プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「千年の愉楽」

<<   作成日時 : 2014/10/05 11:25   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 3 / コメント 2

☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年日本映画 監督・若松孝二
ネタバレあり

東京時代名画座のチラシに【若松孝二特集】とあったが、当時若松監督は全く知らず、作品群を見てもピンク映画ばかりで興味をそそられなかった。その後「水の中のプール」(1982年)でやっと名前を憶えて僕の中でもメジャー監督に昇格、21世紀に入って観る機会が増えて、少しその作家性が解って来た。しかし、本作を撮影した2012年の10月に交通事故で突然他界した為遺作となってしまった。中上健次の同名小説の映画化。

原作を読んでいず、本作を観ただけでは場所も時代も解らないので、資料に依る部分あり。

舞台は和歌山県の漁村で、作中“路地”と言われている場所は被差別部落らしい。時代はさらにはっきりしないが、ヒロポンが出て来るので終戦直後だろう。しかし、比較的近年の軽トラックが何回か出て来るので首を傾げさせる。女性の服装も着物がかなり出て来る一方で比較的短いスカートもあり、益々混乱する。低コスト故らしいが、細かい時代考証はともかく、時代を特定しやすい軽トラックを敢えて使う必要はないだろうに。

老境を迎えた産婆オリュウ(寺島しのぶ)が死の床で、今はなき僧侶の夫(佐野史郎)の遺影に話しかけ、自分が取り上げた中本なる一族に属する男たち三人の呪われた宿命を回顧する。
 最初の半蔵(高良健吾)は妻(石橋杏奈)との間に子供を儲けた後も女の尻を追いかける癖から抜け出せず、結局間男をしていた相手の旦那に刺殺される。
 若いが血縁上は半蔵の叔父にあたる三好(高岡蒼佑)は泥棒が生きがいという困り者。女色で問題を起こした後、目を悪くして飯場(はんば)での仕事中に怪我を負い、首吊り自殺する。
 半蔵の従弟・達男(染谷翔太)は一族の中では珍しい好男子だが、オリョウと情を通じた後遠方で事件を起こして死んでしまったらしい。

古代神話の女神イザナミノミコトの紹介から始まり、産婆の目を通して中本一族の宿命的な生き方と死に様が語られる。彼女が生を担当するのであれば、夫は僧侶、死を扱う。この世とあの世を往来するというホトトギスの話やその鳴き声がよく聞かれ、神話的ムードが醸成されていく。「2つ目の窓」に通底するところのある内容だが、こちらの方が作り方において親しみやすい。背景に女性賛美を揺曳させ、生と死とその狭間にある性の三位一体を描いた純文学と言うべし。

時代再現が余りにも手抜きなのが残念ながら、意図的かどうかはともかく、“神話”らしく時代を超越しているような印象が出ていないでもない。

2年後の合掌。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(3件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
千年の愉楽
神話と近代の境目の群像物語 公式サイト。中上健次原作、若松孝二監督。寺島しのぶ、高良健吾、高岡蒼佑、染谷将太、佐野史郎、山本太郎、井浦新、原田麻由、増田恵美、並木愛枝 ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2014/10/05 14:37
千年の愉楽/寺島しのぶ、高良健吾
中上健次さんが故郷・和歌山を舞台に書いた小説を『キャタピラー』の若松孝二監督が監督のミューズ的女優・寺島しのぶさんを主演に映画化したヒューマン・ドラマです。紀州の地で ... ...続きを見る
カノンな日々
2014/10/05 17:44
千年の愉楽 ★★★★
『軽蔑』『十九歳の地図』など紀州を舞台にした名著を多く遺した中上健次の同名短編小説(河出書房新社・刊)を「キャタピラー」「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」の若松孝二監督が映画化。 ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2014/10/06 15:46

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
これからピンク映画ではない作品を作るというところで残念でありました。
横断歩道でないところを渡っていて、撥ねられたんではね・・・・
最近、片側三車線はある主要幹線道路の横断歩道ではないところ渡る人が増えてますね。
ヒヤリとしたことが何度もあります。困ったものです。
ねこのひげ
2014/10/05 12:46
ねこのひげさん、こんにちは。

ピンク映画だったけど、硬派だったようですね。
全然観たことがないので、どんなものか想像もつかないのですが。
若松監督の少し前にギリシャの大監督テオ・アンゲロプロスも、確か撮影中にはねられて亡くなったと記憶しています。

>片側三車線
昨年県立図書館からの帰り、僕は、人ではなく、車が前を横切って危うく衝突しそうになってヒヤリとしました。こちらは青信号で何台も車が往来していたのに、どこから入って来たのだろう?
オカピー
2014/10/05 20:46

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「千年の愉楽」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる