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zoom RSS 映画評「第三の男」

<<   作成日時 : 2015/02/13 09:05   >>

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☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1949年イギリス映画 監督キャロル・リード
ネタバレあり

ブログを始める3、4年前に何度目かの鑑賞をした。しかし、きちんと見直して書こうと思っているうちにブルーレイ・レコーダーを買ったので今度はハイビジョン放映されたら観ようと機会を伺ううちに今日まで来てしまった。結局出て来ないので、ハイビジョンを諦めて図書館のDVDで観ることにした。マイ・ライブラリーにビデオはあるのだが、画質が多少良いはずのDVDを選んだ次第。

第二次大戦後のオーストリアは暫くの間米英露仏により分轄統治されていたわけだが、その首都ウィーンへ三文作家ジョゼフ・コットンが親友オースン・ウェルズに何か良い仕事を斡旋してもらおうとやって来る。が、彼のアパートを訪ねると管理人から「昨晩交通事故で死んだ」と言われ、正に進行中の葬儀に参列する。ここでウェルズを追っていた英軍少佐トレヴァー・ハワードと関わり合う。この時葬儀から去る美人アリダ・ヴァリとすれ違う。ウェルズの恋人である女優であるが、このシーンが幕切れで生かされる。
 再度管理人によく聞くと、事故の直後正体の解っている二人の外にもう一人が遺体を運んでいたと言われる。第三の男の正体は? 

というお話は、僕らの世代の映画ファンなら述べずもがな。

不法入国と判明したアリダが好きになったコットンは、本物のパスポートを手に入れることで彼女の歓心を買おうと、水増ししたペニシリンを闇で売っていると聞かされて幻滅したウェルズを迷った末に刑事に売り、結果的に彼は死んでしまう。今度は本当の葬儀。そして最初の葬儀直後と全く同じ流れによる名ラスト・シーンと繋がっていく。
 勿論、画面左側で四輪荷車にもたれて待つコットンを、画面中央から次第に迫って来るアリダが無視して画面右に切れていく幕切れのこと。何度観ても痺れますなあ。構図も文句なし。

構図と言えば本作は全編構図の見本市と言うべき類稀なる作品で、大袈裟に言えば、次の三種類で構成されている。一つは客観による俯瞰・仰角、一つは主観による俯瞰・仰角、残りは僅かなダッチ・アングル(斜め構図)ショットである(以上双葉十三郎氏の分析を参考)。
 結果的に通常の映画より斜めのショットが多いわけだが、必要以上に使っているのではないかと以前指摘される方がいらっしゃった。しかし、それは少し違うのである。

思うに、本作においてはストーリーの為に構図が存在するのではなく、構図を見せる為にストーリーが存在するのである。脚本(原作も)を書いた文豪グレアム・グリーンに失礼だろうと言われそうだが、キャロル・リードが映画化する為に書かれた脚本であると言われているように、グリーンにしては非常に軽い(しかしさすがに見事に簡潔な)、主人公ホリー・マーティンス(コットンですな)の三文小説を思わせるペーパーバック的な内容に仕上げていると感じられるので、不当な分析ではないと思う。実は十年間これが言いたかったのだ(笑)。

その外に印象に残る場面若しくはショットとして挙げたいのは、死んだと思われていたハリー・ライム(ウェルズ)の顔がくっきり浮かび上がる、これまた有名なバスト・ショットで、彼の猫を巧みに絡めてそこに至るまでのカット割りの鮮やかさに唸る。旧友二人が複雑な心理の交錯する再会を果たす直前の観覧車のショット、追跡劇が繰り広げられる地下道のカット割りも圧倒的。
 光と影が織りなす映像の極北と言うべし。

また、一見(一聴ですな)陽気とも感じられるアントン・カラス奏でるチターのメロディーが却って哀愁と緊迫感を醸成し、これまた感心するほかない。

傑作中の傑作。

悲しき片思いというお話でもありました。

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第三の男
(1949/キャロル・リード監督/ジョセフ・コットン、アリダ・ヴァリ、オーソン・ウェルズ、トレヴァー・ハワード、バーナード・リー、エルンスト・ドイッチュ、ジークフリート・ブロイアー、エリッヒ・ポント、パウル・ヘルビガー/105分) ...続きを見る
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
小さくても映画館(50席)で観られたことが
今では懐かしく、そして、少々、鼻高い。(笑)
増してや今は無いその映画館のことを思うと
無念で胸がこれもまた少々チクリと痛みます。

淀川センセ曰く、「怖い映画」ですと。
余りにも完璧だと憎たらしいって意味も
含めてのことでしょうね。
映画鑑賞歴の中、本作は私にとっては
出来の良さは勿論のこと、
生涯の1本、とにかく別格の1本。

約6年前の拙記事持参いたしました。
プロフェッサーもいらしてます。^^
vivajiji
2015/02/13 12:12
vivajijiさん、こんにちは。

子供時代にTVで二回くらい観た後、大学時代に映画館で観ました。この映画を映画館で観たことは非常に意味のあることだと思っています。

>今は無い・・・チクリ
世の中、無常ですからねえTT

>「怖い映画」
淀川先生らしい表現ですね。
そうなんでしょうねえ、実は結構うるさ型であった先生もこの作品は高く評価していたと記憶しています。
親友でもあった双葉師匠とこの映画についてどんな風に語り合ったか知りたいものです。
製作より三年後に本作が公開された1952年には「天井桟敷の人々」「風と共に去りぬ」も公開されています。本作を含め若干古めの作品がどんどん公開され映画ファンに嬉しい悲鳴を上げさせていた頃。今より日本人は貧乏でしたが、ある意味うらやましい。

>別格の一本
異論なしです^^
オカピー
2015/02/13 20:44
これは古くならない映画でありますね。
素晴らしい映画であります。

もっともアントン・カラスはこの映画で有名になったばかりに他のチター奏者から村八分になったそうでありますがね。
ねこのひげ
2015/02/15 06:57
ねこのひげさん、こんにちは。

僕の持論に、「モノクロ映画は古くなりにくい」というのがありますよ(笑)

>アントン・カラス
人生の皮肉と言うべきですが、映画ファンの脳裏にあの音と名前が刻まれたのだから良しとしなければいけないのでしょうね。
オカピー
2015/02/15 20:46

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