰りを待ちわびる父と母、その妻の姿が描かれます。 ...続きを見る
黄昏のシネマハウス
2015/09/30 11:10

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
最近はやりの、安っぽいレジェンドとは雲泥の差・・
まさに、生ける伝説、いや、怪物でしょうかね(笑)この人は・・。

決して作風が好きというわけではないのですが・・ぼくの中では、「アブラハム渓谷」がベストですね。
浅野佑都
2015/03/06 11:36
浅野佑都さん、こんにちは。

>怪物
100歳ですと、ぼけないだけでも立派と言えそうですが、映画を演出できるとは、驚異。

>作風
僕も余りすきではないかなあ。
あんがいカチッとしていない。ベルイマンのような締まったタッチが好きなので。
内容的には結構「いじわる」か?

>「アブラハム渓谷」
右に同じです。秀作と思います。
これは先年所有のビデオをブルーレイディスクに移しました。
長いからそう簡単に見直す気にはならんのですけどね。
オカピー
2015/03/06 21:42
100歳で作るのと、30歳で作るのでは時間の流れが違う気がします。
あのゆったりとした描き方は、103歳では普通の流れなんでしょう。
しかし、103歳で映画を作れるのはすごいですね。
ねこのひげ
2015/03/08 07:52
ねこのひげさん、こんにちは。

>時間の流れ
そうかもしれません。
お話のテンポがゆっくりなのは結構ですが、本当に止まっているように見えるショットが多くて、眠くなりました(笑)。
黒澤明監督も遺作ではマンマンデな作風でしたよね。
オカピー
2015/03/08 20:42

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