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zoom RSS 映画評「スローターハウス5」

<<   作成日時 : 2014/11/10 11:28   >>

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☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1972年アメリカ映画 監督ジョージ・ロイ・ヒル
ネタバレあり

ここへ来て体調を崩したこともあり、余生の長さを考えると新作の一部を削っても古いお気に入りを再鑑賞した方が良いという思いが益々強くなった。そこで選んだのが器用な監督ジョージ・ロイ・ヒルのこの異色SF映画。町の図書館(地元の図書館は山の図書館と称している)では原作とビデオの両方が利用できるが、今回は昔S−VHSで録っておいたマイ・ライブラリーのWOWOW放映版(といっても内容的に劇場公開版と同じですよ)。

老境に入った主人公ビリー・ピルグリム(マイケル・サックス)が世にも珍なる経験を綴る回想録を書き始める。ここを一応の現在としているが、彼は時間と空間を超えてしまう特異体質の男なので、若い時の戦争体験や宇宙での出来事や暗殺されてしまう未来は全て現在でもある。主人公にとっては常に現在進行形ということになる。我々の感覚で未来に当たる部分が過去より昔であったりする面白さがある。時系列(の判断)は主人公の年齢に依る以外にない。

一番重点的に描かれるのは戦時中の捕虜経験とドレスデンの悲劇であり、これが未来の挿話とも結びつく。予見した通りに起きた飛行機事故から奇跡の生還を果たすが、動揺した妻に交通事故死されてしまう。ある時愛犬と一緒に見た光の玉に包まれて遥か彼方の惑星へと運び去られ、女優(ヴァレリー・ペリン)と結ばれる。

主人公の名がピルグリムPilgrimであるのは、内容から推して、一般名詞・巡礼者pilgrimから来ているのだろう。

先述したように時系列は幾つもあるのに主人公にとっては常に現在であるという不思議な作品で、この種の面白さは刺激的な21世紀の作品にもなかなか見当たらない。

形だけとは言えSFの形式で描き出そうとしたのは現在アメリカ社会(当時はベトナム戦争中)の不安であったり閉塞感であったりするのだろうが、凡くらの僕には解らないところが多い。哲学的に“記憶そのもの”の問題と言っても良いかもしれない。

解らなくても断然素晴らしいと思えるのは、やはり(我々鑑賞者の感覚で)時系列の違う場面を、殆ど全てマッチカットでスムーズに繋ぐ技術である。映画は中味は勿論大事だが、こういう映画的技術に遭遇すると嬉しくなり☆★を大奮発したくなる。知名度は低いが、個人的にはヒルの後年作で類似性を指摘したくなる「ガープの世界」(1982年)より上に置きたいくらい。

原作も読みたくなるデス。

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[映画]スローターハウス5
1972年、アメリカ 原題:Slaughterhouse-Five 監督:ジョージ・ロイ・ヒル 原作:カート・ヴォネガット・Jr 脚本:スティーヴン・ゲラー 出演・マイケル・サックス、ユージン・ロッシュ、ロン・リーブマン DVDで鑑賞。 捕虜としてドレスデン空襲を体験したアメリカ人男性の ...続きを見る
一人でお茶を
2014/11/10 22:19

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
おぉ!僕が未だに観たくても観るすべがない、ロイ=ヒル監督の・・・。
双葉先生の評点は✩✩✩✩の傑作だったと思いますが、なにしろSFですからタイトルは忘れられませんなぁ。
僕も図書館でもう一度探してみようかなぁ。
原作者のカート・ヴォネガットは村上春樹のお気に入りの作家でもあるし、原作本も気になります。

>余生の長さを考えると新作の一部を削っても・・・

僕も元気に映画が見れるのも後20年くらいかなぁとか考えますが、ラストスパートするにも身体が資本と、毎日のウォーキングと生活習慣病対策は忘れないようにしております。のんびりいきまっしょい
十瑠
URL
2014/11/10 12:24
十瑠さん、こんにちは。

そうでしたか。確かに余り観る機会の少ない作品ですね。
こちらの図書館は蔵書数も凄いですし、CD/DVD/ビデオもなかなか豪勢です。

僕も双葉先生の評価を事前に知っていたので楽しみに観たのですが、予想以上に面白く、感心したものです。今回も楽しめました。

>カート・ヴォネガット
今は大古典を負っているので余裕がないのですが、いつか読んでみたいと思わされましたね。いつになるかな^^;

>後20年
今年は本気で死ぬと思いましたし、20年は無理かなあ。
それでも30分のウォーキングを再開したら調子が上向いてきましたし、膵炎の影響で油などを控えているせいもあって五臓六腑は自分が思っているよりは健全なようです。膵臓は慢性膵炎で腫れ、胆嚢には石がありますが。
オカピー
2014/11/10 18:58
>哲学的に“記憶そのもの”
ほんとうにそうですね。SF的に見るというより、主人公の記憶の問題、おそらく原作者の記憶の問題だと思いました。あと男の人の自我でしょうか。
主人公を演じた人が適役なのと、音楽がいいのが印象に残ります。
nessko
URL
2014/11/10 22:24
nesskoさん、こんにちは。

nesskoさんもそう思われましたか。
御記事にも確かに書かれていて、嬉しかったです。

>主人公を演じた人
マイケル・サックスはそれほど有名でないですが、良かったですよね。
音楽はグレン・グールド。演奏者として有名な方ですので、新たに作曲したのではなく演奏したものを使ったということなんでしょう。こういうケースで"Music by"とクレジットされるのは珍しいのですが。
オカピー
2014/11/11 19:23
これは原作も映画も観ておりますが、両方とも面白いですね。
原作はいまや古典SFですから、図書館にあるでしょう。
ぜひ、御一読を。
ねこのひげ
2014/11/16 11:19
ねこのひげさん、こんにちは。

>原作
町の図書館にはあることは確認致しました。
ただ、色々と読みたい本があるので、すぐに読めるかどうかは解りません(笑)
オカピー
2014/11/16 14:58

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