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zoom RSS 映画評「共喰い」

<<   作成日時 : 2014/10/07 15:22   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・青山真治
ネタバレあり

146回(2011年後期)芥川賞を受賞した田中慎弥の同名小説を青山真治が映画化。

昭和63年の下関、17歳の高校生・菅田将暉は、セックスの時に殴打しないと燃えない性癖のある父親・三石研とその同棲相手・篠原友希子と一緒に暮らしつつ、夫の暴力に堪えかねて家を出て近所で魚屋を営んでいる実母・田中裕子の許に足しげく通う。彼は近所の少女・木下美咲と神社でセックスをしているが、事に及ぶ時に暴力を振るったことから自分も父の性癖を受け継いでいるのではないかと恐れを抱くことになる

一昨日観た「千年の愉楽」と共通項が多い。
 どちらの作品でも若者は、自身に流れる呪われた血を意識せざるを得ない。かの作品では崖を、この作品では川を女陰に喩え、かの作品では僧侶、この作品では神社が重要な要素になっている。或いはどちらも被差別部落の可能性がある。かくして醸成されるのが神話的ムードである。

この二作に限らず、生を扱う作品では死が多く取り上げられ、両者が絡み合う作品でその狭間に置かれるのが性である。この三者を一体的に描くことが現代(日本)純文学や純文学映画の最重要な目的の一つとなっているのだろう。

「千年の愉楽」が手抜きな時代考証が幸いして神話性が強くなったのに対し、時代も場所もきっちりと示した上で起承転結も割合はっきりと作っているのでこちらのほうが平易な市井的な印象があって親しめる。が、死それも殺人が絡んでいるのに、青山監督の作品としては鬼気迫るものに欠ける気がする。田中裕子の右腕を半分失った母親の存在により戦争(責任)と天皇を結び付け、天皇の死を出して昭和の終わりを告げる作劇が理に落ちすぎているからとも考えられるが、終盤のみの問題だからそれだけが理由とは言い切れない。全体として散文的すぎて神話性醸成が不十分なせいかもしれない。

少年が読んでいるのが吉行淳之介であるのは、脚色を担当した荒井晴彦が狙ったようにロマン・ポルノへの関連性を直球的に意識させてニヤニヤさせるものがある一方、そうした小道具を以ってしても(末とは言え)昭和らしいトーンが余り出ていず残念である。

若手三人とベテラン二人の演技は好演。

黒木和雄監督「祭りの準備」(1975年)を思い出しましたな。

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共喰い/菅田将暉
第146回芥川賞を受賞し会見時のコメントがとってもお茶目な毒舌ぶりでした田中慎弥さんの同名小説を『サッド ヴァケイション』の青山真治監督が映画化した作品です。短い予告編の中 ... ...続きを見る
カノンな日々
2014/10/07 16:45
共喰い〜穢れと聖性
公式サイト。田中慎弥原作、青山真治監督。菅田将暉、木下美咲、篠原友希子、光石研、田中裕子。1988年。昭和が終わろうとしている時代の下関。父の円(まどか)(光石研)にしても、母 ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2014/10/07 19:35
『共喰い』
□作品オフィシャルサイト 「共喰い」□監督 青山真治 □脚本 荒井晴彦□原作 田中慎弥 □キャスト 菅田将暉、光石 研、田中裕子、木下美咲、篠原友希子■鑑賞日 9月8日(日)■劇場 109CINEMAS川崎■cyazの満足度 ★★★(5★満点、☆は0.5)<感想>  ... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2014/10/07 23:04
昭和六十三年の夏〜『共喰い』
 17歳の誕生日を迎えた遠馬(菅田将暉)は、父・円(光石研)とその若い愛人・ 琴子(篠原友希子)との三人暮らし。母・仁子(田中裕子)は、川向こうで一人、 魚屋を営んでいた。 ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2014/10/08 07:53
共喰い ★★★★
小説家・田中慎弥による人間の暴力と性を描いた芥川賞受賞作を、『サッド ヴァケイション』『東京公園』などの青山真治が映画化した人間ドラマ。昭和の終わりの田舎町を舞台に、乱暴なセックスにふける父への嫌悪感と自分がその息子であることに恐怖する男子高校生の葛藤... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2014/10/08 21:14
『共喰い』
----“共喰い”? それって仲間同士で食い合うことだよね。 人間のお話じゃニャいの? 「(笑)まさかそれはないよ。 これは第146回芥川賞を受賞した田中慎弥の原作を青山真治監督が映画化したもの。 作者の田中氏は受賞時の記者会見で 『都知事閣下と東京都民各位のために、... ...続きを見る
ラムの大通り
2014/10/09 22:10

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
殴らないと燃えないという感覚はわかりませんが・・・・
ロマンポルノは映画の最後の牙城のような部分がありましたがね。
やっとこさ、持ち直してきたところというのが現在ですが、これからどうなりますやら・・・
ねこのひげ
2014/10/07 18:13
ねこのひげさん、こんにちは。

一種のサディズムなんでしょうけど、少し違うような気がするなあ。

>ロマン・ポルノ
ロマン・ポルノは洋ピンと違い、映画的に割合しっかりしていましたし、昭和40〜50年代の香りが漂いますね。
オカピー
2014/10/07 21:44

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