プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「終着駅」

<<   作成日時 : 2015/01/23 09:27   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 4

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1953年イタリア=アメリカ合作映画 監督ヴィットリオ・デ・シーカ
ネタバレあり

駅を舞台にした映画の中では「逢びき」(1945年)と双璧を成すと言うべきヴィットリオ・デ・シーカの秀作である。Allcinemaによれば、製作のデーヴィッド・O・セルズニックには「逢びき」に匹敵する作品を作ろうという目論見があったとのこと。その目的は達成されていると思う。
 「逢びき」が内面モノローグを駆使した回想形式であるのに対し、こちらは上映時間とドラマの進行時間をほぼ一致させた「真昼の決闘」(1952年)スタイルを取っている。作り方は対照的であるが、どちらも(当時の作品としては)かなり実験的な作品だった。

ジェニファー・ジョーンズが姉のいるローマからパリに向けて旅立とうと駅にやって来る。夫と娘のいる身なのに恋に落ちた米伊ハーフ青年モントゴメリー・クリフトへの思いを断ち切ろうと突然決心したのである。列車が出る直前に彼女の決心を知った彼が現れ、暫し話し合いということになる。

僅か90分の短尺で、恋の終盤だけを切り取る方式を取るこの作品は二人の会話や出来事により二人の環境やそれまでの経緯を全て明らかにする。本作の秀作たる所以はほぼここに集約される。誠に無駄なく要領良く説明してくれる。様々な人々が二人を邪魔するかのように入り込んでくることで彼らの心情が時に間接的に時に直接的に表現されるのも良い。この作品以降男女の関係を描く作品を多く取ることになるデ・シーカにとってもベストの演出がここにある。
 勿論、トルーマン・カポーティが台詞担当で加わった脚本グループの貢献が大であるが、場所ごとに二人の撮り方(構図、サイズ)を微妙に変えていく、デ・シーカの卓越したショット感覚がそのドラマ展開を最大限効果的にしていることは認めねばなるまい。

諸事情を慮って二人は別れることを決意する。クリフトは動き出した列車からやっとの思いで降りるが、列車のスピードが上がっていた為転んでしまう。起きた彼の目に小さくなっていく列車の後部が入ったところで幕切れ。
 この幕切れに哀切極まりない情緒をもたらしているのはデ・シーカの優れた感覚に加えて、ジェニファー・ジョーンズとモントゴメリー・クリフトの好演と言うべし。

中盤色々と活躍する彼女の甥に扮するのは、後年「アンネの日記」(1959年)「ウエスト・サイド物語」(1961年)で人気の出るリチャード・ベイマー。

ところで、アメリカでの評価が低すぎる。どうも倫理的に保守的なアメリカ人の不倫への抵抗感のせいらしい。二人が色情狂であるならそれでも良い。しかし、本作の目的は、不倫への意識に苦しむ、人並みに道徳観を持った二人の心情を綴ることで人間を描き上げることである。アメリカの多くの方がそこを汲まず芸術性の高さを無視してきたのは、誠に残念に思う。概して日本で名作と扱われている多くの欧州名画がアメリカで同等に評価されないのは、奔放なテーマを扱うことの多い欧州感覚が理解されないからだろう。先祖は同じなのにどうしてこうも変わってしまったのか。

その昔、奥村チヨのドーナツ盤「終着駅」買いましたよ。関係ないってか? どうもすみません。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
『日曜洋画劇場』での一度切りじゃないはずなんですが、それでも随分ご無沙汰している名作ですねぇ。
限られたシチュエーションの中での葛藤なので、主役の二人の関係は分かっているのに、細かいストーリーはほぼ忘れているという(^^)。
停車中の客車の中で別れを惜しんでいたら、駅員に咎められるという気恥ずかしいシーンとかは覚えてますけどネ。

1953年といったら「ローマの休日」とか「恐怖の報酬」なども作られた年。

>場所ごとに二人の撮り方(構図、サイズ)を微妙に変えていく、デ・シーカの卓越したショット感覚

いつでもレンタルで観られるけれど、あぁ、観たくなったなぁ。
十瑠
URL
2015/01/23 14:10
十瑠さん、こんにちは。

今回見たのは20年くらい前にWOWOWが放映したものを録画したビデオですので、多分三回目になりますが、それでも20年ぶりということになりますね。

>停車中の客車
駅長が帰って来ないので処理が進まないという、融通の利かなさが二人特に青年の苛立ちを煽るシーンにもなっていました。この後の駅長の判断次第では、二人の運命は大きく変わったかもしれない重要な場面です。

>1953年といったら
良い映画が多かったですねえ。映画が最も映画らしかった時代かもです。

>レンタル
たまに新聞に広告が載っている安いビデオ・セットにもこの作品は入っていますね。
是非またご覧になってくださいよ、素敵ですから^^
オカピー
2015/01/23 20:35
安いDVDで持っております。
駅馬車なんかも、これで観ております。
これなら、すり切れてもまた買えかえればよいかと思うわけです。
450円とか500円で売っておりますからね〜
当時の画質に近い気も致しますしね。('◇')ゞ
ねこのひげ
2015/01/26 02:45
ねこのひげさん、こんにちは。

>安いDVD
著作権の関係で図書館にはこの辺りのビデオやDVDが多くありますね。
勿論著作権の切れていないのもありますが。
DVDセットですとさらにお安く、場合によっては200円を切るかもです。でも、物を増やしたくないので、最近は買いませんけど。

>駅馬車
ブルーレイを買ってから結構年数が経ちますが、買ってからは放映されていないですね。
アメリカではインディアンの問題があって、かなり控えられていると聞いたことがあります。日本はそんな馬鹿らしい配慮はしていないと思いますが、インディアンではなく「先住民」などと必要以上に考慮された翻訳がなされているのを考えると、ないとも言い切れないですねえ。
オカピー
2015/01/26 17:41

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「終着駅」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる