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zoom RSS 映画評「そこのみにて光輝く」

<<   作成日時 : 2015/03/11 10:14   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・呉美保
ネタバレあり

自害した不遇の作家・佐藤泰志は2010年に映画化された「海炭市叙景」で俄然注目されたらしく、この映画化が続いた。購読している新聞の文化欄に「そこ」が"there"と“底”の掛詞になっていると書いてあったような記憶がある。2014年度「キネマ旬報」第1位に輝く、映画ファンにとっての話題作。

台詞が聞き取りにくかったのは温風ヒーターのせいだけだったのだろうか? とにかく、序盤に台詞の聞き取れない部分があり、余り乗れなかったことを予め告白しておきます。

函館、山での仕事中の事故で同僚を死なせてしまった罪悪感で仕事を辞めてブラブラしている若者・綾野剛がパチンコ屋で知り合った年下の若者・菅田将暉に気に入られて家に連れて行かれ、姉の池脇千鶴を紹介される。事実上の売春宿である飲み屋で彼女と再会して驚くが、運命的な出会いだったようで、程なく二人は喧嘩友達ならぬ喧嘩恋人のような関係になっていく。
 その間に菅田君が仮出所中であること、仮出所中の報告書を書いてやっているのだと脅す勤務先社長・高橋和也に姉の千鶴嬢が肉体関係を強要され続けていること、脳梗塞で倒れた姉弟の父親が色情狂で母親が相手をしなければならず、娘が彼らを養っているような状態であることが判って来る。
 綾野君は彼女との関係に家庭を作る希望を見出して山での仕事への復帰を決意するが、その矢先に仕事を紹介するはずだった菅田君が姉の幸福を妨害しようとする高橋氏を襲撃したのに続き、千鶴嬢が時に性欲処理の相手も務めていた父親を絞殺しようとする現場に遭遇、辛うじて未然に防ぐ。

弟君は仮出所中の殺人未遂なので明るい未来には程遠いものの、辛うじて殺人をせずに済んだ彼女と綾野君には曙光が射しているような気がする。

1970年代の日本青春映画と想起させる暗いお話で、ATGや日活ロマンポルノに通底するやるせないものを覚えるが、幕切れが「海炭市叙景」同様微かな希望の光を感じさせるのは悪くない。その為の朝焼けであり、監督をした呉美保が室内の薄暗い場面を多めに使ったのは最後の朝陽に希望を感じさせる為の工夫ではなかったか、と思わせるものがある。

技術的には、海で抱き合う二人の場面が腐れ縁的な高橋とのベッドシーンに移行する一種のマッチカットでの繋ぎが印象的。

近親相姦は不道徳であるという観念は、恐らく、未開社会時代に変な子供が生まれるという生物学的理由により発生したものだろう。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
明けない夜はない・・・というところでしょうかね。
方舟のノアや動物たちは洪水の後に、地に満ちたわけですからね。
近親相関のなにものでもありませんわな。
ねこのひげ
2015/03/15 18:12
ねこのひげさん、こんにちは。

>ノア
キリスト教的な解釈では、ノアはエジプト文明より後の時代の話らしいですが、世界的に類似のお話が残されているところを見ると、実際には1万年以上前の氷河期終了の頃の口承なのではないかと思いますね。
そうした極限状況では種の保存の為に近親相姦もあり得ますし、当時では道徳云々はなかったでしょう。
オカピー
2015/03/15 20:29

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