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zoom RSS 映画評「四十九日のレシピ」

<<   作成日時 : 2014/11/30 09:36   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年日本映画 監督タナダユキ
ネタバレあり

伊吹有喜の同名小説は2011年にもTVドラマ化されているようだが、僕が本作を観たのは監督がタナダユキだからである。
 21世紀に入り邦画が優勢であり、僕も本数を増やした時期があるものの、長いだけで映画として凡庸なものが多くて昨年くらいからまた減らした。つまらないということに関しては洋画も大差なく、監督で観る傾向がある僕としては新作の鑑賞は年ごとに漸減していくことになるのだろう。そんな中でタナダユキは監督名で観たくなる数少ない一人なのであります。

子供のいない夫(原田泰造)が浮気相手との間に子供を儲けたことにショックを受けた百合子(永作博美)が、妻に死なれて孤独になった父・良平(石橋蓮司)の面倒でも見ようとやって来るが、独りぽつねんとしていると思った家で父がイモ(二階堂ふみ)という少女とスキンシップをしているのを目撃する。彼女は、老人にとって妻であり百合子にとっては継母にあたる乙美(=おとみ)が遺言として残した“四十九日までのレシピ”を実行しに来ていたのだ。落ち込む百合子や憔悴する良平も、やがて、天真爛漫と言うべきイモや日系ブラジル三世の若者ハル(岡田将生)により元気づけられていく。
 そんな二人にもつらい過去があり、彼らを今の状態に導いたのは乙美であった。乙美も真の子供のいない妻であり、彼女の個人史を書き始めた時にその人生が(子供がいない故に)空白が多いと思った百合子は、しかし、四十九日に集まった、かつて乙美に世話された人々の書きこんだ個人史を観て継母の人生に空白などなかったことに気付かされる。

というお話で、百合子が子供のいない人生を心から受け入れることができるまでの過程を綴って胸を打つ。結婚して子供が出来ない女性にとっては他人事とは思えない内容にちがいないが、他人を大切に扱うことで生まれる豊かな人間関係が人を幸福にするという点に着目すれば普遍性が生まれ、誰にでも感銘できる可能性が出て来る。
 僕の亡母もこの点に関して誠に尊敬に値する人で、不思議なことに、倒れる前日に近所の方々や会社員時代の同僚が何年かぶりでこぞって訪れた。何か虫が知らせるものがあったのではないかと後になって思ったものである。
 その後実際の人生経験やら、本を読み映画を観ているうちに、人間の幸福は他人に対し何かが出来ることにあるのではないかと痛感するようになった。その意味で本作には「わが意を得たり」と思うものがある。

それでも、構成的には不満があり、世間体を気にする父親の姉(淡路恵子)が豹変して四十九日のお祭り騒ぎに加わるところでまず首を傾げさせる。世間体を気にする人間までそのように変化させる力が乙美にあったという解釈ができるものの、乙美との対照がなくなって焦点がぼけてしまうのである。
 それ以上にいけないのが、夫が現れて頭を下げると百合子が納得してしまう幕切れで、どうもすっきりしない。彼女が人生を悠揚と見つめられる境地に至った証左と言えないこともないとは言え、彼女の妥協と思わせかねないところがありやはり焦点がぼける可能性が出てきてしまう。四十九日の大騒ぎで皆を送り出したところでジ・エンド”のほうが後味が良かっただろう。

配役では、二階堂ふみのオフビートな感じが印象的。収穫と言うべし。

「人間、ひとりぼっちでは何の役にも立たない」(スタインベック「怒りの葡萄」より)

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四十九日のレシピ/永作博美、石橋蓮司
伊吹有喜さんの同名小説を原作に『ふがいない僕は空を見た』のタナダユキ監督が映画化したヒューマンドラマです。NHKでTVドラマ化もされていますが、そちらは観る時間がなくスルー ... ...続きを見る
カノンな日々
2014/11/30 12:56
四十九日のレシピ ★★★
NHKでドラマ化もされた伊吹有喜の人気小説を、「百万円と苦虫女」「ふがいない僕は空を見た」のタナダユキ監督が映画化。母が残したあるレシピによって、離れ離れになっていた家族が再び集い、それぞれが抱えた心の傷と向き合いながら再生していく姿を描く。 あらすじ:妻... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2014/11/30 14:14
『四十九日のレシピ』
□作品オフィシャルサイト 「四十九日のレシピ」□監督 タナダユキ□脚本 黒沢久子□原作 伊吹有喜□キャスト 永作博美、石橋蓮司、岡田将生、二階堂ふみ、原田泰造、淡路恵子、 内田慈、荻野友里、中野英樹、小篠恵奈、執行佐智子、赤座美代子、茅島成美■鑑賞日 1... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2014/12/01 08:18
『四十九日のレシピ』
----『四十九日のレシピ』? このタイトルって、ちょっといやだニャあ。 四十九日の法要の時に出すレシピってことでしょ? ニャんとか料理ってヤツ…。 あれ、おいしくニャいし。 「(笑)いやいや法事料理のことじゃないよ。 でも確かに、 これはちょっと分りにくいよね。... ...続きを見る
ラムの大通り
2014/12/02 14:41

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
男と女の中は、他人には図りがたい物がありますけどね。
しかし、二階堂ふみ・・・彼女だけでなく、最近の若手女優には根性のあるのが出てきましたね。
男どもは甘いのが多くてイラッとするけどね。
ねこのひげ
2014/12/07 10:54
ねこのひげさん、こんにちは。

>男と女の仲
実際はそうですけど、映画の構成的には余り良くなかったかなあ、と思います。

>男ども
まさにだらしないですね^^;
オカピー
2014/12/07 20:17

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