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zoom RSS 映画評「邪魔者は殺せ」

<<   作成日時 : 2014/09/24 11:09   >>

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☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1947年イギリス映画 監督キャロル・リード
ネタバレあり

多分IRA(アイルランド共和軍)を扱った最初の映画はジョン・フォードの「男の敵」(1935年)ではないかと思うが、戦後このキャロル・リードの秀作が続く。
 僕が最初に観た中学の時はIRAの存在もアイルランドの独立問題も知らなかったから、単純にスリラー映画として観た。後年大学生か社会人になって再鑑賞した時何とIRAのお話だったのかと驚いた。それを知った後も当時英国の立場から語られることが多い恐ろしいテロリストとこの作品の主人公は容易に結び付けられなかったものである。それはともかく、当時作者たちも1940年代後半に最盛期を迎えるスリラーとして作っている。これが1980年代以降ならぐっと小難しい社会派作品として作られたであろう。

プロットは割合単純で、秘密結社(IRAの名前は出て来ない)のリーダー、ジェームズ・メースンが資金稼ぎの為に仲間と銀行強盗を働き、逃げる際に深手を負いもみ合ううちに相手を撃ち殺してしまう。かくして逃げるしかなくなった彼は、地元の老若男女にかかずらった後、遂に恋人キャスリーン・ライアンの許にたどり着く。「生き延びられなければ死を」と覚悟していた彼女はわざと官憲に向って発砲する。

スリラーとして断然優れてもいるのだが、主人公に関係してしまう庶民たちの姿を描く部分には、Allcinemaである投稿者が仰っているように、ディケンズの小説を強く想起させる。特に、小鳥売りと酔いどれ画家と医者崩れの三人の扱いは正にそのもので、実質的にはこうした庶民が主役であり、大仰に言えば、追われる主人公は「ウィンチェスター銃'73」(1950年)における銃のような狂言回しである。
 アイルランドの庶民たちは心情的に彼に同情せざるを得ず、官憲に逆らう行動はしないまでもなるべく密告などはしたくない。最後の三人は各々の欲の為に結果的に主人公の命を救い官憲に連絡せずに留まる。序盤の善良で小心な婦人たちと違い、単に人情では語れない人間の複雑怪奇さがよく表れて実に面白い。

他方、作品の基調にあるのはヒロインの主人公への愛情で、日本的に言えば最後は心中の道行きである。
 午前0時に出港する船を目指して瀕死の主人公とヒロインが歩む。いつの間にか雨は雪に変わり、倒れて覆いをかけられた二人に悲しく降り続ける。カメラは汽笛を鳴らして出港する船を捉え、ゆっくりと斜め上にパンをすると時計台が0時を打つ。
 ジュリアン・デュヴィヴィエの傑作「望郷」(1937年)の幕切れに通ずる、何と映画的に整った、美しい幕切れであろう。

画面に関して言えば、縦の構図を強く意識したロバート・クラスカーの黒光りするモノクロ撮影が素晴らしい。不安を喚起若しくは暗示するするダッチ・アングル(斜め撮影)も出て来るが、リードの代表作「第三の男」(1949年)ほどは多用されない。
 また、リード映画で印象に残るのは“物体”。主人公の前に転がって来る女の子のボールや、官憲が迫る中落ちるごみ箱の蓋といった“物体”が強く印象に残るのもこのコントラストの強いモノクロ故である。カラーでは何故か物の形が印象に残らない。映画の不思議、人間の脳の不思議である。

スコットランドの独立騒動は、実に平和な裡に行われましたね。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
しかし、イスラム国の方は平和裏にとはいかんようで・・・・
欧米から参加している若い連中は、かつての学生運動の連中と同じ気分で参加しているようだそうです。
人が殺せて、金が貰えるとはうれしいな〜という事らしいです。
始末に負えません(*_*)
ねこのひげ
2014/09/28 05:46
ねこのひげさん、こんにちは。

>イスラム国
欧米諸国は奴らが自国に戻ってテロを起こさないように必死に入国阻止を図っているようですね。
何を考えているのやら。
オカピー
2014/09/28 21:01

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