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zoom RSS 映画評「ふたりのアトリエ〜ある彫刻家とモデル」

<<   作成日時 : 2014/12/30 10:50   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年スペイン=フランス合作映画 監督フェルナンド・トルエバ
ネタバレあり

フランスの画家・彫刻家アリスティド・マイヨール(1861〜1944)の晩年をモチーフにスペイン人監督フェルナンド・トルエバが作った芸術家映画。この人は90年代に少し注目したが、僕個人としてはかなり久々に観る。

戦争の為山に引っ越してきた老彫刻家ジャン・ロシュフォールの妻クラウディア・カルディナーレは町で食い詰めているらしいスペインの妙齢美人アイーダ・フォルチを見て、創作意欲の衰えている夫のモデルにでもと家に連れて来る。
 案の定彫刻家は収容所から脱走してきたという彼女を見て関心を示しモデルに起用することにし、彼女の隠れ家ともなる山小屋のアトリエに久しぶりに向って裸婦塑像の製作に取り掛かる。必ずしも万事順調とは行かないものの、野生児のような彼女の魅力に意欲は掻き立てられ、遂にはモデルとしてではなく女性として反応してしまった自分に怒りをぶつけるようなことも起きる。
 やがて彫刻は完成、彼女は内戦のほとぼりが冷めたスペインに帰っていく。

この後いかようにも解釈できる幕切れが待っている。塑像を丹念に仕上げると、おもむろに猟銃を持って来て椅子に腰かける。木に群れるカラスが映し出される。銃の音がする。塑像が映し出され、ブラックアウト。
 銃声の直前に塑像が映し出されたので、女性の去った後の虚しさから塑像を撃ったのかと思いきや、塑像はそのままである。銃声の後カラスの群れも彫刻家も映し出されない。カラスを撃ったのかもしれないが、ご本人が自殺を遂げた可能性がかなり高い。その推測理由は以下の如し。
 姉の具合が悪くなった妻を故郷に旅立たせている。立ち去る前のスペイン美人に「男を神が(意志で)作ったわけがない」と言い、女性を奉り男性を蔑視する発言をしている。カラスは多くの場合死を暗示もしくは予感させ、日本でもそう言われることが多い。本物のマイヨールは1944年に自動車事故で亡くなっているが、このお話はドイツの敗走が近い頃という設定なので、時代を事実に合わせ、より芸術家にふさわしく死亡原因だけを変えたのではあるまいか。

彼女が救ったレジスタンスの闘士といるところへ、彫刻家のファンで彼の本を出版しようとしているドイツ人将校が現れる。この場面だけサスペンスフルであるが、我々が勝手にそう感じるだけで傑作「海の沈黙」のドイツ人将校(音楽家)に通じるこの人物は、真相を知っても何もしないかもしれない。
 作者は彫刻家の環境を説明する為にこの場面を置いたようであるし、いずれにしても眼目は主人公の芸術家としての老境を描き上げることにあろう。創作意欲の源である女性がいなくなったことは、この芸術家にとってほぼを死を意味するのは想像に難くない。

この作品は、彫刻家の作れなくなった老いの心境を、100%明確ではないにしても描出する。厳しいモノクロ画面が主人公の枯れた気持ちを表現する。こうした心象風景を描いた作品こそ映画館で観ないと真価が解らないような気がする。

モノクロは形を強く印象付けると思う。正に彫刻的と言うべし。同時に優れた人の手によれば、色をも強く感じさせる。

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『ふたりのアトリエ 〜ある彫刻家とモデル』
(原題:El artista y la modelo) ...続きを見る
ラムの大通り
2015/01/12 16:16

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
『シンシティ』の新作『シンシティ 復讐の女神』もモノコロでところどころで一色を使うという技法を使ってます。
全編CGで、なにもないところで演技するのに俳優たちは苦労したようです。
ちょっと面白そうですよ。
ねこのひげ
2015/01/01 08:01
ねこのひげさん、こんにちは。

>『シンシティ』
最初の作品もサイレント映画のような着色的部分カラーでオールド・ファンを喜ばせましたね。ドイツ表現主義映画のような印象でね。

>全編CG
アニメとして観る分には良いのですが、これを俳優が演じているからと言って実写映画と称し、殆どカメラを通して作られた映画と同列に扱うのには少し抵抗がありますね。僕は“なんちゃって実写映画”と呼んでいますが(笑)
オカピー
2015/01/01 15:01

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