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zoom RSS 映画評「CUT」

<<   作成日時 : 2014/09/04 10:36   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2011年日本映画 監督アミール・ナデリ
ネタバレあり

イラン人監督アミール・ナデリが日本を舞台に作った異色作。

熱狂的に映画を愛し週に一度くらい(?)シネフィルの為に世界中の真の映画を紹介している売れない映画監督・西島秀俊が、その映画製作の資金を捻出したヤクザの兄を殺され、残った借金を返済する為に、兄の所属していた暴力団がやっているボクシングジム兼酒場みたいなところで殴られ屋として二週間弱で千万円以上に相当する分だけ殴られる。

根底にあるのはイラン人監督の映画の現状への嘆きであり、憤りであり、映画再生への願いである。彼が西島に言わせた「シネコンの金儲け用の映画から真の映画を守れ」という主旨の台詞はそのまま監督の思いにほかならないであろうし、昔から映画を観て来たベテラン映画ファンなら共感しないではいられない筈。

しかし、設定を始め独り合点の部分が多くて、映画への情熱が空回りしてはいないだろうか。少なくとも「映画はフィルム撮影に限る」と思う僕には、フィルムで撮って欲しかったが、今となっては贅沢な願いなのかもしれない。

主人公が情けに縋らずひたすら殴られるのは兄の犠牲に値しない自らへの罪悪感と思うが、同時に監督の思う“真の映画”が置かれている現状を示す寓意のようにも感じられないでもない。だから、商業主義でない映画を撮ろうとしている監督が主人公なのだろうと考える。

映画の価値に直結するわけではないものの、主人公が黒澤明、溝口健二、小津安二郎の墓を回り、今の映画界に対して何をするか問いかけるシーンが印象深い。この三人が、監督の考える日本の三大監督であり、世界的規模での後世への影響力に関して三偉人であることは疑いようがない。この長回しは溝口へのオマージュか、時に挿入される空撮はやはり小津の“廊下”のつもりだろうか、などと思って見ると少し楽しめる。

最後に主人公が百発殴られる場面に合わせて、この監督(主人公?)の選ぶ“映画史上のベスト100”が紹介される。カイエ・デュ・シネマがかつて選んだベスト100と共通する作品が多く、僕にはさっぱり価値の解らない西部劇「大砂塵」(1954年)が入っているのには苦笑。ウッディー・アレンが「カイロの紫のバラ」(1985年)で模倣したバスター・キートンがスクリーンから出たり入ったりする「探偵学入門」(1924年)の特撮は本当に良く出来ていますなあ。何度見ても感心させられる。

「大砂塵」が良いと思える人にはこの映画が解るかもね。

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CUT/西島秀俊、常盤貴子
西島秀俊さんの主演作なので普通に邦画なのかと思っていたら監督はイラン出身のアミール・ナデリさんという方だそうで、二人が東京フィルメックス祭で出会ったのきっかけにこの企 ... ...続きを見る
カノンな日々
2014/09/04 11:03

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
フイルムで作ると、製作費が何倍にも膨らむでしょうね〜"(-""-)"
写真撮影ではデジタルカメラのおかげでフイルム代を気にしないで、何十枚何百倍も写している身としては、デジタル撮影には文句は言えませんです(^^ゞ
出来上がった作品が良質な映画であれば、受け入れることにしましょう。
ねこのひげ
2014/09/05 17:13
ねこのひげさん、こんにちは。

デジタルでは何だかひらぺったくなるんですよねえ、表現が。
コストを考えるとやむを得ないのでしょうが、無駄にできないから良いものが出来たという面もあるかもしれませんね。
だから、今の監督は失敗しても怒らない人が多い^^;

僕も昔に比べれば、大分気にしなくなりましたが、一度フィルムを通したものは元がデジタルでもそれなりの気分が出ます。
オカピー
2014/09/05 20:00

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