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zoom RSS 映画評「家路」

<<   作成日時 : 2015/03/20 09:22   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年日本映画 監督・久保田直
ネタバレあり

2011年3月11日の東日本大地震により福島第一原発が事故を起こし、周囲の住民が各地に避難しているのは皆さまもご存じのとおり。その現実を基にしたフィクションである。

農家の内野聖陽は父の後妻である母・田中裕子と、妻・安藤サクラと娘と仮設住宅に住んでいるが、その暮らしによるストレスにより母親がボケを発症する。折りしも、父親・石橋蓮司が生きていた頃、水田の水を抜く事件の責任を取る形で故郷を後にした当時高校生の弟・松山ケンイチが、法律を無視して、官憲が封鎖している地域にある実家にこっそり戻って野良作業に汗を流している、と聞く。再会を果たした弟は母親を引き取っていく。

原発事故後避難を余儀なくされた住民の苦しい胸の内をこれでもかと描出した、リアリズムとファンタジーが一体化したドラマである。田中裕子の母親はボケて原発事故のことが頭にない。松山ケンイチ扮する若者は、二度と戻らないと誓った故郷に、人がいなくなった後わざわざ戻って来る。その屈折した心境を説明するのは難しいが、人が居なくては土地が余りにも可哀想だという思いなのかもしれない。

いずれにしても、法律で入るのを禁じられた地域の水田で無心に苗を植える二人の姿は現実にはない、ファンタジーである。故郷に帰りたい人々の思いを投影したファンタジーである。ファンタジーの世界では官憲も桃源郷にいるような二人に野暮な節介はやかない。

一方、現実世界に戻りそうした居住制限が緩やかになっていると聞くと、これまた、素直に喜べない複雑な心境になる。政府がおざなりに後始末をしようとしているのではないかと疑ってしまう。
 人間のコントロールを超える原子力は本当に厄介である。原発を止めるにも続けるにも金と危険性が伴う。簡単に「やめた」と言えない政府の立場も理解できないではない。しかし、原子力村繁栄の為の再稼働だけは勘弁してもらいたい。

映画に戻れば、ドキュメンタリー上がりの久保田直のドラマ映画デビュー作ということで、その前身が示す通り素直で誇張のない展開ぶりは好感が持てる。
 仮設住宅が立ち並ぶ中で母親はボケ症状を示す。しかるに、作者は、このエピソードを通して全く同じ建物が立ち並ぶ不気味さと無機質な【人間の住む場所ではない】という印象の醸成を狙ったのではあるまいか? 

松山ケンイチ扮する若者は高校時代に「自然を守るには人類がいなくなれば良い」という意見を述べたらしい。僕は中学の時「ほら太陽がやって来る」という、ビートルズの"Here Comes the Sun"のタイトルをパクった、人類の驕りが地球を滅亡に導く主旨の詩を書いた。高校の時にも類する作文をものした。十代の頃彼と同じように著しく厭世的だったのを思い出す。

地方を舞台にした映画を評価する段で方言の精度が問題になることがあるが、とんでもない勘違いであることがこの映画を観ると解ると思う。方言の精度が高いと何を言っているのか解らないのである。本作も2割くらい聞き取れなかった。だから、僕は昔からナンチャッテ方言がベストと言っているのだが。

僕の基本はノンポリだが、2011年以降どうもそのポリシーに反する文章が多くなって来た。だから、最近は個人主義を標榜している。

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家路 ★★★★
テレビドキュメンタリーを中心に活躍し、ギャラクシー大賞を筆頭にさまざまな賞を獲得してきた久保田直がメガホンを取ったヒューマンドラマ。東日本大震災によって故郷を失ってしまった家族が、さまざまな試練を乗り越えながらも絆を強めていく姿を追い掛けていく。『マイ... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2015/03/21 19:28

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
人類もまた自然の一部でありますからね。
人類が滅びたら、自然が自然のまま保たれるかというのも疑問でありますね。
人類が地球全体に拡散したのも自然の驚異によるところが多いですからね。
広げる必要があると地球が思ったのかも・・・・
ねこのひげ
2015/03/22 08:30
ねこのひげさん、こんにちは。

仰る通り。
人類が地球の環境を破壊するのも自然の要求なのかもと考えますよ。
恐らく病気は人口を抑えるという意味で摂理なんでしょうが、或いは戦争もそうなのかもしれませんね。戦争嫌いの僕がこんなことを言うのもなんですが。
戦争に行くのは、資産の多い順ということにしても面白いかもしれませんね。
オカピー
2015/03/22 15:39

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