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zoom RSS 映画評「鉄くず拾いの物語」

<<   作成日時 : 2015/02/19 09:33   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年ボスニア・ヘルツェゴヴィナ=フランス=スロヴェニア合作映画 監督ダニス・タノヴィッチ
ネタバレあり

「ノー・マンズ・ランド」(2001年)というブラック・ユーモアに満ちた戦争映画で僕を感服させたダニス・タノヴィッチのセミ・ドキュメンタリー。セミ・ドキュメンタリーは苦手だが、これは興味深く見た。

自動車を解体して出る鉄を売ることで生計を立てている貧しいナジフ(ナジフ・ムジッチ)は、妻セナダ(セナダ・アリマノヴィッチ)が流産したので手術を希望するが、保険証がない為に高額になる医療費が払えず、病院から断られてしまう。仕方なく義妹の保険証を使い、別の病院で何とか手術を受けることに成功して事なきを得るが、薬代を出す為に故障中の自分の車を解体する。

いつものように何も知らずに観てまるで本当のドキュメンタリーのようだと感心しつつ観ていた。エンドロールのキャスト表を見ると、出演者の名前が全て役名と同じなのに気づき、セミ・ドキュメンタリーによくある手抜き的役名かなと思って映画サイト等で調べてみたら、何とご本人を使った再現ドラマなのであった。ドキュメンタリーと勘違いするような作品になっているのも道理。
 しかし、ご本人を使っているからと言ってドキュメンタリーのようになるとは限らない。演技指導は勿論、カメラワークに細心の注意を払わなければ達成できないわけで、タノヴィッチが実にしっかり作っているからこそ本物らしい空気感だけでなく、実感を伴う映画になっているのである。

どうもこの一家はロマ族らしく、貧困にあえいでいる。義妹のところに行くにも車が壊れて動かない。無事手術を終えて帰宅したら今度は電気が切られている。この映画を観るだけでは、ボスニア=ヘルツェゴヴィナの経済状況やロマ族の置かれた立場は解らないが、とにかくお金がないということはどこの国にいても大変なのだ、ということだけは解る。そのほうが普遍性という点において映画的価値が増すと言えるかもしれない。

夫婦には二人の幼い娘(サムサとサンドラ)がいて、親の苦労や不安を知らず終始無邪気にはしゃいでいる。これがこの一家の悲しさを際立たせる。工まざる効果と言うべし。

この映画を観る何日か前日本語が殆ど離せない台湾人男女が来て、家の鉄くずを持っていったのも奇遇。

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鉄くず拾いの物語 ★★★.5
『ノー・マンズ・ランド』などで知られるダニス・タノヴィッチ監督が、ロマ族の一家の実話を基に描く感動作。ボスニア・ヘルツェゴビナを舞台に、緊急掻爬(そうは)手術が必要にもかかわらず、保険証がなく高額の治療費が払えないために手術を拒否される家族の苦難をドキ... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2015/02/19 11:14

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
作る人間の力量によっては素人を使ってもいい作品になるという事でしょう。
逆もまた真なりでありますがね。
ねこのひげ
2015/02/22 10:30
ねこのひげさん、こんにちは。

>素人
ネオ・レアリスモはその典型だったわけですよね。
現在のセミ・ドキュメンタリー作家は、一部それを取り込む傾向があります。
オカピー
2015/02/22 19:32

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