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zoom RSS 映画評「贖罪 インターナショナル版」

<<   作成日時 : 2014/10/27 11:45   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2012年日本映画 監督・黒沢清
ネタバレあり

映画・TV界で大人気の湊かなえの同名小説をWOWOWがTVドラマ化、それを一本の長編(TV)映画に再編集した作品。2012年から放映されているが、271分と余りに長く、不安や恐怖を抱えている精神状態で観るのは厳しいと思い逡巡するうち二年も経ってしまった。しかし、新作映画の余りの不作の中、監督がベテラン黒沢清なので、中途半端な劇場用映画より面白いだろうと思ってドラマと同じように5回に分けて観てみた。

上流階級として満ち足りていた生活を送っていた主婦・麻子(小泉今日子)の娘エミリが小学校の体育館の中で何者かに殺される。直前4人の仲良しと遊んでいた彼女に声を掛け体育館に連れていった男が犯人であるが、4人は声を掛けた男の顔を思い出せない。麻子はいたいけな少女たちに「償いをするまで許さない」と宣告する。

これをプロローグに、15年後妙齢になった4人の少女たちの償いに絡む悲劇が挿話として続く。

最初の紗英(蒼井優)は男性への恐怖から生理の始まらない体になっていて、そこへ小学生の先輩だったというエリート青年・孝博(森山未來)が現れる。実は彼こそ15年前に騒然となっていたフランス人形盗難事件の犯人。特殊性癖者の彼には生理のない彼女は正に理想的で、妻に人形になることを強制するが、生活の変化から初潮を迎えた彼女に愛想を尽かす。侮辱された彼女は夫を殺して自首をする。
 孝博なる人間の常識を著しく逸脱した性癖が目を引く挿話で、そんな男に同級生殺人事件の傷で生理のない紗英が出あうというのは些か偶然すぎるが、「奇妙な味」を残すという意味ではエピローグを含めた4話中一番印象深い。

続く真紀(小池栄子)は小学校教師として、学校に侵入してきたナイフ男を退治して一躍英雄になるが、やがてその行為が行き過ぎではないかとPTAで問題になり、釈明する羽目になる。その釈明で彼女は「生徒を守るというより15年前の事件で約束した義務を果たす為にやった」と言って学校を後にする。しかし、逃げ出した男子教師が比較されて学校を追われることになったのを逆恨みして彼女を刺し、彼女は麻子の前で絶命する。
 逆恨みするこの教師もデタラメの極北で、誠にやりきれない。

三人目の晶子(安藤サクラ)は元来内気で、今では引きこもり状態。再婚の兄嫁が連れてきた(連れ子の)娘と仲良くなるが、兄(加瀬亮)がその娘に性的嫌がらせをしている現場を目撃、兄を撲殺して刑務所行き。
 この兄は所謂ロリコンですな。全く湊女史の生み出す男性に碌なものはいない。

続く由佳(池脇千鶴)は(恐らく直営店形式の)花屋を営み、その営業マンと懇ろになっている一方、彼女にとってはライバルである姉(伊藤歩)の夫(長谷川朝春)を誘う。やがて彼女は妊娠し、本当は別の男(恐らく花屋関係者)なのに義兄にはその子供と嘘を付き、やがてその嘘に気付いて糾弾する義兄を階段から突き落として殺す。が、状況から全く罪に問われず、子供を産む。由佳は犯人の情報を餌に取引しようと麻子に提案、その提案を拒否されるものの、結局犯人を教える。

ここから麻子の本格活動が始まるエピローグ後半に入る。彼女は犯人が経営するフリー・スクールに行き、大学時代の同級生・南条(香川照之)をそこに発見して驚くが、二人の大学時代の三角関係がエミリ殺害と関連のあることを知り、彼女は煩悶することになる。
 贖罪を求めた当人が一番贖罪をしなければならない人間だったという皮肉。

お話そのものは相当むごたらしく、言語に絶する。「事実は小説より奇なり」ということもある一方で、湊かなえなる女流作家のイマジネーションには驚かざるを得ない。
 が、娘殺害の悲劇だけでなく、関係した4人の少女に残酷な人生行路を歩ませた自らの罪を知った麻子の罪悪感に焦点が当たるハイライトが、少女4人の奇怪な人生行路が生み出す迫力に比べると、因果応報という構図になって理に落ちる感じがあり、竜頭蛇尾に近い印象がなくもない。

また、こういう残酷無比なお話にはフィルムのように粘着質で陰鬱さがよく感じられる画面の方がふさわしく、明るくさっぱりしすぎているビデオ質感ではどうも怖さが減殺されてしまうのが残念。

僕の弱い心臓でも最後まで持ちました。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
湊かなえさんの小説は、何冊か読んだことがありますが・・・
怖い!怖い!
救いがないというか・・・・
ご本人の顔つきも最近怖い。
むかし、デビュー当時は、美人だったんですがね。
ねこのひげ
2014/10/28 02:47
ねこのひげさん、こんにちは。

>湊かなえさん
映画版を観ればある程度想像が付きますが、精神衛生上余りよろしくなさそうなので、読まないことにします。

人間、性格が顔に出ると言われるように、書いているものが顔に出たのでしょう^^
オカピー
2014/10/28 17:28

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